「雲などはどこが美しい? 象もただ大きいばかりじゃないか?」
先生はこうたしなめたのち、僕の答案へ×印をつけた。
三二 加藤清正
加藤清正かとうきよまさは相生町あいおいちょう二丁目の横町に住んでいた。と言ってももちろん鎧武者よろいむしゃではない。ごく小さい桶屋おけやだった。しかし主人は標札によれば、加藤清正に違いなかった。のみならずまだ新しい紺暖簾こんのれんの紋も蛇じゃの目めだった。僕らは時々この店へ主人の清正を覗のぞきに行った。清正は短い顋髯あごひげを生はやし、金槌かなづちや鉋かんなを使っていた。けれども何か僕らには偉そうに思われてしかたがなかった。
三三 七不思議