作戦No.FINAL【未来に進むために‐後編】 | 地球防衛軍第7支部(凍結中)

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※エピローグを追加しました。まだの方は一番下のリンクから、お飛びください。


 生き物の気配の全く感じられない広い通路を、イヅキ隊員は一人進んでいた。
 この先にあるのは、要塞の中枢部。そこにある動力炉を破壊すれば―――この戦いは全て終わるのだ。
 やがて、視界が開けて。再び巨大な空間へと出た。
「こ、ここは……?!」
 さきほど「G」と遭遇した場所にとても似ている場所だった。しかし、幾つか異なる点がある。幾つもの円柱型ガラスケースが等間隔に並んでおり、中には何かの液体らしきものが満たされている。さらにその部屋の中枢部には、何かの大型コンピューターらしきものがそびえている。
「ここが中枢部……」
 AS-99の弾奏を交換し、周囲の状況を確認する。残念な事に、他の突入部隊の隊員の姿は見当たらない。どうやら、まだ到達はできていないらしい。恐らく、さきほど遭遇した「G」に苦戦しているのだろう。
 しかし、悠長に待っている暇はない。こうしている間にも外では陽動部隊となっているEDFの損害が増加の一方を辿っているのだ。
AS-99を大型コンピュータへと向ける。……と、そこで不意にどこからか声が響いた。
「――マサカ、ココマデ侵入サレルトハ。計算外ダ―――」
「誰だっ?!」
 突然の声に、イヅキ隊員が叫ぶ。その問いに対し、声の主は抑揚のない声で答えた。
「――私ハコノ艦ノまざーこんぴゅーたーダ――」
「……ということは、お前が黒幕…?」
「――肯定ダ――」(※ここから先は、マザーコンピュータの台詞もひらがなで統一します。カタカナにするの面倒(滅))
「――この星の知的生命が、ここまで抵抗するとは、計算外だ。しかも、直接ここにまで来るとは――。――なぜ、そこまで抵抗する?」
「自分達の居場所を守るためだ。お前の方こそ、どうして地球を侵略しに来た…!!」
 AS-99を向けたまま、イヅキ隊員が声を荒げると、マザーコンピュータはただ一言こう答えた。
「――そこに星があるからだ」
「なに…?」
「――生命体のいる星があった。だから侵略した。それだけだ」
「………っ!!」
 それはあまりにも単純な理由だった。ただそれだけ。それだけの理由で、地球は何度も侵略を受ける事になったのだ。
 さすがにイヅキ隊員も怒りで我を忘れそうになるが、そこはなんとか堪えきる。
 いずれにせよ、理由はどうあれ―――すでにチェックメイトには違いないのだ。
「……まぁいい。理由はどうあれ、ここでお前を破壊して。この戦いに終止符を打つだけだ……!!」
「――それは不可能だ」
「なんだと!?」
「――なぜなら、ここには最強のガーディアンがいるからだ」
 そんな声と共に、マザーコンピュータのすぐ下にある床の一部が開いた。
「――私は侵略の際、この星の生命体を強化して尖兵とした。しかし、勝つ事は出来なかった」
 マザーコンピュータの言葉が続く中、その開いた部分からゆっくりとした速さで何かがせりあがってくる。
「――理由は、その星で一番の強い生命体ではなかったからだ。そこで私は、三度目の戦いの中、密かに情報を集め――それを元に一つの新たな……最強の尖兵を作り出す事に成功した」
「………? ……人…?」
 せりあがって来て現れたのは、どう見ても人型をしていた。というより人間そのものだ。
「――そうお前達と同じ「人」だ。だが、これはその「人」の中でも特に秀でた能力を持つ者がベースとなっている」
「……う、嘘……ていうか。……マジで…?」
 そこにいた人物はカラーリングこそ違う物の、明らかにEDFの――ペイルウイングの装備品を身につけていた。そして、そこに立っていた人物がゆっくりと顔を上げる。
「――これを量産すれば、今度こそ地球は落とせる」
 不本意ながら、その一言にはイヅキ隊員も頷かないわけにはいかなかった。
 なぜなら、そこにいる人物は――たぶん――この世界(えむ作)最強の人物と瓜二つだったのだ。目の色や髪の色はなんか違うものの――見間違えるはずはない。
 フェイ・ルーイング。前大戦の英雄の一人にして、インベーダーとEDFで恐怖の代名詞としてられる、伝説のペイルウイング(の偽者)である。
「――ここまできたのは称賛に値する。だが、これで終わりだ」
 その一言と共に、目の前にいる最凶の存在が飛行ユニットを展開した。元よりペイルウイングの装備はインベーダーの技術を解析したもの。コピーすることなど造作もなかったのだろう。
「………」
 ハッキリ言って震えが止まらない。最強のペイルウイングとのタイマン勝負である。しかも能力的にはいたって平凡なのが自分だ。
 しかも相手の装備はマスターレイピアTとサンダーボウ30と来た。
 ぶっちゃけ無理な気がする。しかし、目の前の相手をどうにかしなければならないのも事実―――
「……くっ」
 ふと脳裏に自分を信じて後に残ったイヅキ小隊の面々の姿が浮かぶ。もし、ここで引き下がってしまったら――自分は一体どんな顔をすればいいのだろうか。
「……こうなりゃ自棄だっ!!平凡な陸戦兵の底力……見せてやるっ!!」
 半分涙目でAS-99を構えるイヅキ隊員。とはいえ、この状況で開き直ってみせるとは大したガッツの持ち主である。
 そして、それと同時に――フェイさんのコピー(便宜上、以下「黒フェイさん」と呼称する)が空へと舞った。地球の命運をかけた一騎討ちの開幕である。



 状勢は初っ端からハードであった。
 まずイヅキ隊員が開幕と同時にAS-99を連射。しかし黒フェイさんは弾幕を抜けて目前まで迫ってきたので、咄嗟に真横へと緊急回避。一瞬遅れて、自分が今たっていた場所をマスターレイピアTが薙ぎ払う。
 その光景に冷や汗をかきつつ、転がり終わると同時に後ろからAS-99を叩き込むも、振り向きもせずにサンダーボウ30を発射。その予想外の攻撃をまともに受けるイヅキ隊員。
 だが―――基本的に対巨大生物を想定した装備である。対人戦では超至近距離でもない限り、逆に拡散系や複数発射型の装備は威力が激減してしまうため、ダメージは通常の半分以下で済む。
「……ま、まだまだっ!!」
 僅かに怯むも、すぐにその場から横へと緊急回避。そこからAS-99で、さらに攻撃する。
 だが、アサルトライフルとしては優秀な部類に入るAS-99でも、フェイさんと同等と思われる黒フェイさんには、なかなか当たらない。
 イヅキ隊員の腕が悪いのではない。相手のレベルがたかすぎるのだ。
「……強すぎる…っ!!」
 適当な場所に身を滑り込ませつつ、イヅキ隊員は呟いた。とりあえず、覚醒モードやら暴走モードにはなってないはずなのだが…。それでも手が出ない。
 いつもケーキ屋さんに攻撃されて、ハイパー化しているフェイさんだが…。実は普通の時でもかなり強いのだ。
「……どうする。このままじゃ絶対に勝てないぞ…」
 エリス隊員とかなら、ともかく。自分ではまともに戦って勝てる相手ではないのは間違いない。しかし使えそうな武器はAS-99だけ。もう一つあるにはあるが、あんな動きの速い相手向きの武器ではないし、そもそも本来ならもってくるつもりのなかった武器である。とてもじゃないが使えそうにない。
「………なにか。なにかあるはずだ…」
 どこから襲ってくるかわからない黒フェイさんの動向を伺いつつ、イヅキ隊員は必死になって考えた。
「!!」
 不意に足元が陰った。はっとした様子で見上げると、黒フェイさんが真上から急降下で強襲。それをまたしても際どいタイミングで回避する。そして立ち上がり様に発砲。同じタイミングでこちらに放とうと向けられていたサンダーボウ30に図らずも直撃し、使用不能へと追い込む。
 だが、そこで弾切れとなり―――。
「……ぐぁっ?!」
 その一瞬を突かれた。マスターレイピアで来るかと思いきや、接近されてハイキックで蹴り飛ばされた。飛行ユニットの推力の力を借りた蹴りは、なかなか強力でダメージはないものの、普通に吹っ飛ばされて仰向けに倒れる。――まぁ、これがエリス隊員なら、壁がある場所まで飛んでいって、それこそ漫画みたいに壁を砕くかめり込むかくらいになるのだろうが。
「……うっ?!」
 それでもすぐに起き上がろうとするイヅキ隊員であったが無理だった。そこで黒フェイさんにマウントポジションを取られたのだ。――光景的になんか色々ありそうだが、この場面に関する突っ込みは受け付けないので、ご了承ください――
 そのまま眼前に突きつけられるマスターレイピアT。それを突きつける黒フェイさんの表には一切変化がない。躊躇いも何も…だ。
 動きを封じられた以上。イヅキ隊員に打つ手はもはや残されていないに等しい状況だった。絶体絶命とはまさにこの事だ。
 もはや残された時間はわずかしかないだろう。しかし、その僅かな時間でもイヅキ隊員は諦めていなかった。何か……何か方法はないか?
 マスターレイピアTのトリガーにかかる指に力が篭るのを感じつつ、必死な思いで起死回生の何かを探すイヅキ隊員。
「……!?」
 そして、ここで奇跡は起こった。
 ふと巡らした視線の先。手の届く場所に、なぜかそれは落ちていたのだ。何で、こんな場所にあんな物が!? と思える程に予想を裏切る代物。しかし、同時にそれはこの状況を打開するだけの可能性を秘めた物でもあった。
 この状況を打破できるのなら、なんだっていい…!! 確実に迫る死の足音を聞きつつ、必死に手を伸ばして「それ」を掴んだイヅキ隊員は、そのままそれを黒フェイさんの目の前に突きつけた。
「!!」
 それを見た黒フェイさんに変化が訪れる。それまで戦闘機械の如く、無表情無感情だったのに、僅かに驚きの表情が浮かんだのだ。そして、何やら動揺した様子でイヅキ隊員の方へと向けた表情は「いいの…?」とでも言っているかのようだった
 イヅキ隊員がそれに対して小さく頷き、そして告げる。
「…その代わり、手を引いてくれないか…?」
「…………」
 イヅキ隊員の言葉に、黒フェイさんは、突き出された「それ」を手に取ると、静かに離れた。
「―――なぜだ…。なぜ戦いをやめる」
 マザーシップの驚きに満ちた声が響く。
 イヅキ隊員はよろよろと立ち上がると、取り落としていたAS-99を手にとり答えた。
「なんでかって…? 簡単なことだ。お前は、元になった人間の事を把握しきれてなかった。それだけのことだ」
「――なに?」
「でも、そんなことはいい。これで終わりだ……!!」
 最大の障害がなくなった以上。残るはマザーコンピュータのみ。妨害されることもなくAS-99を全弾叩き込むイヅキ隊員であったが、それらの弾丸は全てマザーコンピュータに届く前に四散した。
「…シールド!?」
「―――そのとおりだ。このシールドは今までのEDFの戦闘のデータを元に構築したもの。たとえ、お前たちの言う【ジェノサイド砲】を持って来ようと破壊は不可能。この地球上に存在する装備で破壊は不可能」
「……………」
 再び言葉に詰まるイヅキ隊員。まさか、最後の最後でこういう展開が待っていようとは。最強のガーディアンであるはずの黒フェイさんを無力化したにも関わらず、妙に冷静だと思ったら、こういう事だったらしい。
「――諦めろ。ここまで追い詰めたのは賞賛する。だが、最後に笑うのは私だ」
「……いや、違うな。最後に笑うのは俺――いやEDFの方だ」
 そう言いながら、ゆっくりとした動きでイヅキ隊員は、もう一つの武器を取り出した。本当ならハーキュリーを持ってくるはずだったのに、なぜか間違えて持ってきてしまった武器。だが―――幸運にも、それがこの事態を切り開く手段となろうとは。
 両手でしっかりと持ち、慎重に狙いを定める。
「―――無駄な事を。この地球上にある装備で、このシールドを破る武器は存在しない」
 静かに告げるマザーコンピュータ。それに対しイヅキ隊員は、セーフティーを解除しつつ答える。
「……この地球上にある装備なら………だろ?」
 ふと口元に笑みが浮かぶ。
 いつだったか。かなり前の話になる。クリスマスにプレゼントされた温泉旅行先で出会った、伝説の陸戦兵。今は地球防衛軍3の世界でフォーリナ―と戦っている彼から、その時に一つの武器をもらったのだ。
 その名は―――アシッドガン。蟻の酸を元に開発されたその武器は、この地球上では存在しないはずの武器。だが、それゆえにシールドを突破する事が可能だ。
「間違えて持ってきただけなのにな。こういうのを運がいいって言うんだろうな」
 自嘲気味に笑みを漏らすも、それは一瞬。すぐに真剣な表情へと戻る。
「ともかく……シールドは無効化だ!!」
 アシッドガンから一斉に酸が奔流のように放たれ、それを受け止めようとしたシールドはなす術もなく消滅する。
「―――そんな馬鹿なことが」
「あるんだよ。諦めるんだ」
 空になったアシッドガンから、再びAS-99を構える。今度は――――当たる。
「………これで終わりだ。今度こそ……」
 慣れた手つきで、弾奏を入れ替え、銃口を向ける。
「お前が消えれば、未来に進むことができるんだ。だから―――消えろっ!!」
「―――!!!!」




 2026年6月12日
 超巨大母艦の機能停止が確認。同時に巨大生物の行動パターンが一変し、戦況はEDF側へと傾いた。



 インベーダーとの三度目の大戦開始から、1年。
 人類は辛くも三度目の勝利を果たしたのである…………。




                                    そして――――


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□えむ’sコメント□

 残るはエンディング。2~3日中にアップいたしますのでお楽しみに。

 まぁ山場は無事に突破しましたがw あとちょっとだけ、お付き合いくださいねw