グローバリズム下における国民国家の変容
―その現代資本主義制度及びシステム的観点から -
The Change of the Nation-State under Globalization
-An Inquiry into the Contemporary Capital System
唯一の経済システムとなった資本主義において、世界的な相互依存関係が高まりを見せる中、国際金融システム等の諸制度が確立されることでより企業間競争が激しくなることが予想される。グローバリズムの潮流が止められないものであるとするならば、企業・国家とは別の形での社会的な組織ネットワークを発達させる必要がある。このことを比較制度分析の視角を用いて提示する。

 WTOやその他の国際機関によって各国の経済制度が国際的に展開されて、経済単位はその競争の激化から、スピード・意思決定の迅速さ(製品ライフサイクルの短絡化等に起因する)の必要からより小さな単位に分割されていかざるおえない。その結果、国民国家における資本主義の枠組み、及びその経済的役割は金融のグローバル化、企業のトランスナショナルな活動、及びマーケットメカニズムの展開よって希薄化する傾向にある。
しかし、このことは世界を単一の資本主義に収斂させることではなく、世界的な合意による「制度」と、その各国における多様性をローカリゼーションという形で残すものであると考える。なぜならグローバル化における世界は単一市場における需給の均衡は、その社会的・文化的背景と歴史的複雑性から不可能であるからである。
これらを提示するために、世界市場を市場メカニズムによって単一化したアメリカ、一国の資本主義経済システムモデルとして成功を遂げ完結した存在であるドイツ、及び、同様に戦後著しい独自の経済発展を遂げた日本を例に取り上げ、その現代における経済システムの変化および意識の変化を考察し、世界的に起こりつつある国民国家における経済システムの変化を提示する。それとともに、栄える国家はG8のような大きな国民国家からより小さい単位(例えばオランダ、シンガポールなど)に移行する傾向にある。さらに、大きな国家の中でも内々格差がおきてきており、これらの地域性が政策的に付加価値の高い産業への転換を可能にしているためである.

さらにこのような経済の世界的な全体最適化において競争が激化していくグローバル化への適応において、社会の適応面としての経済システムにおける生産性の上昇を第一義としない組織的展開が必要であるということを解決策の一つとして提示する。社会に必要な組織が必ずしも国家における統制を必要としなくとも地域の活動としてのNPOの様な存在が社会の維持に不可欠になっていることを示す。
研究の方法論の枠組み
 制度と組織のネットワークにおける国民国家のグローバルモデルの変容を2つの観点から複合的に検討する。