FILE:04『ハルナ隊員の一日』 | 地球防衛軍第7支部(凍結中)

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 ハルナ隊員の一日は、まずベッドから這い出してくるところから始まる。

 時刻は朝の6時。目覚ましなどにも頼らず、いつもこのくらいだ。片手には、お気に入りのクマさんのぬいぐるみ(抱き枕サイズ)。もう片方の手にはデモニックランスと言う装備だ。

「ん……」

 半分寝ぼけた表情のまま、クマさんの手を掴んでひきずりつつ、洗面所へ。

 そして身だしなみを整えること、10分。

「……今日もばっちり」

 鏡の前に立って、相変わらずのポーカーフェイスでコクリと頷く。それから、ドアの方へと行き、くるりと部屋の方へと向き直れば、そこには大量のぬいぐるみが並んでいる。

「…いってくる」

 ぴっ…となぜか敬礼し、そして食堂へと向かうのである。



 ハルナ隊員は小食である。そのため、朝はいつもコーヒー一杯とか、その程度のものだ。でもブラックは嫌いらしく、砂糖とミルクは必須。と言うか、コーヒーの味がなくなるくらいの量を入れていたりする。

 食堂では、寡黙でどこか近寄りがたい雰囲気があるせいか、結構一人でポツンとしている。実は意外と本人が、人見知りするタイプだったりするのも理由の一つなのだが。

 まして、ここに来る時間がいつも早く、人が少ないときならば、なおさらのことである。

 黙々と、窓の外とかを眺めながら食事(?)を進める。そして、朝食が終わると、毎日の日課を開始するのである。



 昼。

 基本的にはペイルウイングとしての訓練が主だが、それ以外にもやっていることがある。

 ステルスである。 西浦流暗殺術の使い手であるハルナ隊員は、腕が落ちないようにと密かにそっちの訓練も行っているのである。内容は主に追跡。誰にも気づかれることなく、毎日人を変えて、こそ~っとついていくのである。

 気配を断ち、足音を立てず。そして周囲には見られても気にも留められないように、ごく自然にさりげなく。

「…ん?」

 先を歩いていたイヅキ隊員が、ふと後ろを振り返った。だが、そこには誰もいない。

「……ん、手ごわい」

 物陰でポツリと呟くハルナ隊員。

 基本的に気づかれることの少ないハルナ隊員だが、唯一の例外がイヅキ隊員であった。どういうわけか、彼にだけは気配を察知されて、振り返られてしまうのである。

 まぁ、実を言うとイヅキ隊員はハルナ隊員には気づいたわけではなく、たまたま顔の横を飛んで行った虫に注意が向いたとか、毎回そういうオチだったりするのだが本人達は知る由もない。

そんなハルナ隊員の目下の目標はイヅキ隊員に気づかれないことだが…。道のりは遠そうだ。




 夕方。

 大抵、部屋にいるか。どこか静かなところにポツンといるのがハルナ隊員の日常ではあるが。

 ここ最近は、いくらか行動パターンが変化している。

「……ん」

 この日も、ふと時計を見れば、おもむろに基地施設の外へと歩き始めた。手には、何かの袋を持っている。

 屋外の演習場を抜け、人の目に入らぬよう、持ち前のステルス行動で目的の場所へと動いていく。

 やがて、たどり着いたのは基地の倉庫の一つであった。

 辺りを見回し、そっと扉を開けて中へ。倉庫の中は薄暗いが、外部に気づかれることも考慮して明かりはつけない。

 事前に片目だけ閉じておいて、暗闇に慣れさせておいた方の目を開き、さらに倉庫の奥へ。

 やがて、その奥。いろいろな資材が置かれているその場所へと近づいていくと、不意に暗闇の中に二つの光る眼があらわれた。

 それに気がつけば、ハルナ隊員はその場に腰を下ろして、袋からパックに入った牛乳を取り出し、床の上へと置いたお皿に注ぐ。

「…ねこさん。ご飯」

「みゃぁ~」

 ハルナ隊員の言葉に答えるかのように、ひょっこりと姿を現したのは一匹の子猫であった。

 とことことハルナ隊員のほうへと近づき、じっと顔を見上げてからミルクを飲み始める子猫。

「…おいし?」

「にゃ」

「ん、よかった」

 ほんとに会話が成立しているのかは別として、子猫がなついているのは紛れもない事実である。

 そもそものきっかけは、数日前。ある雨の日という、もはや王道と言える展開が目に見えるような天気だった日のこと。ちょっとした用事で、総司令本部へと出かけ、一仕事終えた帰り道。

 雨にうたれて震える子猫とであったのである。そして、躊躇うことなく抱き上げて基地に連れ帰って、今に至る。

 だがエリス隊員のソラちゃんは例外として、基本的に基地でペットを飼うことは許可されていない。そこで、あまり人の来ない倉庫で、こっそり飼っているのである。

「……」

 ミルクを飲む子猫を見つめるハルナ隊員の表情には、珍しく微かな笑みが浮かんでいたりする。

 人付き合いとか苦手で、ほとんどポーカーフェイスなハルナ隊員ではあるが、実は結構いい子なのだ。

 子猫に餌を上げ、一しきり遊んであげてから、「また来るから、いい子にしてて」と、そう子猫に告げて、ハルナ隊員は来た時と同様、そっと倉庫を後にした。

「…ん? ハルナ、こんなところで何をしてるんだ?」

 そして、そこで不意に聞こえた声に固まった。イヅキ隊員である。

 どんなにステルスが得意でも透明になれるわけではない。その姿を視界に納められ、注意を惹かれれば誤魔化す手段はない。

 こっそり猫を飼っているということに気づかれたのだろうか。一瞬そんな考えが浮かぶ。選択肢の一つとして、口封じと言うのまで浮かんだが(←動揺しすぎてるせい)、それは良くないと思いとどまり、

「……ちょっと野暮用」

 冷静さを装いながら答えた。内心は心臓バクバクである。

「そうか。邪魔して悪かったな」

「…ん。気にしない」

 だがイヅキ隊員は、それ以上の追求をすることはなかったので、そのまま素知らぬ顔で立ち去るハルナ隊員であった。そして物陰で、こっそり胸をなでおろしたのはココだけの話だ。

 ちなみに、後日。再び倉庫を出たところでイヅキ隊員に見つかり、猫を飼っていることがバレたものの、彼の機転で部屋の中から出さないこと条件に許可が下りたのは、また別の話である。




 そして夜。

 時々、こっそり訓練がてら忍び込む。なんてことをするもあるが、原則としてハルナ隊員が寝るのは早い。

 お気に入りの抱き枕クマさんと、愛用のデモニックランスを手に、床へと入る。

「……ん…」

 ごそごそと、ベッドに潜り込み、ぎゅっとクマさんを抱きしめる。これがないとハルナ隊員は眠れないのである。これは本人と作者と読者しか知らない秘密だ。

「……おやすみ」

 ぽつりと呟いたその一言は誰に向けられたものなのか…。さしあたって、こうしてハルナ隊員の一日は幕を閉じるのであった。







 えむ’sコメント

 どうしよう。ハルナ隊員がなんかカワイイ…(マテ

 結構突っ込みどころ満載かもしれんが、ハルナ隊員はプライベートではこんななのです。

 あ、でも恥ずかしがり屋なので、そっと見守るだけにしてくださいね。下手にからかうと―――消されますよ?(ぇ