私がケーキ屋に傷を付けられて軽くぶち切れていた間に、状況は思った以上に厄介な事になっていたようだ。
基地に帰還した私の耳に入ってきたのは、巨大生物が地下に巣を作り始めているという情報だった。
そこでEDFは、ただち地下巣穴の破壊を決定し、直ちに地底へと部隊を送り込む事となり、私もまた地下行き確定なのであった…・・・。
さしあたって、今回は地下での戦闘である。そして、そんな場所で単独行動は危険だとのことで、今回もストームチームから一人の隊員がパートナーとして同行する事となった。
彼の名は、小泉悠司。パッと見普通の陸戦兵だが、私はわかった。
この男とは、絶対に馬が合わないと―――
実際、それはすぐに明らかとなった。
「なんだって、いっつもいっつもこんな場所に飛ばされるんだ、ぶつぶつ」
「えーともしもし?」
「作戦とかも大事なのは分かるがよ。戦闘は現場で起きてんだから、少しくらい自由にさせてくれたっていいだろうが、…」
「おーい、きこえてるー?ていうか、ちょっと聞きなさいって」
「いつもながら、庄治の奴め…。厄介ごととなると、すぐこうやって―――」
「……ちったぁ、話をきけぇっ!!」
「ごふぅ!?」
次の瞬間。つい放ってしまった右ストレートが悠司隊員の左頬を捉える。我ながら、良いパンチだったと思ったのは、ここだけの話だ。
「てめぇ、何しやがるッ!!」
「あんたが人を無視するからでしょうがっ!!ちょっとは話を聞きなさいっ!!」
「殴っといてなんだ、その言い草はぁぁぁぁっ!!てか、俺に命令すんなー!!」
なんだかいきなり険悪ムードである。この時、フェイ隊員と悠司隊員との間には確実に火花が迸っていたと、後に一部始終を見ていたレンジャー隊員は、口々に語ったと言う。
今にこそつかみ合いの取っ組み合いでも始めそうな雰囲気。そして、周囲のレンジャーチームは全員固唾と飲んで見守っている。
「俺はこれでも30代なんだ!!ちったぁ年上敬えぇぇぇぇっ!!」
「年上が知るかーっ!!」
わーわーぎゃーぎゃー騒ぐ、悠司隊員とフェイ隊員。洞窟の中なので、声が反響して、響きまくりである。気がつけば、いつのまにか傍に来ていた巨大生物(!!)までもが悠司隊員とフェイ隊員の口喧嘩を見守っている。
「どうやら…口で言って通じる相手じゃなさそうだな、えぇ……?」
「そうね。ココは一つ、白黒つけるために一勝負行きましょうか・・・・・・」
互いの装備を構え、にらみ合う二人。
難と言うか、お互いに目が本気である。そして、両者がどんな人物かを知っているレンジャーチームは全員顔を見合わせると、すぐさまその場から退避。離れた岩場への陰などに避難を開始するのであった…。
そして、戦闘は始まった。
性格はともかく、悠司隊員は一流の陸戦兵である。というか、そこらの陸戦兵よりも戦闘力はある。
そして、フェイ隊員もそこらの陸戦兵とは比べ物にはならない実力を秘めている。そんな二人が、狭い岩のトンネル内でドンパチ撃ちあえば、流れ弾の被害は壮絶にすらなる。
フェイ隊員のスティングレイから打ち出されたロケット弾を見切り、アサルトライフルを連射する悠司隊員。それをスライディングで回避し、愛用となっているスパローショットM3を連発。だが回避不可能と思えた一撃を、巨大生物の足元をすり抜けて、巨大生物そのものを盾にすることにして回避し、グレネードランチャーでその陰から砲撃。フェイ隊員は、振りそそぐグレネード弾の爆風範囲を見切りつつ、爆風で浮いた巨大生物を足場にして、跳躍し頭上からロケット弾を叩き込み、際どいところでそれを悠司隊員が避ける。
暴走補正などはかかっていないが、ほぼ互角の勝負。
そして、周辺にいた巨大生物は戦闘の障害物代わり(巻き添えとも言う)にされて、次々と撃破されていく。・・・が、そんなこといちいち気にするフェイ隊員と悠司隊員ではない。
今、二人の脳内にあるのは、いかにして相手を叩き潰すかの一つに絞られていた。
それからさらに十数分後。
「はぁはぁ…やるわね…」
「そっちこそ、やるじゃねぇか・・・」
ぼろぼろになって、なお対峙する二人の姿があった。すでに巨大生物は二人の戦闘に巻き込まれ全滅。レンジャーチームの皆さんは岩陰から、なおも固唾を呑んで見守っている。
すでに二人共限界だ。アーマースーツも限界がきている。それでも両者とも引く気はないようだった。
時として世界には、どうやっても「そりの合わない」人間ガ何人かはいるものなのである。
「さぁ、そろそろ決着をつけようか」
「そうね…」
両者共に武器を構える。もはや、この戦いは決着がつくまで止められない。誰もがそう思っていた。
だが―――
「ちょっと待って」
「なんだよ」
不意にフェイ隊員が口を開く。
「命令嫌いなのは分かった。じゃあ、お願いだったらいいの?」
「……あー。命令されるよりは、マシだな」
「なーんだ。じゃあ、お願い。まずは話を聞いてくれない?」
「おう、いいぜ?」
この一瞬で空気は一変した。まさに先ほどまでの張り詰めた空気は何処へやら…と言ったところである。
「えっとね、今回の地底戦での分担なんだけど。あなた強そうだし。基本、自由行動で良いんじゃないかと思うの」
「マジでか?はっはっはw それなら任せとけ。巨大生物なんざ、軽く捻ってやるよ♪」
「じゃあ、そういうことで――――」
さっそく作戦開始。そう言おうとして、フェイ隊員は気がついた。
周りに山となっている巨大生物の亡骸に。
「………あれ?」
「………んあ?」
やる気満々になっていた悠司隊員も気がつく。
そして、二人は揃って首を傾げつつ、岩陰から出てきたレンジャーチームへと疑問を投げかけた。
「「なんで巨大生物全滅してるんだ?」
もちろん、その直後。レンジャーチーム一同から突っ込みを受けたのは言うまでもない。
To be countinue.....
☆えむ’sコメント☆
と言うわけで、初の地底戦闘。そしてなぜか対人戦。
なんとなく悠司隊員なら通常フェイさんと互角に戦えそうな気がして、こんな展開になってしまいました。
まぁ、どっちもある意味…人間離r
(コメントは、ここで途切れている―――)