2005年12月某日。
オープンしたてのその店に、
おいらは1人で出向いて行った。

$サッカーとバスケットボールと、 時々ミーハー。

仕事仲間が一足先にその店に行き、
とても素敵な店だ!と絶賛していたので、
気になっていたのだ。

フラリと行くと、
大きな目の、頭をおだんご結いした女性が、
「いらっしゃいませ!」と
にこやかに出迎えてくれた。
カウンター6席、
テーブル席で15~20席程、
決して大きな店ではない。
対面キッチンにはシェフが1人。
こちらも女性だった。

メニューを眺めていたら、
こちらもまんまるな目をしたシェフが
人懐っこく話しかけてきた。
「今日は、○○○がお勧めなんすよ!」。

ああ、この話し方には、
妙な親近感がある。
体育会系育ちだ。

それが、おいらと「エルバッチャ」の
付き合いの始まりだった。

$サッカーとバスケットボールと、 時々ミーハー。

高校時代の同級生だったという2人は、
いつか一緒に店を開こう!と夢を持ち、
20代後半でそれを実現させたのだ。

料理は文句なしにおいしい。
スタッフ2人は愛きょうたっぷりで、
とてもチャーミングだ。
店づくりも上手で、
女性スタッフならではの
やさしい雰囲気を醸し出している。

「オープンしたばかりで、
まだまだお客さんが少なく…」という
彼女たちの力になりたくて、
そして、こんな素敵なお店があることを、
たくさんの人に知ってほしくて、
おいらは、会う人会う人に
エルバッチャの良さを伝えて歩いた。
友人もたくさん誘った。
若い女性2人でやっている店が珍しかったのか、
新聞社の取材が来た時は、
常連代表として取材も受けた。

やがて、エルバッチャは、
予約をしないと入れないくらいの
人気店に成長していった。
その勢いと盛り上がり方は、おいらも驚いた。
逆に、2人の健康、体力が心配になるくらい。
でも2人は、
「ありがたいです!」といつも笑顔で、
どんなに忙しくても
愚痴一つこぼさず、
おいしい料理と心地よいサービスを
おいらたちに提供してくれた。

その2人が、2010年に出した結論が
閉店だった。
その決断に、当たり前だが周りは驚いた。

「こんなに繁盛しているのに?」
「立ち退き?」
「仲たがい?」
「寿か?」

2人は言った。
「今だから辞められる。
私たちは、もっとレベルアップしたい」と。

そんな2人を誰も止められない。
だからおいらたちは、
最後の最後まで、
彼女たちを見守ることに決めた。

そして最終日の6月30日。

エルバッチャは、
閉店する店とは思えないくらいの大賑わい。
店に入る人はいるが
出てくる人がいないのだ。
これが、彼女たちが築いてきた4年間の結晶だった。

$サッカーとバスケットボールと、 時々ミーハー。

最初から最後まで見守ることができて、
常連冥利につきるというものだ。

最終日、おいらは彼女たちに、
卒業証書を渡した。

次のステップに進むために。

$サッカーとバスケットボールと、 時々ミーハー。

よく、がんばりました。