牡蠣。
今、俺の目の前に‘生がき'がある。
「海のミルク」と呼ばれ、子供には理解できない大人の味の代表格である。
ほんのり磯の香りがするクリーミーな味わい。
噛むと中からジュワ~と濃厚な牡蠣のエキスが、口いっぱいに広がる。
生がきにポン酢をかけて、一気に吸い込むも良し…。
カラッと揚げて、牡蠣フライにするも良し…。
味付けして、溶けるチーズをかけてオーブンで焼いても良し…。
様々なレシピで楽しめるのに、本来の味はシッカリ保つ、かなり素敵な食材である。
がぁ~っ!
一方では、数多の牡蠣好きの腹を縦横無尽にぶっ壊してきた、一面もある。
嘔吐、下痢、発熱…この3つの必殺技で、食中毒界の王座に君臨する、まさに絶対王者。
これを読んでいる方の中にも、牡蠣の毒牙にかかった人も少なくないはず…。
綺麗なバラにはトゲがあるように…
‘美味い牡蠣にも毒がある'
そんな、魅力的な悪女が今、目の前にいる…。
さらに、俺の腹を引きちぎろうと、毒牙に磨きをかけるかの如く…
賞味期限が切れている。
1週間も…。
その証拠に…
海水的なモノに浸かっているが、海水が軽くドロドロしている気がする…。
その海水にゴミみてぇーのが、プカプカと漂っている気がする…。
‘あれ?新鮮な牡蠣って、その部分、茶色く無いよねぇ?'な気がする…。
危険だ…。
調理師の免許も持って無いし、普段から料理をして詳しい訳でも無いのに、これはさすがにダメな事くらい分かる…。
しかし…
相手はあの魅力的な牡蠣だ…。
ネットリとした海水が、牡蠣のビラビラをいやらしく光らせる…。
そのビラビラの中はどうなっているの?!
ねぇ!どうなってるか聞いてるんだってばぁ!!!
確かめたい…。
指先で押し広げるだけじゃ物足りないよぉ!
舌で…舌先でチロチロと舐めて、お前を感じたいんだっ!
分かってるよ…。
お前を一度味わってしまったら、自分が傷付く事くらい分かってるよ!
夜も寝れない位…
メシも喉を通らない位…
トイレから出れなくなる位…
それ位、自分を…自分の胃を傷付ける事くらい分かってるよ!
でも、ヌルヌルのお前の体に、ぶっかけたいんだ…
ポン酢を!!!
そして最後の一滴まで、絞り出してぶっかけたいんだ…
レモンを!!!
そして、ジュルジュルと音をたてて、お前から出るエキスを吸ってあげるからね!
イイだろ?生でイイだろ?生がイイんだよ!
やっぱり生が好っきゃねぇ~んっ!!!
とか言ってますが、俺あんまり牡蠣好きじゃないから、普通に捨てちゃうよね…。