「そういえば、お前に名前とかあるのか?」
基地で待機していて暇な時間のこと。俺は、時間つぶしをかねて愛機であるF-17Vのところへと来ていた。
決して友達がいないとか、そういうわけではない。
≪ありますよ。私自身に付けられた固有名は『アイ』と言います≫
「アイ…。AIだからか?」
≪いえ、不特定多数の方対象に一般公募を行い、厳選なる抽選の結果です≫
「………」
名前一つにそこまでやったのか…!!思わず突っ込みたい衝動に駆られたが、なんとなくそれを言ってしまうと後が怖いようなのでやめておくことにした。
「まぁ、シンプルだが良い名前つけられて良かったな」
≪………≫
「どうした?」
≪褒めても何も出ませんよ?≫
「ははは。わかってるって」
このAI。アイはどれだけ高性能なのわからないが、人間なんじゃないかとすら思えてくることがある。だが、サポートとしては確実に優秀なのも確かだ。
と、そこで不意に基地の警報が鳴りはじめた。
―――レッド・アラート。スクランブルだ。
「どうした?!」
≪司令部より通電。EDF司令本部が敵バイオ兵器の襲撃を受けたそうです。AAAは直ちに出撃。基地直衛にあたれとのことです≫
「バイオ兵器? 陸戦部隊が遭遇している円盤とかじゃないのか?」
≪詳細は不明ですが、先日空軍基地を襲撃してきた敵攻撃機を含む航空戦力主体のようです≫
「なるほど。だったら陸戦の連中には荷が重いというわけか…」
「エリアルド空曹!!」
「事情はわかってる。すぐに出る!!」
整備員の一人が駆け寄ってきたのを見て、すぐに答えヘルメットを受け取った。たまたま喋りに来ていたのだが、タイミングが良かったようだ。
すぐさま風防を閉じ、発進態勢に入ろうとして、ふと後ろに気配を感じた俺は咄嗟に振り返った。
「本日もよろしくお願いしますっ!!」
「うわぁっ!?い、何時の間にっ!?」
そこには奴が――EDBCレポーターがいつの間にか座っていた。気配とか感じなかったぞ!?
「本日も最前線よりお送りします」
敵攻撃機がレーダーに映ったと同時にレポーターの声が響く。あぁ、きっと今回も全世界規模で放映されているんだろうなぁ。そう考えると、プレッシャーすら感じてしまう。
≪敵確認。攻撃機とは別の大型を補足。司令部への爆撃を行っているようです≫
「よし、速攻で叩く!!」
一気に機体を加速させ、アフターバーナー全開で駆け抜ける。正面から来る敵攻撃機の部隊の間をすり抜け、一番脅威と思える奴の方へと一直線に向かう。
この映像はレポーターが作戦中に指した物とは別の固体であり、別の場所で出現したものを撮影したものです。
「あっ、虫です。我々人類の敵はムシでした!」
目標を視界で確認できる距離まで近づいたところでレポーターが叫ぶ。
「…はぁ?!」
なぜ初めて知ったと言わんばかりなんだ!?インベーダーの襲撃受けて、どれだけの時間が過ぎてると思ってるんだお前はっ!!
EDBCレポーター。お前は本当に一体何者なんだっ!?
≪ミサイル接近≫
「…!!」
アイの一言で正気に返った。直後、ミサイルの接近を知らせるアラートが鳴り響き、回避行動に入る。
正面からのミサイルをバレルロールでかわし、すれ違いざまに短距離ミサイルを叩き込む。敵の姿は確かに虫のような姿だった。蝶…いや蛾にも見える。だが明らかにただの巨大生物とは違う。ミサイルを撃ってきただけどころか、対空砲らしき攻撃までしてくる。
しかし見たところ、防御力や火力はあっても機動性は低いようだ。つまり所詮は爆撃機と大差ないわけだ。
それならば方法はある。真上か、真下から一気に攻撃を叩き込めばいい。
いったん、距離を開け一気に上昇する。そのまま大きく宙返りをするようにして敵大型の真上を取った。予想通り、この位置からなら弾幕などは薄い…!!
≪ミサイルロック≫
「いけぇっ!!」
少々無茶な戦法ではあるが、一気にエアブレーキをかけて減速をかける。少しでも接近する時間を遅らせ、その間に一発でも多くを叩き込もうと言うのが狙いだ。
撃ちだされたミサイルが白い尾を引きながら、次々と直撃していく。機動性の高い敵攻撃機に高い命中率を誇るのだ。奴が回避できるはずはない。
やがて一際大きな爆発が起こり、敵大型は一気に失速。そのまま墜落を始めた。
≪目標撃破≫
「あばよ虫野郎! テレビはEDBC!」
……また台詞を取られたような気がする。て言うか、それでもしっかり宣伝するあたりはさすがと言ったところか。
≪お疲れ様です≫
「素晴らしい!君こそ防衛軍のエースだ!」
「ぶっ!?」
やがて聞こえる労いの言葉。だがその直後のレポーターの言葉に思わず前のめりにつっぷしてしまう。操縦桿握ったまま。
≪機体制御を。墜落しますよ?≫
「……っ!?!」
慌てて機体を立て直す。
こ、こいつはいきなり何を言い出すんだっ!!出撃回数2回のパイロットを、いきなりエースはねぇだろっ!!
≪マスター、やはり彼はベイルアウトすべきだと思います。彼のボケが原因でいつか墜ちるかもしれません≫
「…俺も同感だ。けど、民間人だからな…。理由なくやると後が面倒かもしれない」
≪…そうですね。しばらく様子を見るとしましょう≫
俺は思う。決して冗談などではなく、いつか本当にレポーターのボケのせいで墜ちる日が来るのではなかろうかと。それだけはごめんだ。
ボケのせいで、二階級昇進なんて冗談じゃあない。間違いない。最大の敵はきっと―――後ろにいる!!
そんなことを思いつつ、どうすればレポーターの恐怖から逃げられるか。そんなことを考えつつ、帰投するのであった…。
…胃薬買っとこうかな。
―To Be Countinue―
☆えむ’sコメント☆
まず謝罪を一つ。Mission1とMission2の襲撃される場所が逆でした…。最初が司令本部だったよ…orz
さて今回の宇宙大戦争小説。一回の戦闘が短いため、どうしてもスケールが小さくなります。
この小説用に最初からやっているのですが、難易度ノーマルでデビルバタフライ(敵大型)撃墜までに60秒かからないってどうよ(爆
まぁ、戦闘機での戦いなんて、こんなものなのでしょうけどね~。 あと、アンケートご協力ありがとうございましたっw
