ギャラリー。
眠い目を擦りながら、今日も稽古場へ。
なんとか朝は起きれたが、電車で寝ちまったら、また山手線をグルグル回って美味しいバターになっちまう(早めの再放送)。
なんとか乗り換えの駅まで起きてなきゃなんねぇ~が、まぶたが尋常じゃねー位、重い…。
つけもの石になるんじゃねーか位、まぶたが重い…。
電車の中でおもしろ君、おもしろちゃん、セクシィガールなどなどを見付けて、そっちに意識を持っていき眠気をすっ飛ばそうと前の席を見たが…
小学生…
サラリーマン…
おばさん…
おばさん…
サラリーマン…
おじいちゃん…
何にも事件が起きなそうなラインナップである…。
このまんまじゃ、マジで寝過ごしちまうと思い、iPodのゲームアプリをやる事にする。
それが画像にある、木をズラして、赤い木を外に出すというシンプルなパズルゲームである。
まっ、軽く頭も使うし、眠気覚ましくらいにはなんだろうと、ウルトラダラダラと指を動かしていたら、隣のサラリーマンが…
超見てんのっ!!!
眼力ハンパねぇ!!!
スーパー真剣に俺のプレイの一挙手一投足に集中してるし!
ヤベェ!!!
俺の気持ち的には、おっさんが休日にゴルフの打ちっ放しに来て、ダラダラとドライバーを振り回してる感じだったんだけど、今のこのギャラリーが見てる状況…
全英オープンくらいの緊張感だし!
たぶん隣の30歳前後のシュッとしたサラリーマンには、二度と会う事は無いと思うが…
下手だと思われたくねぇ!
頭を使うパズルだけに、下手=バカに直結しちまう!
偶然電車で乗り合わせた見ず知らずのサラリーマンに、バカだと思われるなんて、真っ平ゴメンだぜ!
やったんぜ!
俺、やったんぜよ!
カチッ…。
野村の脳のスーパーコンピューターの主電源のスイッチが入る音がする。
さも、木をどう動かせば初めから知っていたかの如く、野村の指は迷い無く木を動かし、赤い木を枠からスライドさせ、外に出していく。
しなやかに動く指に呼応するように、次々にクリアされていくステージ。
その姿はさながら…
何かに取り憑かれた鬼である…。
元来、パズルゲーム好きという事もあり、集中するとサクサクとクリアできる。
ビンビンに羨望の眼差しを右隣から感じ、一通りクリアする。
画面が変わり、コングラチレーションの文字と共にニューレコードの文字も踊る。
ざっとこんなもんよ。
小僧…。
俺の横顔…忘れんじゃねーぞ!
男ってのはなぁ~習うんじゃねぇ!
盗め!
わりぃな…。
俺も不器用だから、気の効いた言葉かけてやれなくてよ…。
そうこうしていると、乗り換えの駅に電車が滑り込んでいく。
あばよ…。
席を立ち、弟子との別れを惜しむように、横のサラリーマンにチラッと目をやると…
寝てんのっ!!!