―2026年4月10日 13:01―
―日本 EDF日本支部司令部 とある隊員の部屋―
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ?!」
一大反抗作戦「オペレーション・ブレイブサンダー」の作戦当日。自室で頭を抱えて絶叫している一人の隊員がいた。
彼の名はフタカミ ジン隊員。EDFでも随一の運の悪さを持つ隊員である。その運の悪さは、食堂でほしかったメニューが目の前で売り切れになる。自転車にのったらパンクする。SNR-230改だと思ったらSNR-Xだった。など、パターン様々。
しかし、日常生活なら露知らず。任務で運が悪いなんて状況は洒落にはならない。そこで、いつも作戦前には運試しをするのが日頃の常なのだが……。
その日は凄まじいまでの不運ぷりだった。朝、起きたら寝相のせいで北枕になっていた。窓を開けたら黒猫が顔をあらっていた。テレビでの運勢は最悪だった。おみくじは大凶だった。朝ごはん食べてたら、茶碗に亀裂が入った。
しかも本日の作戦は重要な作戦である。これは絶対に何か良くない事が起こるに違いない。そう考えたジン隊員は、下手に迷惑をかけるよりは……と絶望のどん底で部屋に引きこもっているのだ。ちょっとくらいなら露知らず、あそこまで重なるとそうなるにもわからなくはない。彼には彼なりの苦労があるのだ。
と、そこで突然。
爆音と同時にドアが吹き飛んだ。
「!?」
な、なんだっ?!と身構えるジン隊員の元に、一人のペイルウイングが入ってくる。
「フタカミ ジンってお前か?」
「え、えっと……どなたでしょう?(汗」
「あたしか? あたしはジョディ・マクスウェル。今回のお前のチームメイトだよ。集合時刻になっても来ないから、呼んできてくれないかって頼まれてさ。でも、呼んでもドア開けてくれないから。強引に入って来た」
そう告げるジョディ隊員の手には、GランチャーUM-Xが握られていた。
「そう言うわけだから、ほらいくよ」
「い、いやだっ!!今日は絶対にろくな事が起こらないから断るッ!!」
「なんと言おうと連れてく!!」
「いーやーだー!!」
必死で拒否るジン隊員だったが、ジョディ隊員はそんな彼の意思を無視し、襟首掴んで強引に引きずっていく…。
「つべこべ言ってんじゃないよっ!!来いって言ったら来い!!いやって言っても無理にでも連れてくっ!!」
「あ~~~~~~~~(フェードアウト)」
ホントに女性?ペイルウイング? 引きずられつつ、ジン隊員はぼんやりとそんな事を考えたのは言うまでもない。
―同時刻―
―日本 EDF日本支部司令部 B滑走路―
「オペレーション・ブレイブサンダー」のため、次々と目的地に輸送機が飛び立つ中、自分達が乗る予定の輸送ヘリによりかかった、見るからにやる気ゼロの隊員がいた。なんで輸送ヘリかと言えば、近場が担当なのである。
「あー…。なーんで、俺がOBTのメンバーなんだよ。めんどくせ…」
「……と言いつつ、やることはやってるからだろ」
その横でスパローショットXのチェックをしながら、もう一人の隊員が答えた。
まず、一人目のやる気なしの隊員はヤナセ・ナツメ隊員。そして、その横にいるのがクナギ・ハヤト隊員である。
「まぁ、それで給料もらってるから、いちおうはなー。でも、こういうのって肩凝るんだよなー。他にも隊員いるんだし、別に俺じゃなくってもいいだろ…」
「……その割には、しっかりここにいるがな」
クナギ隊員はポツリと呟いて、視線を上げた。見れば遠くから、一人の陸戦兵が近づいて来る。
それが誰かは言うまでもない。イヅキ小隊隊長のイヅキ隊員である。
「えっと、今回ここの隊を指揮するイヅキ ユウスケだ。よろしくな」
「…こちらこそ」
「イ、イヅキ? あの……!?」
イヅキ隊員が名乗るや否や、ヤナセ隊員がピクリと反応を示す。
そんな彼の様子に気がつくことなく、イヅキ隊員はキョロキョロと辺りを見回す。
「……あと二人いるはずなんだがいないなぁ」
「今、最後の一人を迎えに行ってますから、もうすぐ来ると思います…。」
「あ、もしかしてあれか?」
何気なく視線を巡らせたヤナセ隊員が、おもむろにそう言って指を差した。見れば、一人のペイルウイングが陸戦兵を引きずって、こっちに来ている。
ある意味シュール。というか、非常に突っ込みどころ満載な光景なのだが―――
「そうみたいだな。じゃあ、そろそろ行くか」
イヅキ隊員は、あっさりとスルーして、輸送車両の方へと歩いていくのであった。
日頃、個性豊か(過ぎ)な隊員に囲まれているため、もはやこの程度では動じなくなっているのである。
―2026年4月10日 14:01―
―日本 東京市街地 上空―
作戦予定地域に到着し、パイロットが叫んだ。
「イヅキ隊長…!!目標地点上空につきました!!ですが―――」
「これまたすごいな……」
下を見下ろしてみると、すでにインベーダーの巨大生物が暴れていた。
ソラス・サイボーグ体。あのソラスをメカで強化した、通称メカソラスとも呼ばれる奴。それが10体も……そこにいた。
「……や、やっぱり…!!俺のせいだぁぁぁ」
一度に3体も出現することなど、ほとんどない事からその場で再び頭を抱えてしまうジン隊員。
「……さっきから気になってるんだけど。フタカミ隊員、なんでさっきから一人で頭を抱えてるんだ…?」
「あいつ…運が悪いから、自分のせいだと思ってるんだ」
イヅキ隊員の疑問に、ジョディ隊員が疲れた表情で答える。それを聞いた、イヅキ隊員はジン隊員の方へと歩いていくと、ポンと肩を叩いた。
「メカソラス10体を敵に回す状況に遭遇なんて、確かにツイてない。でも、これ以上運に見放された状況はないわけだから。これより状況が悪化する事はないとは思わないか?」
「……………」
「これ以上悪化しようはない。それなら後は良くなる方向しか残ってないじゃないか」
「……だけど…」
「大丈夫だよ。フタカミ隊員がピンチになっても、その時は、こっちがフォローするだけのことだ。だから気にせず…、やれることをやるんだ」
「………了解」
イヅキ隊員の言葉で、少し気を取り直したか。少しばかりジン隊員の表情が変わった。それを見て頷くと、イヅキ隊員は全員に告げる。
「メンバーを3つに別けよう。一人で倒せる自信のある奴はいるかな?」
「……俺が行きます」
「あたしも行けるぜ?」
クナギ隊員とジョディ隊員の二人が静かに片手を上げた。
「わかった。俺とフタカミ隊員、ヤナセ隊員はスリーマンセルで対処。行くぞッ!!」
そう言ってイヅキ隊員は輸送ヘリのハッチを開いた。
~VSメカソラス戦~
~ジョディ隊員と、クナギ隊員の場合~
一言で言ってしまえば楽勝であった。武装が違うとは言え、ジョディ隊員はペイルウイング。ペイルウイングと言えば、対ソラス系の敵にとっては鬼門な存在。例え武器が違うとしても戦術に変わりはない。そして―――ショットガンと言うのは、密着距離では絶大な威力を誇るわけで……。
さらに陸戦兵のクナギ隊員。彼の左腕は実はワイヤークロー内蔵の義手なため、近づいてワイヤークローでソラスの背中に取りつくことなど簡単な事だったりする。背中に取り付いてしまえば、それはもはやペイルウイングと大差はない。さらに、彼の右足は加速用バンカーだが、至近距離で使った時の威力は計り知れない物があり―――
「おらおらおら~!!」←零距離でショットガン連射
「…悪いな」←バンカー使用。
ジョディ隊員はソラスを完封。クナギ隊員に限っては秒殺に終わったりする。
~VS強化型メカソラス戦(ぇ~
~イヅキ隊員・ヤナセ隊員・フタカミ隊員の場合~
「ただのメカソラスじゃない…? ……角つきって事は、まさか隊長?(汗」
「や、やっぱり俺のせい――――」
「のんびり話してる場合じゃないぞ!?」
通常のメカソラスと同じと思って挑んだ三人であったが、予想外の強敵により苦戦を強いられていた。
見た目はメカソラスだったのだが、よくみると角があって武装面が大きく異なっていたのだ。
まず口からのビーム砲は、火炎放射に戻っていた。おかげで前のほうからの攻撃の危険度は増加。さらにミサイルはアダン等が使ってくる半誘導レーザーに換装されており、スプラッシュグレネードは、UFOファイターの撃ってくるビーム砲へと変わっており、設置位置も正面だけでなく、足元に装備されているのだ。
「なんのぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
イヅキ隊員とフタカミ隊員が相手の攻撃に翻弄される中、ただ一人ヤナセ隊員は弾幕をくぐり抜けて攻撃を叩き込む。
その動きは、これまたすごいものだった。 正面の火炎放射を警戒しているので、主に背部からの攻撃なのだが、最低限の動きでビームや半誘導レーザーを回避しまくりつつ、ゴリアスやライサンダーZを叩き込んでいくのだ。しかも、その回避は、それが全て掠るか掠らないかのギリギリレベル。恐るべき見切りである。
だが、なかなかダメージが通らない。……と言うのも、あろうことかアダンが搭載しているバリアまで貼ってるという無茶苦茶ぶりなのだ。
それでもなんとか、イヅキ隊員達が無事でいられるのは、ヤナセ隊員が敵の攻撃を一気にひきつけてくれているおかげだったりする。
やがて、他のメカソラスを殲滅したジョディ隊員とクナギ隊員がイヅキ隊員たちの元へと戻ってきた。
「隊長、大丈夫そうだな」
「まぁ、ヤナセ隊員ががんばってくれてるから、なんとか。ただ…強化型らしくて、こっちの攻撃が通らないんだ。―――ヤナセ隊員、体勢を立て直すから一旦下がるんだ!!」
「了解っ」
攻撃は通用せずとも牽制としては効果があるため、とりあえず攻撃だけは続ける。
「あんなのに遭遇するなんて、やっぱり俺のせい…」
「だぁー、男がうじうじとぉっ!!」
「……ヤナセ…いつもとは全然動きが違ったな…。普段はめんどくせーとか言って、後衛ばかりなのに…」
「とりあえず、少し離れよう。ジョディ隊員、陽動を―――」
とは言え、このままでは圧倒的に不利。一度、下がって体勢を立て直そう。そう判断してイヅキ隊員が口を開いた時の事だった。
不意にどこからか地響きが聞こえ始めたのだ。それどころか、地面が揺れている…?
「……なんか、嫌な予感が…」
日頃の賜物か、イヅキ隊員は漠然とした何かを感じとっていた。感覚としては、ハルナ隊員が暴走しそうになってる時に感じる物に近い。
何か…とんでもないことが――――そう考え、ふと視線を強化型メカソラスの方へと向けた時、それは起こった。
突然、強化型メカソラスの足元が陥没したのだ。いや、ただの陥没ではない。一体どんな深さなのか、足元に出来た巨大な穴に消えていく強化型メカソラス。
けれども事態はそれで収まらない。穴は崩れながらどんどんと広がり、イヅキ隊員の元へと迫って来る。もちろん、このあとの彼らの反応は非常に早かった。
「に、逃げろっ!!とりあえずっ!!」
「ジョディ隊員は、フタカミ隊員を頼む!!クナギ隊員!!ワイヤークローで―――」
「りょ、了解!!ヤナセ!!お前も掴まれ!!一気に行くぞっ!!」
その後、強化型メカソラスは突如地面に出来た巨大な穴の底で大量の瓦礫と土砂に潰されて完全に機能が停止されたのを確認。
イヅキ小隊の面々も、クナギ隊員のワイヤークローや、ジョディ隊員の助けもあって巻き込まれることもなく全員が無事であった。東京市街地のど真ん中に突如出現した直径数百メートルクラスの大穴……。
なんでそんなのがいきなり出来たのかは不明だが、結果として九死に一生を得たのは言うまでもない。
これはイヅキ隊員の持つ幸運のおかげか、はたまたジン隊員の不幸のおかげかは定かではない。ただ言える事は結果オーライって事である。
~おまけ~
東京市街地に出来た大穴だが。やっぱり数日程度で完全に元に戻ったらしい。
さすがは脅威的な復興能力を持つEDFの世界である(ぉ
□えむ’sコメント□
オペレーション・ブレイブサンダー終了!!なんだろう、この達成感は…。なんか71話の壁を終えた時並の充実感なんだが・・・(汗 キャラ投稿してくださった皆様、本当にありがとうございました。
キャラによって、活躍の度合いが違ったりしていますが…そのあたりはご勘弁を(汗
とりあえず、ここまで来るとイヅキ隊員の幸運の力。なんか逆に怖くなってきますね…(ぉぃ
でもって大穴が出来た理由。それはもう言わなくてもわかりますよね?w