ドイツ資本主義・アメリカ型資本主義・日本型資本主義
人を富の創出に駆り立てる資本主義活動と道徳的価値観
ドイツ  倫理と共通目標
アメリカ 達成意欲、自己実現
日本   コミュニケーション、限定された(コミュニティーの中の)連帯
それぞれの国民性からその国に有利な生産形態を形成し(製品やサービスは生産者の心の中で作り出される)、世界市場に対しての競争優位を築いてきた。つまり内発的動機の選好、意思決定あるいは価値観こそ経済的な成功の源泉である。
(意思決定とは、自由な個人が限定的な情報の中で、自己の効用を最大限に得ようとして判断する行動である。)バーナードの研究による企業に必要なグループ内の人的必要能力の3次元、貢献意欲、共通目的、コミュニケーションのどの配分を強調するかによって社会制度が規定されていると考えることができる。
3つの資本主義制度がそれぞれ機能しているのは世界市場(超国家的市場)相互のネットワークによって世界全体の資本主義を規定しているシステムの基礎を構築しているからである。(3カ国のGDPを合わせれば世界の40%を占める、しかもこれらはそれぞれ経済の中枢を担っていることは誰が見ても明らかである。)

ここでは、生産における各国の特徴を気質という語であらわしたい。(ドーア2001)各国の文化的特長を無視しない形で生産の形態のみを表すために、あえて文化的特長という語は使わないことにする。また、制度学派の創始であるヴェブレンによる職人気質概念による生産性向上への内発的コミットメントが選好として考えられる。

Ⅲ 各国資本主義ステムの多様性・各国資本主義の新たな段階
現在進行している世界経済における多国籍企業の企業再編の動き、クロスボーダーM&Aの動向を記述し、国民国家経済からグローバル経済への移行過程の本質的な制度構築条件の変化とその制度上の課題を提示する。
 市場経済においては自利心(八木2001)、連帯・社会に奉仕する意識(ストリーク2001)の2種類がある。国民国家という共同体の枠組みにおいては必ずしも市場経済のみではなく、国民経済における制度的枠組みが関連する。
国民性(選好)が制度の違いに多分に組み込まれている
市場経済(マーケットメカニズム)においてはこのような制度は組み込むことは不可能である。(つまりゲーム理論のゼロサムゲーム的要素が強いのである。)
 
Ⅳ 国民国家主導経済と市場至上主義経済再考
ドイツ、日本型の資本主義は一国経済完結型の資本主義システムである。市場は規制され、資本市場も国策によって規定されている。国家の政策主導で成功した資本主義システムであり、グローバル・スタンダードへの転換を迫られている。

・アメリカ、イギリス、オランダは国際市場を視野に入れた資本主義システムである。言語は共通して英語を使用し 世界における規模の経済を実現するため市場の自由化を推進している。グロバール化を推進する主体である。(言語プラットフォーム)
ⅰ国民国家の制度的限界
組織に感情を持ち込むことを可能とすることが必要である。
1企業において生産性の上昇を組織の第一義としない組織
(例 サウスウェスト航空)
2NPO,NGOのような営利を目的としない組織
目的=連帯Ⅰと感情の表出Ⅱを組織化することが可能となる組織
(協同組合、協業組合、信用組合等の非営利組織から大学・病院、のような社会的組織まで含めて考察する。)
3文化政策組織
感情の受容、表出を可能とする「場」としての組織が必要

Since 1960 the Citizen Sector has been the Fastest Growing Sector in Germany*
Relative Growth in jobs (FTEs) in each sector, 1960 = 100
Blue = Citizen Sector (roughly quadruples)
Orange = Government (doubles)
Pale Orange = Business (2% decrease)
Source: McKinsey analysis of data from Johns Hopkins
Nonprofit Sector Series * Only Western Germany
http://www.ashoka.org/home/index.cfm

ⅱ NPO・NGOの必要性・・環境の変化が急速になり、不確実性が増している現代においては、政府の果たせる役割は限定的なものにならざる終えない。今後は意思決定が迅速に行える、専門知識を有したNGOを組織化することが必要である。このことは本論で述べる「
意識の均衡」を実現するための方策となりうるだろう。

非政府組織の役割
1国際的な役割(NGO)
・ 多国籍企業の監査、国際関係・組織の問題点の提示
・ グローバル化全体最適に伴う歪の解消
・ 貧困問題の解決

2ローカルな役割(NPO)
・ 地域の雇用の創出
・ 社会福祉の増進
・ 地域社会、文化の発展



参考文献
比較制度分析に向けて 青木昌彦 NTT出版 2001
脱グローバリズム宣言 R・ボワイエ他 藤原書店 2002
企業化活動と組織環境 高瀬武典 組織学会Vol36 2003 
経済と組織の社会学理論 富永健一 東京大学出版会 1997
資本主義システム間競争 今井健一 1992年 筑摩書房
制度経済学と市民社会論 八木紀一郎 2003
現代資本主義制度 コーリン・クラウチ他 2001年 NTT出版
構築主義的組織間のかなたに 山田真茂留 組織学会Vol36 2003
入門現代ドイツ経済 W.Rスマイサー 1992年 走尾正啓訳 日本経済新聞社
実際性の時代 J・Kガルブレイス 1991年 小学館
現代ドイツ経営学 海道ノブチカ 2001年 森山書店
七つの資本主義 ハムデン・ターナー他 1997年 日本経済新聞社
競争戦略論Ⅱ M・ポーター 1999年 竹内弘孝訳 ダイヤモンド社
20世紀ドイツ資本主義 工藤章 1999年 東京大学出版会 
ネクストソサイエティー P・Fドラッカー 2002 ダイヤモンド社