―2025年7月23日 9:14―
―南米 アマゾン奥地―
「暑いなぁ」
「あぢぃ~」
「…暑いかも」
「暑いですね~」
「うむ。確かに、暑い」
南米赤道直下。うっそうと木が生い茂る世界有数の大森林地帯。一時期は、森林伐採などで色々問題があったこの場所も、すでに地球環境との共存に成功している、この世界。今では徹底された環境保護政策により、少しずつだがもとの姿を取り戻していたりする。
そして、そんなジャングル オブ ジャングルの密林の中、どういう経緯か不明だがイーグリット隊員を加えたイヅキ小隊の面々は進んでいた。
しかし、まぁなんと言っても暑い。湿度がもうすごいのだ。気温もそれなりにあるし。
唯一の救いは密林の中なので、直射日光の影響は少ないことくらいか。が、足場は悪いし、色々いるし。決して楽な行軍ではない。
「なぁ、隊長~。その巨大生物が出たってとこは、まだなのかぁー?」
「うーん。あと、4kmほど先かな」
「…うげぇ」
GPS内蔵のマップを見て、イヅキ隊員が答えると、グレイ隊員はぐったりとした様子でうなだれた。
そんな彼を見て、残りの面子が口々に告げる。
「……体力なさすぎ」
「ハルナは飛んで楽してるだろーっ!!」
ハルナ隊員。小刻みにホバリングしながら、付いてきていたりする。が、そうでもしないと置いていかれるので仕方がない。
「そうですよ~。陸戦兵は身体が資本なんですから~」
「てめぇと一緒にするなーっ!!」
にこやかに汗一浮かべず告げるのはエリス隊員。まぁ、彼女は体力・スタミナ・その他がすでに常識を越えている。確かに、一緒にされても困る。
「では開発部の僕よりも、先にダウンしていると言う、この事実にはどう突っ込むかね?」
「ぅ……」
なぜかこんな時でも、アーマースーツの上から白衣着用しているイーグリット隊員の突っ込みに、言葉に詰まる。
常に走り回って転がりまくり、時として吹っ飛ばされたり、撃たれたりと過酷な日々を送り、否応なしに鍛えられる陸戦兵。対する相手は、研究室に閉じこもって(違)、日夜研究・開発を行なっているだけ。どっちが体力つくは言うまでもない。そして、それを考えれば―――グレイ隊員には立つ瀬もない。
「まぁ、仕方ないよ。グレイは重武装なんだし」
「た、隊長…」
苦笑を浮かべつつイヅキ隊員が助け舟を出し、何やら感動した様子を振り返るグレイ隊員。
「だからと言って優遇も出来ないけどな。だから、がんばれ」
「げふぅorz」
が、それも束の間の幸せだった。合掌。
さて、それはともかく、そんな余裕ある会話をしつつ先へと進むイヅキ小隊。
それから歩き続けること、しばらく。不意にイーグリット隊員が立ち止まった。
「ん?どうしたんですか?」
いち早く、それに気がついたイヅキ隊員が振り返る。
「携帯レーダーに反応がある。…ふむ。上空から降下してくるようだ」
「上空から降下? …っ、まさか―――!?」
イーグリット隊員の言葉に、イヅキ隊員は幾らか顔色を変えた。
前大戦でEDF部隊を苦しめた敵の新型陸戦兵器ディロイ。あれは確か、衛星軌道上から降下してきたと聞く。現在、まだ確認はされていないが、まさかそれが?
さすがに他の面子も悟ったらしく、すぐに警戒を強め、空を見上げる。
待つこと数秒。不意に、空に一つの黒い点が生まれた。…が、燃えながら落ちてくる隕石ではなさそうだ。
「あれ…ディロイじゃねぇな」
「じゃあ、なんでしょうか」
「なに、落ちて来ればわかる」
いや、落ちてきてからじゃ遅いと思うのですが…。と突っ込むだけの余裕はなかった。
さらに黒い点は近づいて来る。しかも、まっすぐこちらに。
「……やばいかも」
「見りゃわかるっ!!散開っ――!!」
イヅキ隊員の一声で、すぐさまその場から散るイヅキ小隊。直後、ちょっとした振動と同時に衝撃波を受け、全員が昏倒する。
「ぐっ!?な、なん――――ぇ」
すぐさま起き上がり、落ちてきた物の正体を見極めようと振り返ったイヅキ小隊は、そこで目を点にした。
何かはすぐにわかった。ピョンピョンピョンピョン跳ねまくって、特に猫や犬に付いている事が多い、脅威のジャンパー。
「蚤(ノミ)型の巨大生物…って、うわっ!?」
その姿を捉えるや否や、その蚤型巨大生物は跳躍。あっという間に空の彼方に見えなくなる。
「すごいですねぇ」
「蚤のジャンプ力は身長の100~300倍って聞いたぜ?」
「じゃあ、900m近く飛ぶわけですね♪」
飛び上がった蚤型巨大生物を見送りつつ、のほほーんと空を見上げるのはグレイ隊員とエリス隊員。。
直後。再び着地と同時に生じた衝撃波によって吹っ飛ばされる二人だったりする。(ちなみにハルナは飛んでいたのでノーダメージだった)
「何やってんだか・・・」
「……丈夫だから大丈夫」
「まぁ、それはそうだけどさ…」
わからなくはないが、それでも小さく溜息をつくイヅキ隊員。まぁ、実際―――あの二人は通常の陸戦兵とはスペックが違う。イヅキ隊員のHPを1000とすれば、グレイ隊員は2000。エリス隊員は3500くらいあるのだ。半端なタフさじゃあない。
「レーダーに反応は一つってのが気になるけど、さて…どうやって倒すか」
上下移動が激しいため、狙うのは簡単ではない。しかも近づけば着地の衝撃波を受けるため、近づくのは簡単ではない。せめて真上に攻撃が出来れば良いのだが。世界の定理により、それは不可能となっている。
「なに、簡単なことだよ」
おもむろに、イーグリット隊員が口を開いた。同時にキラーンと眼鏡が光る。そして、どこに持っていたのか、いつの間にか手に持っていた「それ」を渡す。
「これを使えばいい」
「こ、これはっ!?」
それを見た瞬間。イヅキ隊員は思った。あの蚤型巨大生物には、間違いなく効果的な武器だと。
突然盛大な爆発が起こる。同時に空を舞う蚤型巨大生物。
そこから少し離れていた場所から見ていたイヅキ小隊の面々は、なんていうかあまりにもあっさりとした展開に拍子抜けしていた。
凄まじい勢いで上下に動き、着地の衝撃波で周囲を攻撃。着地した瞬間と言う隙はあるものの、近距離では転ばされ、体勢が立て直った頃には跳躍と、意外に隙のない攻撃パターン。
遠距離攻撃なら問題はなさそうだが、森林地帯であるためにそれは不可能に近い。そう言う意味では厄介な相手だった。
…が、しかし。とある兵器によってあっさり片がついてしまった。そして、その兵器が何かと言うと――――
地雷である。
とりあえず、探せばほかにもいそうだが、今回は偵察と言う事で、予定を切り上げてイヅキ小隊は撤収することとなった。
が、同時に―――今度の戦いは、前回よりもさらに大変なことになるかもしれない。そんな予感を感じずにはいられないイヅキ隊員であった…。
≪ENEMY UPDATE≫
タイプ:蚤型巨大生物
名称:未定(募集中)
攻撃方法:ジャンプ着地による衝撃波。
ダメージ量:少(昏倒効果あり)
対処方法:着地の際に生じる硬直を遠距離より狙う。
降下中への攻撃
着地点へのトラップ(地雷推奨)
☆予告
アマゾンでの作戦を終えて、日本に戻ってきたある日の事。
美味しいケーキ屋さんがあるとの噂に、エリス隊員とハルナ隊員の二人は休みを利用して出かけてみることに。が、そこへインベーダー出現を知らせる警報が響く。
迫る巨大生物とダロガの混成部隊。やがてケーキ屋にまで伸びる魔の手。
だが、しかし――――それを彼女が黙って見過ごすはずはなかった。
次回――作戦No.012【伝説のペイルウイング】
酸攻撃黒色甲殻虫「アシッドアント」&四足歩行型陸戦兵器「ダロガ」登場
□えむ’sコメント□
長らくおまたせしました。約束どおり今週頭に間に合わせました。
色々ネタを提供していただいた皆さん。本当にありがとうございますm(__)m
蚤型巨大生物の名称は募集しますので(思いつかなかった)、どうぞよろしく。
さて、次回は――――もう何も言わなくてもわかりそうだ(爆
もちろん、ちょっと一ひねりはしますがね。ふふふふw