≪どうかしましたか?≫
操縦桿を握る俺の耳に、電子的な女性の声が響いた。
幾つかある戦闘補佐用のAIの中でも最新モデルM型のサポートAI、今回の作戦で、この機体に搭載された奴である。
「……いや、なんでもない」
≪そうは思えません。戦闘前から冷静さを欠いているのは非常に危険な兆候です≫
「…う…」
なかなか鋭いところを突いてくる…。だが「彼女」がそういうのも最もなことだ。
「本当に大丈夫だ。作戦区域が近づくまでには、いつもの調子は取り戻してみせる」
≪了解しました。期待しています≫
何か察してくれたのか。そこで押し黙るAI。
さて、とりあえず状況と言うか、事情を説明しよう。
俺の名前はエイス・エリアルド。Anti Aliens AirForce。通称AAAに所属する戦闘機パイロットだ。
そして今、この新型機F-17V ファイティングホークを駆り、エイリアンの襲撃を受けた空軍基地への援護へと向かっている…と言ったところだ。空軍基地を守ることは、航空戦力を維持する上で非常に重要なことだ。来たるべき日に備えて戦力を保持しなければいけないのだから。
だからと言って、新型機1機だけを送り込むのもどうかとは思うのだが…。
まぁ、それはいいとしよう。これまでエイリアンに対抗できる機体は、まだほとんど数が揃っていないのだ。
じゃあ、何を気にしているのか。それは後ろに乗っている奴のことである。
「すーはーすーはー」
さっきから深呼吸をしている。なんでも、今回が初の出撃なのだそうだ。誰だって、初戦闘の際には緊張するものだ。かく言う俺だって、今回が初陣だ。もちろん訓練はしっかりやってきたのだが。
≪マスター。まもなく作戦区域に入ります≫
「ん?あぁ、わかった。よろしく頼むぞ」
≪任せてください。初陣で2階級昇進はしたくありません≫
「いや、それは俺の台詞だから・・・」
AIでありながら、ブラックユーモアもあるとは…。なんて高性能なんだ。しかし、この高性能ゆえの罠を、俺はまだ知る由もない…。
「…見えてきた。あれか!!」
やがて前方に、インベーダーの戦闘攻撃機と、対空砲火で応戦する空軍基地の姿が見えてきた。
すでに幾らか攻撃を受けているらしく、ところどころで煙があがっている。
「いくぞっ…!!」
スロットルを一気に上げ、機体を加速させる。と、同時に後ろにいた男が大きく深呼吸する音が聞こえ、続けてこんな声が聞こえてきた。
「地球防衛放送をご覧の皆様、こんにちは。EDBCテレビが前線よりお伝えします」
な、なんだってー!?
衝撃が走った。思わず振り返ってみれば、後ろのサブパイロットはマイクを片手にしているではないか!!
まさか、レポーターだったとはっ!!しかも前線から戦況をお伝えするそのためだけに、命の危険を犯してまで戦闘機に乗り込むとは…!! 恐るべし地球防衛放送社-通称EDBE……!!
て言うか、なんで民間人を乗せるんだっ!!AAA!!
「出ました!あれが人類の敵、インベーダーです!」
戦闘機上からの撮影により、画像が幾らか乱れております。ご了承ください。
また上方のテロップは、編集者のミスによることを深くお詫びいたします。
「……っ」
一瞬注意が逸れたが、レポーターの次の言葉に、我に返った。
いや、何を今さら・・・。誰でもわかるだろう、そんなことは…(汗
と、突込みたい衝動に駆られるが、今はそんな余裕はない。まずは目の前の敵を撃墜しなければ。
敵インベーダーの戦闘機は予想以上の機動性だった。すでに円盤の存在が知られているが、こちらは本格的な空戦仕様なのだろう。なんとも先が読めない機動だ。
しかし、それよりも驚いたのがこの機体に搭載された短距離ミサイルだ。
なんというか、恐ろしいほどに命中率が高い。しかも誘導性能が高く、かなり近づいた状態からでも当たる。フラフラと変な飛び方をする相手に。
これが今までの戦闘機に積まれていたミサイルなら、決してあたりはしなかっただろう。だが、対侵略者用の兵器と言うだけ合って、かなり有効的だ。
今まで手も足も出らず、苦い思いをしてきただけのことはある。その思いが、ここまでの性能を引き出したのだろう。
≪後ろから狙われています≫
ロックされたことを知らせる警告をAIが伝える。すぐさま機体を横へと倒し、左へと旋回する。エアブレーキも駆使して敵機の背後を取った。機銃の照準がHUDに映る。
「もらった…!!」
トリガーを引き、機銃が火を噴くも、敵の攻撃機はフワリと不可解な動きで視界外へと回避した。
なんて無茶苦茶な機動性だ…!! 元から、常識の通じない相手だとは思っていたが、あそこまで無茶な動きをあっさりやってのけるとは…。
≪至近距離でのドッグファイトは不利だと思われます≫
「だったら、こうするまで…!!」
近づかれて駄目ならば、距離を開ければいい。すぐさまアフターバーナー全開でその場を離脱する。
どうやら最高速度はこちらが上らしく、すぐに相手との距離が開く。それから機体を反転させ、ミサイルで確実に仕留める。ミサイルの性能のよさもあって、かなりの効果だ。
「これならいけるな…」
機体をたくみに操り、その戦法で敵を撃墜していく。
「1機も逃すな!全地球が君を見ているぞ」
「……え」
その一言で、一瞬思考が止まった。
いや、まぁEDBCと言えば、全地球規模ネットワークを持つことで知られてはいるが…。
「……まさか、生放送なのか!?生放送しているのか、俺をっ!?」
「もちろんじゃないですか!!ありのままを即座に伝える。それがEDBC!!」
「まじかよーっ!?」
≪ミサイルが発射されました。緊急回避よろしく≫
「……げっ?!!」
「うおぉぉ!?」
AIの言葉に咄嗟に機体を横に倒す。そのまま高度を一気にさげ、際どいところでミサイルを回避。うまい具合に正面に飛び込んできた敵機に、ミサイルを叩き込む。
≪あと少しです。最後まで決めて≫
どうやらすでに数は、かなり減っていたらしい。気がつけば、敵の数もあと1機程度だ。
いったん距離を離し、再アプローチ。正面からヘッドオンで沈める。
≪作戦終了です≫
「やった!!やりました!!」
火を噴いて落ちていく敵機を横目に、AIが冷静にそのことを伝えてくれた。なんか後ろがうるさいが、気にしない。
…なんとか勝てた。そして、人類の戦闘機もインベーダーに対抗できることを証明した瞬間でもある。そう考えると、なんだか心に来る物があった。
「これなr「私も、感動に打ち震えております…!!」
「………」
……ありがとう。レポーター。俺の心のうちを代弁してくれて。でもなぜだろうか。無性に後ろの席の緊急脱出装置を起動したくなるのは…。
≪駄目ですよ? まだ始まったばかりですから≫
「わかってる…」
もうため息をつくしかない。なんか先行きが不安だ。主に同乗者絡みで…。
どことなく気が重くなるのを感じつつ、俺は機体を基地の方へと旋回させるのだった…。
―To Be Countinue―
☆えむ’sコメント☆
ついに始まりました。これからしばらくお付き合いください。
さて、ゲームの方ですが。敵機を機銃で落とすことのなんと難しいこと…orz 結局ミサイルオンリーですわ。
戦法は作中のとおり。
あとリクエストにお答えしてEDFとの強制リンクを開始することにしました。
それを踏まえて、プロローグが変更となっております。興味のある方はご覧ください。
そして、AI名づけ、最終アンケート。幾つかAIの名前のアイデアが出ましたので、次の名から選んでコメント時にお伝えください。
①vivid【ヴィヴィッ】 ②ゼロ ③アイ ④エム ⑤ミュー
なおADAは著作権その他のことを考慮して除外させていただきました。ご了承ください(マテ
