LF第1話【山奥の館】 | 地球防衛軍第7支部(凍結中)

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 第1話『山奥の館』


 ファンレリアム。それがこの世界の名である。
 中世時代に非常に似ているが、魔法と言う特異な力の存在により、その世界の姿は少しばかり異なる。俗に言う「剣と魔法の世界」と言う奴だ。
 そんな世界のとある場所。
 森を抜ける山道の一角にて。大きな茂みの中に数人の人影があった。道行く人を襲い、金品を強奪する野盗の皆さんである。ファンタジー世界では、よく見られる方々で、『旅人が襲われる相手ランキング・ベスト5』にランクインしている普通の旅人にとっては非常に脅威の存在である。
 彼らは今、獲物が通りかかるのを静かに息を潜め、待ちかまえていた。誰かが通りかかれば不意打ちを仕掛け出鼻を挫き、こちらのペースにもっていく。そして金目の物をいただく。素直じゃけりゃ脅す。マニュアル通りの王道パターンである。
 実は見張りが、こちらに近づいて来るカモを見つけ、現在進行中で待ち伏せをしているところなのだ。
 それはどのくらい待ち伏せしていた時のことだっただろうか。
 ヒュルルルルルルル……
 突然。どこからか変な音が聞こえてくることに、野盗の皆さんは気がついた。
「…なんだ?」
 なんだろう?と首を傾げたのも束の間。
「ぬぉぉっ!?」
「ぐわぁっ!?」
 次の瞬間、爆発に吹き飛ばれ宙を舞う野盗達。とりあえず、何が起こったのかもわからなかったことだろう。瞬く間に一網打尽。そして出番のあた盗賊系関係者が必ず辿る共通の末路である。
「やっぱり隠れてたか…」
 そんな姿を少し離れた位置から眺めている一人の男。
 彼の名はアオバ コウスケ。ファンタジー世界と言う剣と魔法の世界にありながら、銃火器やらなんやらの近代兵器・ハイテク兵器を使うイレギュラー。そして、隠れていた野盗に対して、迫撃砲による砲撃を仕掛けるというファンタジー系の世界では(たぶん)前代未聞なことをやってのけた張本人である。
 普通だったら死んでいるかもしれないが問題ない。ファンタジー世界の住人と言うのは、爆発やら電撃やら……その手の物に対しては幾らか耐性があるのだ。もちろん無傷ではすまないだろうが。
 そうでなくても盗賊の類は、妙に生命力が高いことで知られている。あの程度どうってことはないのだ。
「…さて、先に進むか…」
 とりあえず前方の障害を排除したコウスケは、半分黒コゲ状態となった野盗をそのままに、さらに先を目指して歩き出す。しかし、そもそもなんで山道なんかを歩いているのか。その理由は朝にまでさかのぼる。



 その日の朝。コウスケは、酒場へと来ていた。
 別に酒を飲もうとか、そういうつもりはない。ただ様々な情報交換の場となっているし、コウスケのような冒険者――もとい傭兵への仕事も斡旋したりしているのだ。
 とはいえ少し前に盗賊団を潰したばかりなので、現在は路銀に困ってもいない。ただ単に、何か面白いことでもないだろうか?と、足を運んだだけであった。
 適当なカウンターの席を確保し、注文したフルーツジュースを一口。それからカウンターでグラスを拭いているマスターへと声をかけてみる。
「なぁ、マスター。なんか最近、変わった話とか面白そうな噂とか、なんかないか?」
「ん? そうだなぁ…」
 マスターはグラスを拭く手を止めると、顎へと手をやる。
「この街から北に1時間ほど行った場所に古い館がある。随分昔に家主がいなくなった所なんだが、ここ最近―――出るらしい」
「へぇ~」
「ゴーストの類は珍しくはないがね。しかし、興味本位で行った奴が帰って来ないという話もある。まぁ、近づかない方が身のためじゃないかね」
 そう言って再びグラスを拭く作業を再開するも、視線だけをコウスケに向けて、マスターはニヤリとした笑みを浮かべた。
「と言っても行くんだろう? そういう顔をしてるぜ?」
「…う」
「この仕事も長いからねぇ」
 はっはっは…と笑う酒場のマスター。対するコウスケはちょっぴり悔しそうだ。
 と言うのも表面では無関心を装ってみたのである。しかしマスターの目は誤魔化せなかった。さすがは数多くの冒険者なんかを相手にしているだけある。その辺の看破能力は大したものだ。
「まぁ、何かおもしろいことでもわかったら教えてくれ」
「わかった。じゃ、これ。料金と情報料な」 
 ジュース代と、話題提供のお礼を込めてチップを少々払い、その場を後にするコウスケであった。



 そして、今に至る。
 例の館の場所は前もって確認したのだが、なんといっても無駄に距離だけはあった。山あり谷あり野盗あり。おまけで魔物も付いてくる。
 長距離移動は面倒だが、この世界では歩くか、馬でも使うしかない。そしてコウスケは歩いていた。本人の言葉によれば、周りの風景なんかをゆっくり楽しむため……などと言っているが、実際は馬には乗れなかっただけである。
 ちなみに転移魔法なるものもあるようだが、魔法がさっぱり使えないコウスケには関係のない話だ。
 さて、山の中を歩いて、どのくらい歩いただろうか。鬱蒼と生える木々の隙間から一件の古ぼけた館が見えてきた。
 恐らく、別荘か何かだったのだろう。ふと見れば森の一部が切り開かれており、かなり眺めの良い景色が広がっていたりする。
「……ふむ」
 コウスケは幾らか離れた場所から、辺り一帯や館をおおまかに観察し、それから多機能型の双眼鏡を取り出した。ズーム機能を使い、館をさらに観察する。
 館は、こんな辺鄙な場所にあるにしては、なかなか豪勢な作りのようだった。玄関の正面は、荒れ果ててはいるものの、よく手入れされていたらしい庭であることがわかる。
 建物の方も2階建てで、パッと見…部屋の数もそれなりにはありそうだ。壁をびっしりと埋め尽くす蔦や苔が、その館に人が住まなくなってから、かなりの時間が経過している事を示してはいるが、大きな街にある金持ちの家にも劣らない立派さだ。
 ついでを言えば、ゴーストとかの類が出現しそうな雰囲気でもない。まぁ、今は昼間と言うのもあるのだろうが。
「興味本位で行った奴が帰って来ない……ねぇ」
 特に危険な何かがあるとは思えないのだが。しかしそういう話がある以上、何かあるのだろう。
「……用心だけはしておくか」
 ガチャリとアサルトライフル(イメージ:FN F2000)を取り出し、サイレンサーとフラッシュライトのオプションを装備。それから館の方へと歩いていく。
 だがすぐには立ち入らない。まず館の周りを一周して大体の構造を頭に叩きこむ。それから館の周りの様子を再度確認。その一連の作業を終えてから、ようやく玄関の方へと回る。
 分厚い木造の扉を静かに開けた先は、当然の事だがエントランスになっていた。割れた窓からかすかに光が差し込んでいるが、窓自体が汚れているのもあって、光源としては期待できるどほどでもない。
 フラッシュライトを点灯し、ゆっくりと中へと入る。
「…ん?」
 そこですぐに気がついた。ほこりが薄く積もった床。しかしよく見れば、幾つもの足跡が残っている。
「……前に来た奴のか…?」
 そう思いながら、その場に片膝を付いて、さらによく調べてみる。自分より前に興味本位で来た奴の物かと思っていたが、すぐにそうではない事に気がついた。
「まだ新しいな。しかも一人とか二人でもなさそうだし…。――何かあるのか…」
 その場にしゃがんだまま顔をあげるコウスケ。なんだかとっても楽しそうだ。
 と言うのも何を隠そう、このコウスケと言う男。好奇心が旺盛であり、一度気になると簡単には引き下がらない性格なのである。そして、元いた世界と異なるこの世界では、特にその傾向は強くなっていた。適当に旅をしてて洞窟見つけたら、とりあえず入ってみる!!そんな感じである。
 記念すべき一回目の時は、オークの住処にお邪魔してしまい、初の対魔物戦闘をした日でもある。ちなみに現在、その洞窟は原因不明の崩落により完全に塞がっているのだとか。閑話休題。
 いずれにしても誰かいる。迷い込んだ動物や魔物ではなく、人間型の何かが。
「……少しは用心しておくか」
 再び立ちあがれば、周囲を警戒しつつ歩き始めた。さすがに元特殊部隊というだけあって、その辺りの動きはプロである。全周囲を忙しく銃を向けつつ見回しながら、ゆっくりと歩いていく。
 不審な物音や何かの気配などもないか、神経を研ぎ澄ませつつ、足跡を辿って2階へと上がっていこうとして、ふと立ち止まった。
「念のために……」
 小さく呟き、階段のところにかがみこんでゴソゴソと何かの作業を始める。
「…よし。行くか」
 そして、満足そうに頷きつつ立ち上がり、2階へと移動する。
 館の2階は、大広間のある部屋を中心に、いくつもの部屋がならんだ作りとなっていた。廊下にそって幾つもの扉が並んでいるのだが、元々の薄暗さと相まって、どことなく不気味にも見える。
 コウスケは足跡を辿りつつも、部屋の扉を一個ずつ開きながら進む事にした。壁に張り付くようにして、横からそっと扉を開け、中をのぞきこむと言った具合である。
 どの部屋も、ベッドとテーブル。それに簡単な家具が置いてあり、どうも客室にでも使われているようだった。その一つ一つを見ていく。
「まぁ誰もいないわなぁ…」
 あるのは静寂のみ。しかし決して無駄ではない。部屋の中に隠れ、通り過ぎたところで後ろから襲われる可能性もあるのだ。仲間がいればともかく、今は一人。用心しすぎかもしれないが、用心するにこしたことはない。
 さらに奥へと進む。そして2階の一番奥まで来たところで、客室の扉とは少し作りの違う扉を見つけて立ち止まった。
「と言った先に………誰かいるし」
 アサルトライフルを構え、フラッシュライトの明かりを消す。それから扉に耳を当てて中の様子を伺う。
 どうやら部屋の中には誰かがいるようだった。話し声などはしないから、恐らく一人なのだろう。
「さて、何が出るか…」
 上唇を舐め、中からは死角となる位置に張り付くようにして身を寄せる。それから後ろ手にそっと扉を開ける。だが鍵がかかっているらしく開かない。
「………」
 もう一度、チャレンジ。やっぱり開かない。
「………」
 ここでコウスケの脳裏に選択枝が浮かんだ。
① 諦める。②鍵を奪う。③ピッキングで鍵を開ける。④それ以外の方法で鍵を開ける。
 まず①は却下である。ここまで来て、何もしないと言うのは自分のプライドが許さない。②の鍵を奪うと言う方法は有効的ではあるが、奪う相手が見当たらないので却下。③のピッキングは出来なくはないのだが道具をもってない。となれば、残るは④だ。
 そして、コウスケの場合。それ以外の方法と言うのは実にシンプルな方法であった。
「一番これが手っ取り早いし、別に人住んでないからいいよな」
 そう言いながら、扉の取っ手と蝶番の部分にくっつけているのは、C4プラスチック爆薬。それのセットが終われば、遠隔型の起爆信管を差し込む。
 後はアームターミナル――リストバンド型の多目的情報端末――を操作して起爆させるだけ。起爆モードを立ちあげ、少しばかりそこから離れる。それから、起爆させようとした、その瞬間――
「―――?!」
 コウスケは振り返るや否や、真っ直ぐに振り下ろされた剣の一撃を、アサルトライフルで受け止める。予想以上に重い一撃にバランスをくずしそうになるが、なんとか耐え切る。
「ぐっ…」
 そしてすかさず胴体部分を狙って蹴りを叩き込み、半ば強引に相手との距離を開かせる。
 そこに立っていたのは、全身鎧に包まれた大柄の男だった。ただ、どういうわけか…何か違和感がある。存在感はあるのだが、人間などの気配とは何かが違うのだ。
 しかし、コウスケにとってはそんなことよりも重要な問題があった。
「後ろから不意打ちなんて卑怯じゃないかっ!!もうちょっとでやられるところだったぞ!?」
 アサルトライフルを構えなおしながら、相手に非難の声を向けるコウスケ。敵が何者かと言う事よりも、そっちの方が重要だったらしい。とは言え、迫撃砲でいきなり爆撃するような男が言っても説得力はないと思うのは作者だけではないはず。
「……侵入者ニハ死ヲ」
 そんな抗議の声に対し、鎧を来た大男は抑揚のない声で一言答え、大剣を構えた。
「わかりやすい一言をどうも…!!」
 距離が空いている分、飛び道具を使うこちらが有利。すぐさまアサルトライフルをフルオートで叩き込んだ。
 放たれた弾丸は相手の鎧に弾かれ、幾つもの火花が散る。
「やっぱり無理か…っ」
 さすがにアサルトライフル程度では、金属製の鎧を撃ち抜くのは無理だった。ただ撃たれた反動で幾らか後退させただけである。
 後ろへと下がりながら、空になった弾奏を捨て、次の弾奏を装填。鎧の大男はコウスケの武器が自分に通用しないとわかったのか、巨体に不釣合いな速さで一気に距離を詰めにかかる。
「…ちょっ。その重装備でその速さは反則だろっ!?」
 予想外の早さに驚きながらも、横一文字に振り抜かれた大剣を飛び込み前転でかわし、そのまま横をすり抜けて後ろに回りこむ。それから、アサルトライフルの銃口の下部にあるハードポイントに、グレネードランチャーを取り付ける。
 床に半分しゃがんだような無理な体勢のまま振り返り、再びフルオート射撃。それによって怯んだ一瞬を狙ってグレネードランチャーを叩き込んだ。
「…!!」
 直撃を受けて大きく仰け反る鎧の男。だがやはり全身鎧の防御力は生半可ではない。しかし、そこで生まれた大きな隙を見逃すコウスケではない。
 その間に立ち上がれば、大胆にも鎧の男へとダッシュ。新たに取り出したC4爆薬(起爆信管込み)を鎧の胴体部分へと押し付け、そこからさらに相手を蹴り飛ばすようにして、飛びのき床へと伏せる。
「…勝った」
 アームターミナルの起爆ボタンを押す。
 耳をつんざくような爆音が轟き、その炸裂の衝撃波で鎧の男が吹き飛ぶ。ドアノブと蝶番を吹き飛ばすと違って、量は多め。それだけに威力もでかい。
「…ふぅ」
 パラパラと爆破の衝撃で埃など落ちる中、コウスケは平然と立ち上がり、吹き飛ばされて動かなくなった鎧の男の方へと近づいていった。
 油断なくアサルトライフルを向けつつ、相手の顔を見ようとフェイスカバーの部分を開いた。
「………はぃ?」
 中を見て唖然とする。鎧の中は完全な空洞だったのだ。
「…誰も入ってないのに動いてたのか…?」
 マジマジと中を覗き込み、さらにガチャガチャと鎧をばらしてみる。が、中には何もない。
 実は…と言っても読者の皆さんはすぐにわかっていると思うが、この鎧はリビングアーマーと呼ばれる魔物の類であった。…が、まだファンタジー世界の全てを把握していないコウスケにとっては初遭遇。こんなのもいるとは知る由もなくて当然。
 しかし、コウスケの反応はやはり少し変わっていた。
「……くそっ。人が入ってないってわかってたら、こんなに手間取らなかったのにっ」
 と心底悔しそうな表情を浮かべる。鎧が一人でに動いていた事については完全スルー。そもそも、こんなところに動く鎧なんぞいる方がおかしかったりするのだが、世間知らずと言うのは怖い物で、それすら疑問にすら思わない。
 本音を言えば、魔法とかがあるんだし、勝手に動く鎧とかいても不思議ではないと、あっさり割り切っているだけだったりする。恐るべき順応性である。
「次に会った時は遠慮なくいくだけのことだ」 
 と、あっさり気持ちを切り替えて、最初に入ろうとしていた部屋の前へと戻る。
 戻ってみると、なぜかドアも吹き飛んでいた。
「あ……誘爆してた」
 視線をドアから逸らし、こめかみに脂汗を一筋浮かべる。
 やっぱり幾ら倒せないからって、ああいう無茶苦茶はやるもんじゃないよなぁ。せめて、爆弾を近くに仕掛けている時はやめないとな…とちょっぴり反省をするコウスケ。何かが間違っている気もするが、それを突っ込む人間はここにはいない。
「と、とりあえず気を取り直して」
 小さく深呼吸をし、アサルトライフルの弾奏を代える。それからドアの横へと身を寄せ、中の気配を伺う。
「さて何があるかな…」
 気持ちを引き締め、一気に中へと飛び込む。
「…ぇ」
 その部屋の中に入ったコウスケは、そこで動きを止めた。そこにはコウスケの予想を見事に上回る物があったのだ。
 当初の予想としては、お宝の類が置いてある部屋とか、ただの書庫だとか。もしくはわけのわからない物がある倉庫。場合によっても、せいぜい元家主の寝室くらいのものだろうと思っていたのだ。
 ある意味、そこは寝室のようだったので予想は外れはいないのかもしれないが、それでも予想を大きく上回るものがあったのは確かである。
「あー………」
 どうしよう…。というか、どうしたらいいんだろう? そのあまりにも予想外の出来事に思考が珍しく凍るコウスケ。
 そこには、白いワンピースドレスに身を包んだ金髪の女性が倒れていた。



~つづく~