枝松直紀オフィシャルブログ Powered by Ameba -215ページ目

くちべに

いま現在僕のライブをサポートしてくれてる、
ドラムのヌマ君、がサポートしているバンドのライブを観に、
代々木のSTEPWAYスタジオへ行く。


ここはスタジオなんだけど、ライブスペースもあるという、
みたこともない感じのスポットである。


入ってみる。


天井の低い、
古いスタジオだ。


昔、高校の時に通っていたスタジオの感じ。

わかる人にはわかるが、スタジオは独特の匂いがある。

ここもそうだ。


ってかどこでライブするんだ?
一見スタジオしかないんだが?



地べたに置かれたソファーでは
5,6人のヴァンドメンたちが、ヤニにまみれて
ダベリを展開している。


10秒ほど立ち往生し、
入り口にもどって、聞く


「どこでライブやんすか?」

「奥の奥です。」


なるほど、奥には扉があり、
それをくぐると20畳ほどのスペースと
ステージが有った。


室内は薄暗い、天井の低い洞窟のような感じで、
20代半ばの男女が絨毯に座り込み
ひしめいている。


うわー いい感じ。


今にも、カリスマが出てきて、
アングラな世直し論でも語りだしそうな雰囲気。


お香の匂いがする。
その匂いが、なんとも別世界に、
トリップさせる原因となって、僕に酒を勧める。


「飲食は持ち込み制です。」

と前々から聞いていたんだが、
勝手がわからんから持ち込んでなかったが、
みんな本当にビールなどを持ち込んでる。


開演まで5分ある。


なんか買いにいこう。


受付に戻ると、前を歩いていた女性が受付に話してる。


「飲み物を買ってきてもいいですか?」


それに便乗して

「僕も同じです」

と受付にいう。


。。。
コンビニはどこだ?


と、先ほどの女性が、
受付に、

「コンビニはどこですか?」
と聞く。


駅まで行かないとないらしい。


駅か。。遠いな。


そして女性は駅へと向かった。

俺は、横の自販機で、コーラを買って、
中へ戻った。



さぁ始まる。

出てきた。


フロントまんの顔は一切見えない。


顔を照らすライトがないのだ。


演奏は1時間ちょい。
ワンマンライブなのだ。



30曲くらいやったんじゃね?!
と思うくらい弾丸で演奏している。


終わった頃には会場はじっとりと、
汗をかいている。


「別に、見ても見なくてもいいよ」

というようなフリーダムな空気が俺には感じ取れた。
それがなんとも心地よく、
気兼ねく見れた。

とても、いい娯楽だ。



ライブが終わると、すぐにスタジオを出た。
この、いい感じの気持ちをなんか独り占めしたいと思ったから、
すぐに一人で帰る。


新宿で、有る人物を見かける。

芸能人ではないが、それなりの活動をしている人だ。


目が合う。



三秒くらい。



しかし向こうは俺のことは知らないだろう。
でも、何かひっかかる点があるのかもしれない。
だから三秒。


二秒までは他人。


三秒ともなれば、頭の横に 『?』が見えている状態。


4秒は知り合いだ。


その人はおめかししているように見えた。
口紅を塗っていた。




-----------------



東京にはたくさんの人がいる。

芸能人もいればどん底人生の人もいる。

普通の暮らしを勝ち取った人や、

夢見る若者。

洞窟にライブを見に行く男女や、

それを日記に記すもの。


表向きは青春ロック少女も、
休みの日は、紅を注し、新宿で誰かを待っている。





巨大な渦の中心にいま僕はいた。
でもその子を見たとき、
渦の真ん中がその子に移動した。


そして僕はなんだか、
すごい勢いで渦に飲まれていくような、
刹那的な恐怖に見舞われて、



ぞくぞくした




そんな土曜日



/mame