電車にて


隣の男女はどうやら仕事仲間のよう


男性はスーツ、女性はブラウスにフレアスカート


男性が先輩で女性は後輩


男性は女性に好意を寄せている


今日は飲みに行った帰りの電車のようだ


少し酔ったそぶりを見せる男性

つり革にすこしぶらさがりながら女性に


男 「又絶対飲みに行こうね」

女 「はい」

男 「絶対だよ」

女 「はい」


と、笑顔で受け答える彼女、


男 「二人で…」

女 「…いいですよ」

男 「本当に?」


そう言って男性はつり革を使った遠心力をフルにいかし

勢いで彼女の顔をのぞきこむ


女性は無言で笑顔を作ってみせる


男 「ベルギー行こうよ」

女 「べルギー?」

男 「うん」

女 「いいですね」

男 「ベルギーの店だよ」

女 「あ、びっくりしました、海外のベルギーかと…」

男 「それでもいいけど。」




そんな二人の世界の会話がにゃんにゃん繰り広げられ

両思いなのかな?なんて思ったりしてたけど


ちょっと女性は先輩に合わせてる感も見え隠れ


そのうち、人間関係の話になって


女 「私人の事めったに嫌いになれないんです」

男 「へえーうんうんいいね」

女 「だから私が嫌いだと思う人ってそうとう最悪な人ですよ」

男 「ふんー」


そこから彼女のこの人は駄目、あの人は良くない話がはじまった


それ、めっちゃ人嫌ってるってことでないんだろうか?


心の中で私は思う

『おい、もうそのへんでやめとけよ…』


彼女に好意を寄せていればなんとなく彼女が発する言動に対して

そうかーと聞くだろう男性は



男 「そんなことないと思うんだけどな…00さんはきついところあるけど、ちゃんと思って言ってくれてるし、**さんはそんなつもりで言ったんじゃないと思うよ。」


全部いない人のフォローしてる!!


この人しっかりしたええ人やんかいさ~


なんて思っていると


女性は黙った


不機嫌になった


そのタイミングで男性が先に駅に到着したようで、降り際


男 「まあ…俺もその状況にいなかったからわかんねぇし」

女 「もう、その話いいです」

男 「…じゃあね、お疲れ様」

女 「…お疲れ様です」


そういって男性は降りていく


出て行ったかに思えた男性は走って戻ってきた

彼女の頭をポンポンと軽くたたき


男 「明日もがんばろうね。おやすみ」


そう言って、扉が閉まる寸前でスルリと電車を降りて行った


彼女は窓越しに男性にバイバイと手をふる



ええ男やないの!

付き合っちゃえば?!


なんてふつふつと沸き起こる老婆心


しかし、恋とは傍から見ていい雰囲気だからと直ラブに発展するとはかぎらず…


女のエゴと男のうつわを見た気がした