電車の中

どうしても座席に座りたかった。

幸い一人分あいていた

しかしその席は

30代の細身の女性が激しく船を漕いでいる隣でした

ぐらんぐらんぐわんぐわん

空いている席に

メトロノームのように

規則正しく侵食してくる

けれど
どうしても座席に座りたかった

私は

大縄飛びの要領で

抜群のタイミングでもって彼女が垂直になった瞬間

空いたスペースに滑り込む

成功だ。

しかし

思ってたとおり

私が座ったからといって目覚める訳はなく


彼女の頭が私の肩に触れたとたん

まるで最高の抱き枕でもゲットしたかのように

体ごと私に委ねて

安心して爆睡しはじめた

わかってたのに

わかってたのに

わかってたのに……