「同じ舟に乗っているときは、平和的に一緒に川を渡らなければならない」。クリントン国務長官は歴訪前にニューヨークで演説した際、中国の「孫子」から「同舟相救う」を引用しました。

これはいわゆる「呉越同舟」です。
⇒およそ2500年前の春秋時代、交戦状態にあった呉越両国が同じ舟に乗り合わせて助け合うようになったことを表しています。

クリントン長官に孫子を「解説」=手を携えて進もう-中国首相

2月21日温家宝首相は、クリントン国務長官との会談で、「われわれは同じ舟で川を渡るだけでなく、手を携えて進むべきだ。(=携手共進)」と金融危機克服に向けた米中関係の協力強化を訴えました。

この世界経済の危機の最中で、潰しあいをしている場合ではない、お互いが親密に助け合い協力しなければやっていけない!という事をシンプルなメッセージに込めたのでしょう。

しかし、そんな交戦状態にあるほどの呉越両国が助け合うほどの環境、条件はなんだったんでしょうか?

「呉越同舟」は孫子の兵法の第十一篇の「九地」に出てきます。「九地」とは、九つの地があるうちの最後のものを「死地」をいう、すなわち、ただちに戦えば生きる道があり、ひるんでいるなら亡びてしまう必死の地です。

「死地」にあるときは、すなわち戦え、と孫子は言いきります。進むことも退くこともならない必死の場で、兵卒は心を一つにして戦い、活路をひらく、だそうです。

「呉と越とは古くからの敵国だ。国人までもにくみあっている。しかし、かりに呉人と越人とが同じ舟にのりあわせ、川をわたるとせよ。もし大風が吹きおこって、舟がくつがえろうとするならば、呉人も越人もふだんの意趣をわすれはて、たがいに左右の手になったように、必死に助けあうであろう。

これなのだ。戦車の馬をきつく縛りあわせ、車輪を地に掘りうずめる。こうして敵に備えをくずされまいとしたところで、最後に頼みになるのはそれではない。頼みになるのは、必死になって、一つに固まった兵の心である。」
「中国故事物語」より参照
 
まさしく、今の時代の危機が舟が覆ろうとしている時ではないでしょうか。日本人だとか、アメリカ人だとか、韓国人だとか、、、そんな国籍や民族なんかのアイデンティティは忘れてこの「死地」を共に手を携えて進もう!とする心が必要ではないでしょうか。