DATE: 02/21/2013 15:59:04

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『フォルトゥナータとハシンタ』 ベニート・ペレス・ガルドス

 

 19世紀のリアリズム時代の小説・・・のようには見えないタイトルだ、むしろ、まだイスラムが残ってる世界のようだ、「二人の妻の物語」なんて副題がついてるし。(邦訳で入れたのか?) この副題のゆえに、まえにここで書いたグライヒェン伯みたいな話かと思ったがだいぶ違った。

 裕福な家の道楽息子のフアニートが、貧民の美女フォルトゥナータ(以下、Fと略)と知り合って恋をして、飽きて別れる。彼の母が自分の姪であるきちんとしたお嬢さんハシンタとの縁組をまとめる。 Fにはその後、薬剤師をしている冴えない青年マクシが熱をあげて結婚を望む。Fは、彼にぜんぜん惹かれはしないけど、「ちゃんとした女」になりたくて、修道院での教育期間を経てから結婚する。ところが、ほかの男に取られたとなると惜しくなるというありがちな心理で、またフアニートが現れ、ふらふらとFは誘いにのってしまう。じきにまた捨てられたFは、太っ腹な老紳士がパトロンになってくれたが、彼は病気になり、自分の死後のことを慮り、マクシの家と話をつけてFが戻れるようにしてやる。ところがまたフアニートがでしゃばり、密会を重ねたあげくFは家出。こんなことしているうちにマクシの精神も異常をきたしてくる・・・。

 結局、Fはフアニートの息子を産んでじきに死亡、子供はハシンタがひきとり、フアニートの両親ともども可愛がる。

 フォルトゥナータは決してあくどい女ではない。怠惰でも浪費家でもないし、ことさらに身持ちが悪いというのでもない。確実に言えるのは、悪いのは結婚した身の女のところにのこのこと現れる図々しい男フアニートだということだ、あっさりとのってしまう女も女ではあるが。

 諸悪の根源であるフアニートがそれらしい懲罰を受けていないことが物足りない。Fは死ぬ前に、マクシに、フラニートを殺してくれたらあんたを愛してあげる、とそそのかしで銃を買う金を与えていて、マクシはそれで銃を本当に買うが、肝心のフォルトゥナータがさっさと死んでしまうので実行されない。いっそ殺されてしまってもよかったのにと思うが、忍耐強い妻ハシンタがついに夫に愛想をつかしてもはや無感動の域に達していることがせめてもの報いなのだろう。いずれは、実の息子にも白眼視されるがいいや!

 同じ著者で邦訳の出ている作品に『トラファルガル』がある、青池作品でも描かれたあの海戦だろうか。