最近の円安と日本衰退論に影響を受けて、日本を脱出して海外に移住した方がいいのではないか、という論調がメディア上に広まっています。実際にどれだけの日本人が職を求めて海外に渡っているのか定かでありませんが、本稿ではその可能性について取り上げてみたいと思います。

 

【在留資格について】

日本人が移住先として考えるのは、EUか北米、もしくはオセアニアでしょう。経済的な理由による逃避先としてアフリカ、アジア、中南米は考えにくいので、ここでは扱わないことにします。

 

上記、三地域に長期滞在するには以下の4つのステイタスが考えられます。

(1)  ワーキングホリデー

(2)  長期滞在ビザ(数年程度)

(3)  永住権

(4)  市民権

 

「外国で働くとは?」

外国で働くにはホスト国政府の労働許可証が必要です。例外はありません。ところが、時々有名サッカー選手でさえも欧州に移籍する際に問題が起こるように、労働許可証は簡単に発行してもらえないのです。それはホスト国の国民の雇用が優先されるからです。たとえばEUでは、エリート研究者、国際コンクール入賞レベルの音楽家、有名サッカー選手のように、EU市民では代替できないような高度な知識やスキルを持った外国人にしか労働許可証は発行されません。これは、一般の日本人にはクリアできない高いハードルです。

 

日本人で労働許可証を持っているのは、ほぼすべて日本企業に現地採用されている人たちです。この場合、給与は日本企業から出るのでホスト国の懐は痛まない。だから労働許可証がもらえるのです。ホスト国の企業がEU市民を差し置いてあえて日本人を雇うために許可証の申請をすることはまずあり得ず、万が一申請しても行政レベルで却下されます。

 

労働許可証がなくても、短時間のアルバイトなら可能です。今の数字は分かりませんが、私が在仏していた三十年前は、週15時間までは許されていました。ただし、それだけでは生計は立てられないし、そんな短時間しか働けないと雇用者には使い勝手が悪いため、実際にアルバイトの口が見つかった人は周りにはいませんでした。

 

なぜ、労働許可証が真っ先に出てくるのか?それは、外国に移住するためには労働許可証が絶対に必要だからです。