―2025年6月13日 10:46―
―北極上空1000m地点―
人というのは非常にたくましい存在である。
どのくらいたくましいかと言うと、壊されても壊されても、そのたびに壊れた都市を短時間で復興されるくらいに。また、インベーダーに襲われて滅茶苦茶に被害を出されても、ちゃっかりインベーダーの技術を習得。そんでもって、それ見事に流用するくらいまでに。
むしろ、したたかさと言ってもいいかもしれない。
そして、そのたくましさは、第一次インベーダー大戦から第二次インベーダー大戦の間に発揮されたのは言うまでもなく、第二次インベーダー大戦以降も,物の見事に発揮されていた。
その証拠の一つが、今まさにこの場所。北極上空1000m地点に存在する、直径300mある円盤状の物体だった。
前大戦で落っこちたマザーシップの残骸を回収して組み立てて修理して完成した、地球製巨大円盤。そして、それこそが―――!!
EDF総司令本部なのである(ぇ
たくましいにもほどがある。もしかしたら、いずれにあの浮遊都市すら手中に収めるかもしれない。
ちなみに、新たにやってきたインベーダーにいきなり砲撃したり、ワープしようとして冥王星の傍で飛んでいったりとか、そういうことはなかったのであしからず。
あと、北極上空にあるのは、そこがインベーダーが一番近づかない場所と判断されたから。原因は、寒いとか、方位磁針がくるくる回るような場所だから、と言うことだが詳細は不明だ。
―同日 同時刻―
―北極上空1000m地点 EDF総司令本部―
―総司令官執務室―
「し、失礼します」
ガッチガッチに緊張して総司令官の執務室に入る。
「うむ、きたな。まぁ、そんな硬くならずに座るといい」
「は、はいっ」
言われたとおり、進められた椅子に座る。その正面には、EDFの高官がよく着ている制服に身を包んだパッと見年齢25歳。実年齢は不明の男が、緑茶の入った湯飲みを両手に、のほほ~んと座っている。
威厳とかほとんど感じないアットホームな雰囲気を持つこの人物。彼がEDFの現総司令官エム・ミリオンズである。
なんでも陸戦兵あがりで、しっちゃかめっちゃかで役立たずだった当時の上層部に対してクーデターを起こし、今のEDFの――かなりまともな――体制を作り上げた立役者の一人と言われている。一説によれば、そのクーデター。前大戦の英雄であるフェイ・ルーイングも参加していて、そりゃあすごかったらしい。閑話休題。
さて、執務室の中は、思った以上に質素だった。接待用のソファーとテーブルが一式。そして、執務机とパソコン。窓の外には北極の空が広がっている。
あと壁の一角にダロガたんのポスターがあったような気もしたが、敢えて見なかったことにする。
「……え、えっと。それで…?」
何はともあれ、呼び出された理由が気になるため、思わず聞いてしまうイヅキ隊員。
その問いに対し、総司令は静かに湯飲みを起き、ゆっくりと顔を上げて告げた。
「……君はクビだ」
「………えぇぇぇぇぇぇっ!?」
突然の一言に衝撃が走る。それを言うためにだけに呼ばれたのかよ!?と驚く中、エム総司令は続けて笑顔で告げる。
「冗談だけどな」
「……ぉぃ」
「大体、クビにするんなら基地司令で十分だろうw」
「………」
一瞬、殺意が芽生えた。けれどもなぜか勝てない気がしたので、我慢する。
「とりあえず本題に入ろう。実はインベーダー襲来にあわせて、少数精鋭による遊撃部隊をいくつか編成することになった」
総司令は静かに語り始めた。
前回と前々回の戦い。その戦いを左右したのは最終的には、一部の突出した戦力の存在だった。それならば、最初からそうした人材を発掘し、それによって構成した部隊をいくつか編成して対応させれば、EDFへの損害も減らせるのではないか。そういう話が前大戦後からあったらしい。
「えっと…それと俺にどういう関係が…?」
「つまりだな。その編成される遊撃部隊のどれか一つ。それの隊長になってほしいなと」
「はぃ?」
突拍子もない一言。新入り隊員から、特別な遊撃部隊隊長。例えるならば、アルバイトが次の日に部長クラスと言ったところである。
「な、何で俺…なんですか?」
まぁ、当然の疑問である。
「理由は色々あるが…。実は我がEDFにはあるジンクスがあってね…」
「ジンクス?」
「うむ。たった一人で初戦闘に遭遇して、その状況を切り抜けた者は、必ず戦争を終わらせるきっかけになると言うジンクスがな」
これも紛れもない事実である。あのフェイさんも、さらに前々大戦の英雄である彼(いまだ名前不明)も、初戦闘は一人で、それでいて乗り切ったのである。2度あった事は3度あるとも言う。まず確定事項である。
「で、報告書を見たら、好条件だったと。…もちろん、君だけでもないがな」
「………無理ですって、俺には」
「ふむ。でも拒否権はないんだよ」
そう告げる総司令は、なにやら不敵な笑みを浮かべていた。そして、おもむろに顔の前で両手を組み机に肘を起き、某人型決戦兵器を持ってる機関の司令官のごとく、静かに告げる。
「引き受けてくれたら、何回かやられそうになったあのことは水に流そうじゃないか」
「んなぁっ!?」
満面の笑顔でいきなりそんなことを告げる総司令。この時、イヅキ隊員には椅子の下から悪魔のしっぽが見えたような気がした。
「どうかな?悪い話じゃあないと思うけど」
「……う…(汗)」
「さらに言えばだ。もう一つ、断れない事情があるんだがね」
「………ぇ」
まだ何かあるのか。漠然とした恐怖と不安に包まれつつ、恐る恐る顔を上げるイヅキ隊員。
総司令官は静かに立ち上がると、イヅキ隊員のそばに近づき、耳元でささやく。
「ここで君が断ったら、この物語は中断。そうなれば、いつも見に来てくれる方々が怖いぞ?」
「………え?」
「試しにアンケートを取ってみた所、『絶対包囲に初期装備で放り込む、しかも移動禁止』とか、『INF蟲の怒りで火炎砲装備の読者さん+バゥの連合部隊と戦ってもらう』とか、そう言う意見があったよ(笑)」
「…(滝汗)」
試しに想像してみた。結果は言うまでもないだろう。秒殺だ。――――自分が。
ダラダラと脂汗を流して硬直するイヅキ隊員を尻目に、総司令はさらに笑顔で告げる。
「だが、一番多かったのは『禁断の秘術を使用して弾数制限を解除したリヴァイアサンやスカイタートル。もしくはジェノサイド砲、アルマゲドンクラスターを連射する』だったなぁ~」
ちょっと想像して見る。超高威力ながらもジリジリと迫る大量のミサイル。陸戦の自分では、かわすことはできない。まさに生き地獄→本当に地獄の二連コンボ。
「……(滝脂汗)」
さらに想像してみる。 ジェノサイド砲・アルマゲドンクラスターの無制限状態で連射される。・・・・・・たぶん骨も残らない。
「…さぁ、どうする?」
終始笑顔の総司令。この時、彼の背中でパタパタとはばたく黒い翼が見えたとか、どうとか…。
しかし、イヅキ隊員にもはや拒否権はなかった。というか、そこまで言われて拒否するほど無謀ではない。
「……や、やらせていただいきますっ!!」
目の幅涙を流しつつ、即答するイヅキ隊員。あんた鬼だぁーっ!!と心の中で叫びつつ。
こうして、彼は新たな戦いへと身を投じる事になったのであった。
「ところで、読者にアンケートまでとるあんたは何者なんだ(汗)」
「ふっ。ただの作者の分身総司令官だよ」
☆予告
総司令の陰謀(?)により遊撃部隊の隊長になったイヅキ隊員。
メンバーは全員は集まっていないものの、すでに編入される予定の一人が来ているとのことで、さっそく会いに行くことに。
そこにいたのは、軽い性格のどこにでもいる普通の陸戦兵だった。
そんな中、巨大生物が出現したとの報告に、すぐに出動するイヅキ隊員と一人目の仲間。
そして――その実戦で。イヅキ隊員は、彼が普通の陸戦兵とは違うことを身を持って思い知るのだった。
次回――作戦No.004【重装陸戦兵】
黒色甲殻虫ブラックアント、再び登場!!
□えむ’sコメント□
まずは、アンケートに参加してくださった方々。ありがとうございました。
おかげで、主人公を落とすことが出来ました(マテ
今後も時々、読者参加企画みたいなのを考えるかもしれないので、その時はぜひご協力くださいorz
ともかくこれで、下準備は完了。次からは、地球防衛軍並に、彼にはがんばってもらいます。