L STREET 1
トミーは来月で29歳
足の悪い父親と2人で工務店を経営している
工務店といっても、俗にいう何でも屋ってやつだ
電気工事、大工は勿論、公園の遊具の整備に引っ越しの手伝い
その他諸々、みんなが嫌がる仕事を何でも引き受ける
トミーは父親が疎ましかった
僅かな賃金に執着して、ドブさらいまでする父親を恥じた
ウイスキーを舐めながら、貯めこんだ金の勘定をしている父親の横顔を見るのがたまらなく嫌だった
10年前、幹線道路を挟んだ向かいのガレージが廃業した頃から、めっきりと仕事が減った
トミーは、淹れたてのコーヒーをガレージで飲むのが少年時代からの日課だった
コーヒーカップを片手に、方々から訪れる客たちの話を聞くのが楽しみだった
深夜にたむろする悪ガキたちとタバコを吸った
常連の客からギターを貰った
ガレージの整備士に、喧嘩の必勝法を教わった
アルバイトの女の子と恋をした
その子の進学と同時に、その恋は終わった
ガレージの整備士たちは、お揃いでディッキーズのツナギを着用していた
ラジオを爆音で鳴らして、ヒットソングが流れると大声で歌い、曲が終わると大笑いしながらハグするのがお決まりだった。時折、トミーもその輪に加わった
彼らに憧れて、トミーは整備士の資格を取得した
L STREET 2へ続く