リライト記事(初出20160912)


あれは…

高2の初夏から一年間ほどだったでしょうか。


僕が通う高校は定時制だったので

学校が始まるのが17:30頃からでした。 

日中、時間を持て余していた僕は

父の勧めで

父の当時の勤務先系列の

川口市峯にある
冷凍食品倉庫で働きはじめました。
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倉庫の社員規模は6人程。


お昼休憩になると

倉庫の隣にある
プレハブの事務所に移動して

デスクを使い

みんなで昼食をとっていました。


そこを取り仕切る上司

H谷川さん。


周富徳に似ていて笑

優しく頼りになる上司でした。


そのH谷川さんのデスクに、

お昼を少し過ぎると

必ず電話がかかってくるんです。

最初は

仕事上の電話かな

と思っていたのですが、

通話時間は

ほんの数秒で


H谷川さんは

「…ああ、いるよ」
 
「はい、大丈夫」


といった

会話とも言えない位の返事をして

電話を数秒で切るんです。


他の社員の人は
僕よりずっと前から働いているから

当たり前の風景の様に
電話のやりとりを誰も気にしていません。


その電話は

本当に

毎日、毎日…

決まったお昼過ぎの時間にかかってきて

H谷川さんは、

同じ様な通話やりとりを繰り返すんです。。


見慣れた風景にはなりますが

まあ…

ちょっと

気になりますよね?



僕の母は

部署は違いますが
父の会社にパートで以前勤めていた為

H谷川さんを知っていました。


ある日、

僕は例の電話について

母に尋ねました。



母は少し躊躇ったのちに。。。




あれね…

 

H谷川さんは昔

会社に行くと嘘を言って

浮気をしていたから

それが奥さんにバレて

それから毎日奥さんは

H谷川さんが会社に居るか
 
確認の電話をしてくるんだって


なんと。。。


自業自得とはいえ

何年間も

毎日…毎日…


怖くないですか?笑


奥さんからすると

嫌がらせの意味も
含まれているのかな。。


その話を聞いてから

お昼の電話を

強張った顔で取るH谷川さんを、

哀れみを含んだ目で見てしまいました。


僕が働き始めてから一年程で

倉庫で請け負う業務が終了する為

みんなは散り散りになりました…


その後

同じ倉庫で別の業務が始まり、

元いたメンバーは何人か集まり

再起動した話を

父から聞きました。



さらに時は流れ。。



数年前

父に

H谷川さんが
まだ倉庫に在籍している話を聞いたので

現在も

働いているのかもしれません。


今でもお昼時

事務所に


電話が鳴り続けているんでしょうか……