それまで韓国で納豆は、なかなか手に入りづらいものでした。

大きなスーパーで冷凍食品として売っているとか、ネットのショッピングモールで販売しているとか聞いてはいたけれど、わたしにはアクセスしにくいものでした。

こちらに引っ越してきてからもそれは同様でした。



が、ある日、うちの近所のスーパーに冷凍納豆が入荷されました。日本旅行が済州島旅行よりも人気になった頃でした。日本酒のパックもいくつか入庫してました。

納豆の血液さらさら効果が宣伝されて、健康食品好きの韓国人の間で評判を聞いた人の層ができた頃でした。

これはね。買ってあげなくちゃです。スーパーが商品のラインナップに納豆を加えて見た。ならば消費者の反応を見るわけです。

高かったですね。3個パックで3900ウォン、400円ほどする。納豆としては割高ですが、それはしょうがない。市場が小さいんだから。

お味はまあまあ...というか、備え付けの醤油と辛子をいれてあえても不味いのです。

が、幸いわたしは日本人。お好みで醤油や薬味を追加して調味すればいいではないですか。

そうして食べてみると、納豆自体はけっこう美味しいんです。納豆と付属のタレとのバランスが悪いだけなんです。

試食に試食を繰り返して商品開発しないの? 

それともこの味が韓国人の好みなの?



同時期に、別のメーカーの納豆も置かれ始めたんですが、こちらは冷蔵つまり店頭に置ける賞味期限が短い。なのに新鮮なうちに食べたい納豆としては賞味期限が長い。回転せず廃棄が多ければ当然価格設定が高い。そしてさらに不味い。

不味さのレベルがやはり外国です。

それともこの味が韓国人の好みなの?

例えば日本だったらお気に入り以外のどのメーカーの納豆を食べても、優劣つけがたい美味しさではないですか。大粒の豆でも美味しく、小粒の豆でも美味しく、ひきわり納豆でも美味しく。国産の豆はちょっとお高くても美味しく、柔らかくても美味しく、粘りが強くても美味しい。

けれども外国で売られている納豆は、不味さのレベルが違いますね。しかも張り切って健康プレミアム感なんか出して来るから、まともな納豆もできてないのに黒豆納豆なんか出して来る。黒くて固くて若干粘ってる豆、不味いですよ。笑

しかも回転が悪いから、3つ並べても2つが賞味期限まで置いてあるような状態。当然もっと不味い。廃棄が出るならビジネスとしては良くなさそう。

ならば長期保存、品質保持の冷凍の方が優秀ではないですか。

そして冷凍納豆は我が家の冷凍庫の常備食となりました。




ある時、冷凍納豆がセールに入りました。3900ウォンだったものを2900ウォンで売ってるのです。

これはチャンス。買いましたね。

別のスーパーで働いているわたしの「ひょんにむ」の裏情報によりますと、セールをすることや割引価格設定を、スーパーの社長と専務とでいつも喧嘩腰で協議し悩んでいるそうです。

納豆のセールは、メーカーの方での価格設定なのかスーパー側での割引設定なのかは分かりませんが、これは「試験的」に違いありません。この価格での販売状況を見ているのだな。

ですので、ここぞと買いました。冷凍庫に残っていてもまた買いました。冷凍ですから、セールする度にここぞとまとめ買いしました。

それが良かったのでしょうか、その後は赤い文字のセール価格ではなく、黒い文字の定価で2900ウォンになりました。

何とはなしの、達成感....。

メーカー側の設定だったかな? だったらわたし一人が買った効果ではなく、韓国人の消費者の反応が良かったのかな?

心なしかお味もアップグレードしているのは、わたしの舌が劣化したのか納豆が美味しくなったのか。日本の納豆菌で研究したのか。



ところでこれでも安心はできません。納豆は危機を内包しています。

ある日この納豆を買ってレジに持って行ったら、レジのおばちゃんが聞いて来ました。

これ美味しい? 体にいいっていうから買って食べてみたけど、不味くて捨てたわ。




そうなんです!その納豆は、付属の醤油ダレと辛子だけでは不味いんです。

納豆がアップグレードしてもなお不味いのは、やっぱりタレが合ってないから。

それは韓国人にとっても不味かったらしい。

ならば、

外国人にウケの悪い納豆+不味いタレ=劇マズ!

「セールしてた。体にいいって言うし、お手軽価格だから買ってみた。

食べてみたけど不味くて捨てた。」

これをスーパーのレジさんまでがクチコミで逆宣伝している。

興味本意で買った顧客をリピーターにできない!

それどころか悪評が広まってる!


これ.........、ヤンニョムを美味しく作って混ぜて食べると美味しいんですよ。

生の葉野菜を刻んで混ぜたり....ペッキムチ(真っ赤にしないナチュラルな白菜漬)を刻んで混ぜたり...


ささやかな文化大使です。

納豆が低評価されるのは悲しい。

ヤンニョムとは合わせ醤油や合わせ味噌のこと。つまりわたし的には「刻みネギを入れて醤油を調節してね」の意味。韓国的だとニンニクやゴマや胡麻油や唐辛子粉も入ってしまいますが、

彼らが美味しければオーケー!

韓国人の口に合ってこその韓国納豆ビジネス。

(わたしの口にいちばん合ってほしいですが)

レジのおばちゃん、試してみてくれたかな?

レジのおばちゃんこそ、インフルエンサーになってもらわなければならないのだ。



その後、NO JAPAN不買運動の時はユニクロやアサヒビールが手に入らなくなるのを心配するのと同様に、わたしはこの納豆のことを心配していました。日本酒のことも心配していました。


日本酒は、やっぱり置いててくれるとありがたいです。美味しく懐かしい味がします。韓国にも清酒はあるけれど、味が違います。盆正月と先祖の祭司にしか使わないイメージ。一般的には焼酎。

日本酒は、3パック入荷したうちわたしが2つ買いました。日本からの輸入品。NO JAPANで回転していないのがわかります。賞味期限前にわたしがもう1パックを買ってしまったらたぶん次の入荷はないでしょう。


でも例の納豆は幸い、韓国の国内企業が韓国の国産大豆を商品名にしていたからか、まだ回転しています。

でもいつも常にちょっと心配。



先日は例の冷凍納豆(3パック入り)が4つ残っていました。

もしやこれが最後の納豆かも、と思って買い占めました。

そしたら、今日行ったらまた10こ入荷されていて安心しました。

2つ買ってきました。

息子いわく、

うちだけが買ってるんじゃないの?

うん、そうかもしれない。

最盛期よりも入荷数は少ないです。入庫が10パックなら、最低ラインでしょう。

我が家の消費量のみ、かもしれません。

売り上げにならなければ、その商品は別の商品に置き換わるはず。



今日も納豆のありがたみを噛み締めながら、

美味しくいただいております。