ちょいと前に見つけた

美味しい美味しいラーメン屋さん

6月くらいにやっと顔を覚えてもらって

新メニューが出ると

店主が

「今度食べてみて下さいよ」

なんて言われて常連気分で
味の感想言ったりして

ついつい足を運んでいたけれど

大阪に長く行く前に

今日は食べておこうってウキウキしながら
店のドアを開けたら

いつもの店主が
いつものように
「いらっしゃい」って日に焼けて歯だけ真っ白な笑顔を見せて迎えてくれた

いつものラーメンを頼んで

「今日の辛さどうする?」
と聞かれ
「今日は普通よりちょい辛で」
いつもの会話をしていたら

「今日来てくれて良かったよ」

いつものでない話

「なんでですか?」

「お店、今月いっぱいでたたむんだ」


ガーンえ!?


お客様でいつも賑わっていた店内
たまに入れない日だってあった

それでも閉店なの?

慌てて店主に聞く

「な、な、な、なんでですか!」

「僕ね病気見つかっちゃって治療することになったんですよ」

「え!」

言葉を失ってしまった

一人だけで店をきりもりして
仕込み
接客
調理
こじんまりした店内といえど
何年も続けていくのは
それは大変な事だっただろう

そんな事はおくびにも出さず
常に美味しいラーメンを提供してくださっていた店主

体を患ってしまったなんて

お大事になさってください
とか
体を休めなさいってことなんですね
とか
いろいろかける言葉はあったのかもしれないけれど

なにも…
全くなにも言葉は出てこなかった

ただ出されたこの最後の一杯のラーメンを味わって食べた



なんだか涙が出た

ここの店主が
ここの味が
大好きだった

店を出るとき
深々とお辞儀をして
「待ってます」って小さな声で

店主は
「うん。またね、ありがとう」


絶対元気になってる

空き店舗を見るたびにそう思うんだ