「市街地に敵大型輸送船が出現。現在、巨大生物が次々と降下しています。現場へ急行し、大型輸送船を撃墜してください!!」
そんな緊急事態発令(スクランブル)がかかったのは、ちょうど射撃訓練をやっている時の事だった。もちろん、そのような事態とあらば、すぐに出動するのがEDFとしての責務である。
すぐさま武器庫へと急行し、適当な装備を見繕う。
今回は大型船への対空攻撃も考え、D型と呼ばれる単発高火力のSNR・スナイパーライフルと近接戦闘用にASアサルトライフルの新型を持っていくことにした。R型と呼ばれる連射力を強化したモデルだが、その代わりにリロードが標準型よりも手間取る仕様となっている。実際の所。経験上としては、そんなに困るほどのものでもないと思うので気にはしていないのだが。
それはさておいて、心なしか数ヶ月ぶりの出撃の気もするのだが、細かいことは気にしないことにし、すぐさま現地へと向かう事にした。
「大型輸送船は、市街地へ侵攻中。EDF各隊員は、各自交戦。市民の避難を最優先で助けてください」
「――了解」
そう答えて、顔を上げてみれば、ちょうど正面から市民の集団がこちら側へと走ってくるところだった。そして、そのさらに向こう側には、今まさに巨大生物を投下している大型輸送船-キャリアーの姿が。
レーダーをチェックする限り、今目の前を走ってくる集団が最後のグループらしい。となれば、少なくとも市民の援護はする必要はない。この場にとどまるか、もしくは先行し、敵巨大生物をひきつけることが、市民にとっては一番の安全策だ。
流れる人の波に逆らうかのように、逆方向目指して駆け出す。そして、人々の波とすれ違おうとして―――
「んなっ!?」
逆に波に押し流された。
「ちょっ、待っ…」
その様子は、まさに激流に飲まれる木の葉の如く。なす術もなく、進みたい方向と逆方向へと押し流されていく。
人間、切羽詰るととてつもないパワーを発揮すると言うが、まさに今がそれだ。デパートの大売出しセールのときに、ワゴンに殺到するおばちゃん達に匹敵するパワーだ。
「ぐぉ!?ぐぎゃっ…ぐはっ!?」
そうこうしているうちに、足がもつれて転倒する俺。だが、市民はそんなことに気づかぬ様子で、すれ違い、踏んづけていく。
実際、このアーマースーツを着ていなかったら、この場で殉職していてもおかしくないほどの物だった。だが、それよりも驚くべきなのは――――
「…………」
人の波が通り過ぎ、身を起こして振り返った時には、もう影も形もなかったことだ。レーダーを見ても反応すらない。いつの間に範囲外まで逃げていったのだろうか。
新たな疑問が浮かぶ。しかし、それにかまけているほど悠長な時間はなかった。キャリアーから降下した巨大生物の集団が迫っていたのである。
すぐさま、巨大生物との交戦に突入する。
とは言え、二度目の出撃の際。ちょっとした手違いから、80回も同じ時間を繰り返し、戦闘をひたすら続けてはいない(Mission02参照)。そして、その後も出撃はしている。
おかげで今となっては、巨大生物の行動パターンなどは熟知してしまい、そこまで苦戦もしないまでになっている。所詮、今回はネタのためにEASYだし。
むしろ問題は、巨大生物を降下させているキャリアーの方だ。
UFOファイターや黒蟻と違いサイズが違いすぎる。直接的な攻撃こそしてこないものの、敵陣深く潜り込んでくるくらいだ。恐らく、装甲なども相当硬いに違いない。
「さて……どれだけの損害を与えられるのやら」
スナイパーライフルを構える。あれだけ巨大なターゲットだ。スコープを覗かなくても当てることは容易い。あとは、対インベーダー用として開発されたとは言え、こいつが通用するかどうかである。普通に考えれば、無理だろうと言いたいが…。
引き金を引く。あたりに響く銃声。
―――まさか、一撃で落ちるとは思わなかった。いや、だって…普通歩兵装備であんなのが落とせるはずないじゃないか。ロケットランチャーやミサイルなら、まだわかるが。スナイパーライフルで。あんな巨大なのが!!
それだけD型スナイパーライフルの威力が凄まじいのか。それともキャリアーの装甲が紙なのか。はたまた単に当たり所のせいか。原因はわからない。
ただ一つハッキリしているのは、キャリアーは歩兵で落とせると言う事である。
歩兵に落とされる輸送船。いいのか、インベーダーそんなんで…。いや、むしろ俺達人類はそんなのにやられているわけだから―――
考えると、なんだか悲しくなってきたので、考えない事にする。
その後。もう一機のキャリアーもなんなく撃破し、残った巨大生物を撃破して今回の任務は終了となった。
だが戦いはまだ始まったばかり。そして、外国の方では予想以上にインベーダー相手に苦戦を強いられているらしい。その事を考えると、敵の主力はこちらには来ていないのかもしれない。一体、この先どうなるのか。
それは今の俺はおろか、誰も知る由はなかった。
☆えむ’sコメント☆
今週中といいつつ、速攻で仕上げてしまった…。
久しぶりに書いて思いましたが、主人公の陸隊員はマイペースでパッと見冷静キャラなので。いまいち盛り上がりに欠けるような…。いやフェイさんとかが、はっちゃけてただけか…?(汗
※13:00時追記
暇つぶしに、何か面白い物はないかとニコニコ動画さまよってたら。
「東方防衛軍」なんて物を見つけた(汗 もちろん一瞬心が揺らいだのはいうまでもない。

