「ワーキングホリデー」

 基本的にEU、北米、オセアニアは、学生ビザを除けば労働許可証のない外国人に年単位の滞在を認めません。ところが一つだけ例外があります。それがワーキングホリデー(USAを除く)です。これは各国の文化交流を図るために、30才までの若者はビザがなくてもホスト国に最長で三年滞在でき、かつ労働許可証がなくても就業できるという制度です。

 

 たしかに、とにかく日本を飛び出したい若者にとっては魅力的な制度です。ただし、問題点がいくつかあります。一つ目は、実際には現地語が不自由な日本人をわざわざ雇う現地企業はないので、制度はあっても仕事がないということです。日本人が経営する飲食店で働けたらかなり運が良い方でしょう。

 

二つ目は、ホリデー期間が終了したら国外退去です。長期ビザもその前提となる労働許可証もないからです。非常に稀なケースですが、ホリデー期間中に日本企業の現地法人にアルバイトで拾われ、気に入られた結果、労働許可証を取ってもらえるということもあります。しかし、それでは、海外に出て日本のお世話になっているにすぎません。

 

三つ目は、31才になったらホリデーの適用外になるため、どの国にも観光以外で留まることはできません。最終的には日本に帰らざるを得ないのです。よって、ワーキングホリデーは若い時期の冒険心や好奇心を満たし、見識を広げるにはとても良い制度なのですが、海外移住の足掛かりだと見なすのは現実的ではないでしょう。

 

「長期滞在ビザ」

 労働許可証を所持していたり、ホスト国人と結婚すると5年程度の長期滞在ビザがもらえます。ここで話がややこしいのは、長期滞在ビザをもらうための前提条件が労働許可証だということです。つまり、卵が先か鶏が先か。そこで、移民の人たちがよく使う手段として、

学生ビザで入国し、現地人と結婚して長期滞在ビザを取得、それを元に労働許可証をもらって合法的に就職するというやり方があります。

 

果たして、日本人がそこまでするのか分かりませんが。いずれにしても、あくまでも長期滞在ビザなので、数年に一度必ず適格審査が回ってきます。その時に以前と条件が変わっていれば、ビザが延長されない可能性があります。たとえば、離婚したとか失業したなど。よって、長期滞在ビザも恒久的な海外移住を可能とするステイタスではないのです。

 

「永住権」

 かつては、十年以上EU域内に居住して納税の実績があると外国人にも永住権が与えられました。つまり、準国民として扱われたのです。しかしながら、近年法律が変更され、外国出身者が永住権を取得することはできなくなりました。代わりに超長期の滞在ビザが与えられるのですが、これも更新時に適格審査があるため、永住を保証するものではありません。

 

「市民権」

 外国出身者には永住権ですら与えられないのですから、ホスト国の国民になって永住するというのは不可能です。