作戦No.012【伝説のペイルウイング】 | 地球防衛軍第7支部(凍結中)

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―2025年7月28日 10:04

―東京 EDF日本支部司令部―

 アマゾン偵察作戦から、数日が過ぎたある日の事。その日は珍しく、イヅキ小隊全員がオフの日であった。

「ハルナさん、ハルナさん」

「…ん?」

 そして、ハルナ隊員が食堂で、のんびりのほほんと緑茶をすすっていた時のこと、おもむろにエリス隊員がやってきた。当然、オフなので私服姿。ただ、性格などに反して、動きやすいラフな服装をしている。さらに両手には、対インベーダーで愛用している黒いグローブ。なんというか、ストリートファイトでもやりそうな雰囲気だ。…さすがにそれはないと信じたいが。

「ハルナさん、今…お暇ですかぁ?」

「…暇」

「じゃあ、これからご一緒に出かけませんか? 基地の近くに、美味しいケーキ屋さんがあるらしんですよ」

  どうも甘いものが好きらしく、とても嬉しそうな表情で告げるエリス隊員。ただし、甘いものが好きだとは言っても、常識の範囲であることを付け足しておく。

「………行く」

 少しばかり首を傾げるも、ハルナ隊員は静かに首を盾に振った。なんだかんだいっても、彼女も女の子なのだ。……あ、そんな目で睨まないでください(汗

 ともかく、意見が一致すれば話は早かった。とりあえず着替えてくると、一旦ハルナ隊員は別れ、二人は巷で噂のケーキ屋さんへと出かけることになったのである。



―2025年7月28日 10:32

―東京某所 『とても美味しいケーキ屋さん』―

 基地から歩いて30分の距離。そこに、そのケーキ屋さんは存在した。

 ごくごく普通のビルの一階に位置する、またまた普通のーケーキ屋さんである。間違っても、とてつもなく超高層ビルがケーキ屋さんと言う訳ではない。

 ドアを開けて中に入ると、中は実に落ち着いた雰囲気のある装飾だった。それでも凝っているわけではなく、一言で言えばシンプル イズ ベスト。どうやら、人気は高いらしく、客足は上々だ。

 とりあえず空いている席に腰を下ろしてメニューを見ていると、ウェイトレスが一人近づいてきた。

「いらっしゃいませ。ご注文は決まりましたか?」

「……お勧めを一つ」

「あ、じゃあ私も、同じのを4つ

「は?」

 温厚な笑みを浮かべつつ告げるエリス隊員の言葉に、思わず目をまるくするウェイトレス。

「……気にしなくていい。いつものことだから」

「は、はぁ…。じゃあ、しばらくお待ちください…(汗)」

 ハルナ隊員の言葉に、何か納得の行かない表情で下がっていくウェイトレス。

 しかし、ここだけの話。エリス隊員は、本当によく食べるのだ。ざっと4倍ほど軽く。それでも体重が増えないのは、やはり戦闘のおかげだろう。ちなみに、以前…ふざけて「太るぞ~」とからかったグレイ隊員は、エリス隊員の空に突き上げるようなアッパーカットによってお空の星となった。それ以降、EDF日本支部では、その話題は禁忌となっている。

 それから間もなく、ウェイトレスが5個分のケーキを持って来た。

 スポンジケーキをベースに生クリームとイチゴの乗った、見た目は普通のショートケーキである。

「……お勧め?」

「そうなんでしょうねぇ」

 お勧めというほどの物でもない気が…。そう思いつつ口に運ぶ。

 …が、それは普通のショートケーキではなかった。シンプルな中にも味わいと言うものがあり、生クリームにしても、絶妙な量で味が成り立っている。さらに、その生クリームとスポンジケーキとイチゴが、それぞれの味を引き立てているかのような――――。

 そう、強いて言えば絶品かつ洗練されたショートケーキだった。

「……おいしい」

「本当ですねぇ。これなら、何十個でも入りそうですよ」

「……何十個……」

 エリス隊員の言葉に、思わず食べるのを止めて顔を上げるハルナ隊員。しかし、彼女ならそれくらいはやりそうだ…と一人納得して食べるのを再開する。

 それから一しきり満喫して、二人がレジで清算しようと待っていると、奥の方からパティシエと思われる女性が現れた。どうやら、ここのケーキは彼女が作っているらしい。

「あ、ケーキとても美味しかったです♪」

 エリス隊員が笑顔で告げると、そのパティシエの女性はとても嬉しそうな表情を浮かべる。

「そう?そう言ってくれると、私としても嬉しいわ」

「……見た目普通なのに、すごくよかった」

「そうでしょう?色々研究や経験を重ねて、少しでも美味しくなるように、日夜がんばってるもの」

 とても上機嫌な様子で話を始めるパティシエの女性。今の仕事が本当に好きなのだと言うことに、エリス隊員もハルナ隊員も、すぐにわかった。

「もう天職って言ってもいいかも♪」

「そうですかぁ。ともかく、ごちそうさまでした」

「いえいえ。また―――」

 不意に、そこでパティシエの女性の言葉が、警報の音にかき消された。

「これって―――」

「……接近警報。この周辺にインベーダーが出現したっぽい」

「…!!」

 すぐさま、ケーキ屋さんから外へと飛び出したエリス隊員とハルナ隊員。そんな二人が目にしたのは、陸戦兵器ダロガと黒蟻の混成部隊だった。

「ど、どうしましょうか…。一応、私はすぐに戦えますけど・・・」

「……私は武器がない」

「…あぅ。私一人じゃ、あれだけの数…抑え切れませんよ?」

 攻撃対象は一度に一つ。さらに近づかなければいけないため、エリス隊員は防衛戦には向かなかったりするのだ。

「…困った。敵さん、まっすぐこちらに来る―――」

 敵の動きを見てハルナ隊員がポツリと呟く。もし、このまま真っ直ぐに来れば―――このケーキ屋さんもどうなるかわからない。まぁ、犠牲者が出ることに比べれば、お店の一つ大したことはないのだが。

「……私のケーキ屋さんが壊されるって言うの…?」

 すぐ後ろからパティシエの女性の声が響いた。なにやら衝撃を受けたらしく、半分呆然とした様子だった。そして、ふらふらとした足取りで店内に戻っていく。

「……なんだかかわいそうですねぇ。…やれるだけやってみましょうか」

「…ん、少しでも時間を稼げば、EDFが――――」

 駆けつけてくるに違いない。そう言おうとした時、二人の間を何かかが駆け抜けて行った。

「ふぇ?」

「……?」

 一瞬何かと瞬きをする二人だったが、すぐに気がついた。一人のペイルウイング隊員が、店内から飛び出してきて、二人の間を駆け抜けていったのである。しかも、その走る速さは、陸戦兵並。

 呆然とする中、飛行ユニットを展開。そして敵陣のど真ん中に突っ込む。直後、凄まじい勢いで撃ち出されるプラズマアークの刃が見えた。

 赤とかそんなレベルではない。黄色みがかった白のプラズマアーク刃。そう、あれはマスターレイピアだ。

「インベーダーめぇっ!!またしても、懲りずにーっ!!」

 やがて聞こえる怒声。同時に、その気迫に呼応でもしているのがガラスが震える。

 マスターレイピアで黒蟻を瞬く間に殲滅し、再び飛ぶ。そして今度は、ダロガが図太いレーザーにぶち抜かれて一撃で沈黙する。

「今のってARC-LARZじゃないですか?」

「……ん。しかもなんか、飛行時間が長い」

 なす術もなく立ち尽くし、見る見るうちに壊滅していく敵戦力。

「……なんて言うか強すぎ」

「装備からして、次元が違いますからねぇ。というか、あの人…ケーキ屋さんから出てきましたよね…?」

「………ん」

 いきなりケーキ屋から出てきたペイルウイング隊員。その強さは、もうバランスを鼻歌混じりで完膚なきまで粉砕するほどのものだった。

 ふと気がつけば、すでに敵は全滅。完全に破壊されたダロガの残骸の上に、そのペイルウイングの姿一人見える。

「―――私のケーキ屋さんには、指一本だって触れさせないわッ!!

 遠くからそんな声が響く。

 それを聞いて、ハルナ隊員がポツリと呟いた。

「………思い出した」

「え?」

「…前大戦を終結させた伝説のペイルウイングが、EDFを除隊してケーキ屋さんを始めたって噂」

「……ふぇ?…じゃ、じゃあ…」

 恐る恐ると言った様子で、改めて向き直る。

 フェイ・ルーイング。その名前はEDFでも有名である。前大戦を終結させた伝説のペイルウイング。ただ、前大戦が終結したと同時にEDFを除隊し、その後の消息はよくわかってはいない。ただ巷でケーキ屋さんを始めた。そんな噂は流れていた。

 しかし、考えてみれば…あの極度の――ケーキのためになら命を賭けるケーキ好きな彼女である。自分から、ケーキ屋さんを始めたとしても何の不思議は―――いや、むしろ当然の事と言ってもおかしくはない。

 なんで除隊したのに、EDFの装備を持っているのだろう。とか、実は料理出来たんだ…とか、色々突っ込みたいことはあるが、いずれにしてもかつての英雄は、今はケーキ屋さんのパティシエになっている。

 それだけは、紛れもない事実であった…。





☆予告
 イーグリット隊員が正式にイヅキ小隊へと配属となった。

 そんな中、市街地にソラスが出現。これを撃退すべく、イヅキ小隊は現地へ。

 しかし、到着した時には市街地は廃墟と化しており、さらに驚愕の事実がイヅキ小隊の面々を待ち受けていた。

 

次回――作戦No.013【怪獣行進曲】

宇宙怪獣ソラス登場!!



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□えむ’sコメント□

 フェイさん登場。恐らく、かなり意表を突かれたのではないかと思いますが、どうだったでしょう?

 ケーキ好きが高じてケーキ屋さんになってるとは夢に思うまい。まぁ、同時に納得も出来る展開ですけども。

 ちなみに売上は上々。他のケーキもどれも超一流の味に匹敵するレベル。それでいて、値段は普通のケーキ屋さん並と言うのが、彼女のケーキ屋さんの特徴。そして、近くにインベーダーが出現すると、速攻で殲滅。そのため、あのケーキ屋さんのある街は、安全地帯と化していたり。

 そして今日は彼女も、つまみ食いををしつつ、せっせとケーキを作るのです。