Joze and a tiger and fishes | ★朝焼けワンワン★

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人間万事塞翁が馬

「ジョゼと虎と魚たち」を見た。

以下、感想。暇だから書いてみる。ネタバレ気にする人はブラウザ閉じるべし。


7年前の映画で、俺が高校生の時にレンタルビデオ屋の新作のとこに並んでたのを覚えてる。

その時はなぜか、あらすじも知らないまま、面白いタイトルだなーぐらいにしか思わなかった。多分。

7年越しに見ようと思ったきっかけは、くるりの「ハイウェイ」が主題歌だったから。


主人公は大学4年生の恒夫。雀荘でバイト中。

この映画は、ピンボケのスナップ写真とともに恒夫の独白から始まる。

そして、恒夫は物語の冒頭に、足に障害を持つ「ジョゼ」こと久美子と出会う。


ジョゼは、久美子が好きな作家、サガンの著作の主人公の名前。

久美子はそれになぞらえて自分のことをジョゼと呼ぶ。


簡単にいえばジョゼと恒夫のラブストーリーなんだけど一言で片づけてしまうのはもったいない映画だと思う。


ジョゼは身体障害者である。

ただこの映画もジョゼも”身体障害者”という要素を押しつけがましく主張しているわけじゃなく、はたまた肯定も否定もしているわけじゃない。なんだかそこに好感が持てた。なんだろうこれはうまく言えない。

ジョゼはある種、自分の人生を傍観しているように思えた。

それがジョゼの不思議な魅力かもしれない。


映画の中で特に見入ったシーンが幾度かあった。

ジョゼの家で日本的な朝食を食べるシーン。

ここに映し出される白米、味噌汁、出し巻き玉子、自宅で漬けているぬか漬け、網であぶった焼き魚。

あの朝食時の包丁の音や味噌汁の香りが、画面を越えて伝わってきそうな感じ、ええなあ。


それからジョゼをおぶりながら恒夫が浜辺を歩くシーン。

太陽の光を反射してキラキラと光る海をバックに、幸せそうな笑顔を浮かべながら二人で歩く姿は本当に綺麗だった。その後の写真の、恒夫の笑顔とジョゼのちょっとふてくされたような表情もこれしかないという顔だった。

ジョゼが貝殻拾うとことか、自分を海底に転がってる貝殻に例えた話とかを重ねるとなんだか切ないんだぜ。



この映画の結末はというと、恒夫は結局ジョゼと別れて元彼女のところへ戻るのだけれど、その原因は恒夫いわく、自分が「逃げ出した」こと。

恒夫はジョゼを背負い続けながら生きていく自信がなかったのだと思う。

恒夫の親元にジョゼと向かっていたものの、結局ひよって行くことができなかったし、トイレでジョゼを抱きしめたときにはどこか恒夫の気持ちは離れていたのだろう。

この結末は、どちらかというと好きだ。

現実的といえば現実的だから。

別れるときのジョゼの潔い態度も、その後の恒夫の号泣もなんだか胸を打った。


ジョゼが作中でサガンの本の一文を朗読するシーンがある。

"「いつか貴女はあの男を愛さなくなるだろう」とベルナールは静かに言った。「そして、いつか僕もまた貴女を愛さなくなるだろう。我々はまたもや孤独になる。それでも同じことなのだ。其処に、また流れ去った一年の月日があるだけなのだ…。」「ええ、解っているわ」とジョゼが言った。"

ジョゼの恋愛観、人生観はこの一文に集約されているんじゃないかな。


てかタイトルの一部にもなってる虎。

虎を見に行くのってどういう意味があったの?

本当に好きな人ができたら一番怖いものを見に行くってどういうことだ?



まぁジョゼ~を見て思ったことはまだまだいっぱいある。

恒夫がモッズコート着てるのみて早く寒くなってモッズ来たいなーとか思ったし、サガンの本をamazonで注文しようと思ったし、スタイリストって我らが伊賀大介大先生なんだなーうほーいってなったし、エンドクレジット見ながらくるりのハイウェイが流れてきても改めていいなぁと思った。

池脇千鶴って知らなかったけど、可愛いなあとかもちろん思った。

こういうさー、映画とか本とか音楽とかが有機的に絡み合ってるのってええなあと思う。



この映画、高校生の時に見てなくてよかった。

恒夫と同じ、大学4年生の今こそ、見てよかった。今現在、見るべくして、見た映画だ。

まだまだ書きたいことあるんだけどまとまらない。文章書くって難しいなー長々と読んでくれてありがとう。