―2026年4月10日 13:52―
―アメリカ グランドキャニオン―
グレイ隊員が日本の青島海岸にいたころ。
イヅキ小隊の一人ハルナ隊員は、アメリカのグランドキャニオンにいた。彼女の小隊の任務は渓谷内にいる羽蟻及びダロガへの総攻撃である。
このミッションのため、ハルナの小隊は、遠距離担当と近距離担当の両方がこなせるメンバーで構成されている。
まず、イズナーCカスタムとレイピアGスラストを装備したハルナ隊員については、説明の必要はないだろう。そして、彼女を小隊長に4人の隊員がいた。
ネオ・スキャナード隊員。ライサンダー2とボルケーノ6Aが主装備だが、実は日本刀(特注)を使った超近接戦も出来るのが売り。ちょっとばかり危ないところもあるが、侍の魂を持つ生粋のアメリカ人である。
その横で火炎放射器のチェックをしているのがジョン・スミス隊員。火炎放射器のエキスパートで、近距離戦闘のプロ。唯一、この中では遠距離戦が出来ないものの、不安定な動きをする羽蟻に対して火炎放射器は有効な武器のため、配属された。
三人目はトオノ・ミツヤ隊員。彼の装備はかんしゃく玉とSNR-230Dと、これまた遠近両用型である。なんでもエリス隊員の投擲に憧れて以来、必ずかんしゃく玉を欠かさない隊員で、どことなく不思議な雰囲気のする人物である。
そして――――
「くそっ!!さっさと時間になりやがれっ!!ダロガを倒せと、俺の血が騒ぐんだっ!!」
ライサンダーZとAS-100Fと言う反則レベルの武器を持って騒いでいるのが、コイズミ・ユウジ隊員である。まぁ、色々物騒な逸話を持つ気性の荒い隊員だが、戦闘力だけは申し分ない。
作戦開始まで、すでに後僅かと迫っていた。
「……………」「そろそろ時間だな…」(Byスミス隊員)
「……………」「…結構敵が多いですね…」(Byトオノ隊員)
「……………」「だが勝てない相手ではない」(byネオ隊員)
「……………」「そもそも、負けたらピンチ…」(byハルナ隊員)
静寂。それもそのはず、ここのチームは、どういうわけか全員口数が少ないか無口な人ばかり。だから世間話の類もなく、静かに待っているだけだ。
だが、そんな中でただ一人、この空気に耐えられない隊員がいた。ユウジ隊員である。
「なんか喋れ~っ!!これじゃあ、一人とかわんねぇだろうがっ!!…なんなんだ、これはっ!!さては、これもの庄治の陰謀かっ?!」
静かな中、ただ一人喋るユウジ隊員。彼は孤独とか大嫌いな人間であった。
ユウジ隊員がしゃべりまくる中、時間だけが過ぎていた。やがて、作戦開始の時間が到来した。
「……………」「作戦は…?」(byネオ隊員)
「……………」「…ネオとミツヤがバックで」(byハルナ隊員)
「……………」「なら羽蟻は任せてくれ」(Byスミス隊員)
「……………」「ネオさん、よろしくお願いします」(Byトオノ隊員)
ハルナ隊員、ネオ隊員、スミス隊員、そしてトオノ隊員の4人が顔をあわせる。そして、おもむろに全員が頷き、一斉に動き出した。
「な、なんなんだぁぁぁぁっ?!俺だけ仲間はずれかよっ?!ちくしょぉぉぉぉっ!!」
一人だけ蚊帳の外になってしまったユウジ隊員が叫ぶ。すると、ハルナ隊員が戻ってきてユウジ隊員に言った。
「……ごめん。無口同士で通じてた」
どうやら無口4人組では意思疎通が成立していたらしい。
「……とりあえず、ユウジは前衛で」
「つまり好き勝手にやれって事だな。いよぉぉっし!!てってーてきにやってやるぅぅぅぅ!!」
実に単純明快な作戦に、ひたすらハイテンションを維持しつつ突撃しようとする。しかし、その直前。いつのまにかすぐ隣にまで近づいていたハルナ隊員が耳元でボソッと囁いた。
「……味方撃ったら、これ」
そう言って立てた親指で首を差して横一文字。
「…………っ?!」
それを見たユウジ隊員が固まった。この時のハルナ隊員は、怖い物知らずのユウジ隊員をすら怯ませる何かを漂わせていたのである。
さて、話は多少ずれたが戦闘開始となった。
ハルナ隊員。それにユウジ隊員がダロガの方へ突っ込んでいく中。ネオ隊員はトオノ隊員と共に、ダロガに狙撃による先制攻撃を始めた。そこに突如頭上から羽蟻が攻撃を仕掛けてくる。
「……………」「…頼めるか…?」(Byネオ隊員)
「……………」「はい、任せてください」(byトオノ隊員)
ちらりとネオ隊員が視線をトオノ隊員に向けると、トオノ隊員はかんしゃく玉を空へと放った。
空中で炸裂する無数の小さな爆発。それに煽られて体勢を崩して羽蟻が墜落するや否や、ネオ隊員は腰に刺していた日本刀を抜き、駆け出していく。
一刀両断。そして、さらに墜落した羽蟻が飛び出す前に、次の奴へと切りかかる。
言葉をかわしていないにも関わらず、すでに二人には見事な連携が出来上がっていた。トオノ隊員が羽蟻を落とし、ネオ隊員が斬る。そして、攻撃がやむと共に狙撃……と言った流れである。
一方、突撃したメンバーも、なかなかのコンビネーションだった。スミス隊員の火炎放射が羽蟻を次々と殲滅。その間をねってハルナ隊員がダロガを仕留める。戦闘力最強のユウジ隊員は、もちろん。さくさくダロガを落としていく。けれども味方殺しはしない。ハルナ隊員の脅迫の効果である。
時々、意味もなくユウジ隊員が独り言を呟くも――――全員余計な事は言わないタイプなので、誰も突っ込まない。よって、それによって死人が出る事もなく、作戦は順調に進んでいった。
そして作戦開始から15分あまりが経過していた時には、敵はほぼ全滅に陥っていたのは言うまでもない。
「………」「……これで終わりだっ」(Byスミス隊員)
最後の一匹が、スミス隊員の火炎放射によって倒された。
他のメンバーも戦闘終了し、その場所へと集まってくる。
「……………」「何とか終わったな」(Byスミス隊員)
まず、スミス隊員が全員を見回した。
「……………」「ちょっと不安でしたけどなんとかなりましたね」(Byトオノ隊員)
それを見てトオノ隊員が微かに笑みを浮かべる。
「……………」「精鋭によるチームだ。当然だ…」(Byネオ隊員)
さらにその横では、ネオ隊員が無表情のままに小さく頷く。
「……………」「みんな、ご苦労様…」(Byハルナ隊員)
そして、うんうんとなにやら満足に頷くハルナ隊員。
でもって―――――
「なんなんだ、この戦闘が終わった後の盛り下がりはよぉぉっ!?普通は、もっと、あれだろうがっ!!ていうか、俺だけ仲間外れにするなぁぁぁぁぁッ!!」
そんな静かな中、ユウジ隊員の叫びだけがグランドキャニオンに轟くのであった……。
□えむ’sコメント□
はい。二つ目ハルナ小隊。無口さん+αですw
無口部隊ってのは、メンバーを見て、すぐ構想浮かんだのですが…。突っ込みがほしかったので、孤独大嫌いな悠司隊員も放り込んで見ましたw とことん貧乏くじ引かせてますが(ぉぃ
なお、この作品は 【Ctrl+A】推奨です(ぉ そうすることによって、心の声(?)を見ることができます(ぉ