ママには太郎くん(仮名)という3才の息子がいる

ママの家で餃子パーティーをしようということになって

近くのスーパーに太郎くん(仮名)と三人でお買い物

太郎くん(仮名)にはそのスーパーに来ると必ず欲しいものがあった

お顔が描いてある丸いパン

だけどその日は残念ながらお顔パンは売り切れ

太郎くん(仮名)は手に入らなかった事が悲しくて悲しくて泣いてしまいます

「今日は売りきれてしまっていたのだから仕方ないでしょう」


ママの言葉も耳に入りません


だって太郎(仮名)君はお顔パンが欲しかったのですから


まるでこの世の終わりのように全身で悲しみを表現する太郎(仮名)君


私はどうしていいかわからず


ただ大きい声で


トトロの「歩こう~歩こう~私は元気ー」と笑顔で誘い歌いしてみましたが


ガン無視され続けました


ママはずっと太郎(仮名)君と向き合い

言葉で伝えます


まだ3歳だけれど3歳の彼が納得するまで話し合うのです



私だったらきっと


「仕方ないやろ!」って一喝して終わるだろうな


ママの姿に感心しきりでしたが




今日の太郎(仮名)君は一筋縄ではいきません


どんなに、お顔パンがなかったんだとわかっていても


悲しみはさざ波のように押し寄せてくるのです



ママは言います



「じゃあ、ジャムおじさんに聞いてみよう。ママジャムおじさんの電話番号知ってるから、電話して、お顔パン作ってくださいってお願いしてみよう。それでいい?」


大粒の涙を流しながら太郎(仮名)君はうなずきました


お家について



ママはジャムおじさんに電話しましたが


「ジャムおじさん、電話に出なかったからメール送っておいたよ、もし電話が鳴ったらママに教えてね」


そう太郎(仮名)君に言って



餃子を作りに台所に行ってしまいました



私はしょんぼりしている太郎(仮名)君と二人きりで黙っていました


どういう言葉をかけていいもんやらただ太郎(仮名)君を見つめていました


太郎(仮名)君もなぜか、涙目でずっと私を見つめていました



心の中で(これはどういう時間やねん)と思いながら



テレビもついてない


ママのお料理するゆったりした音だけが響いて


ただただ沈黙。


するとママの声



「あ!ジャムおじさんからメールのお返事来たよ!!お顔パンポストに入れておきましただって!玄関のポスト行ってごらん、入ってるかもしれないよ!!」



太郎(仮名)君は


え?というような風情で玄関のポストに向かい開けてみると



お顔パン入っていました!!!!



なぬ!!!



いつの間に!全く気付かなかった!



太郎(仮名)君は今度は全身で喜びを表現しています



お部屋を走り回って



「お顔パンだーーーーーー!」を連呼して


食べるのも忘れて



ママにお顔パンが入っていたよと見せに行き



はしゃぎっぱなし



その姿を見て枝ちゃん泣きました



なんかすごく感動した!



お家についたらママは太郎(仮名)君の為に


丸いパンにココアでお顔を描いて

いつものお顔パンはクリームが挟んでいるらしく即席でプリンをクリームみたいにぬったみたいです


それをジャムおじさんが届けてくれたよとポストに入れる


なんともドラマチックに太郎(仮名)君に渡すんだもの



ママの力ってすごい



ちょっとした演出で毎日がとっても素敵な出来事が起こるんだなと思いました



あんなにも泣きじゃくっていた太郎(仮名)君が今は羽が生えたように飛び回っています


そして、ちゃんといただきますと合掌し


おいしそうにパンを頬張ります


本当に幸せそう



「よかったねージャムおじさんにありがとうって言わなきゃね」


って言った返事が



「今度は二つ作ってくださいって言っておいてね」


だって



おい(笑)



しっかりした3歳児だぜ



素敵なひと時に居合わせたなと



そう



思った所存にございますよ