高校時代の話です。
高校のそばに、ちょっと気になる自動販売機がありました。
気がついたのは、通学しだしてからすぐです。
普通の飲み物の販売機に、紙が貼ってあります。
その紙に「オシリがでます」と書いてあったんです。
すぐに気がつきました。
オシリの「シ」はきっと「ツ」なんです。
字の日本のちょんちょんは、横に並べればツ、縦に並べればシ。
これを書いた人は癖で「ツ」と書くところが「シ」に読めてしまっているんです。
「お釣りがでます」と書きたいところが、誰がでみても「お尻がでます」
と読めるんですね。
この紙はずぅーーっと貼ったままでした。
誰か気がついて貼り直さないんでしょうか。
2年生の時には、次第にぼろぼろになってきました。
3年生になっても、かなり朽ち果ててきてはいますがまだ貼ってあります。
目の隅に入るその貼り紙は、気になるというほどではないんですが、
「あ、まだあるな」と何気に時々チェックする感じでした。
卒業が迫ってきました。
その通学路も、あとわずかで通ることがなくなるという時、
急にその販売機が気になってきました。
そりゃ、きっと「お釣り」と書いてあるに決まってます。
でも、でも、もし違っていたら?
3年間もそのままだし・・・。
なんだかちょっと怪しげな存在感のある販売機ではあります。
「・・・やってみることだ」
もし、このまま確かめもせず、卒業してしまったら、心残りを残すことになる。
この販売機が「お釣り」がでるのか「お尻」がでるのか永遠にわからないままです。
もしかすると、何か変なものがでてくるかもしれない・・・。
やるだけやってみることです。
そうです。ただ缶コーラひとつを買ってみるだけのことなんです。
その販売機の前に立ち、決意も新たに500円玉を握り締めなおしました。
硬貨を入れる。
チャリンと乾いた音がして、販売機の中を降りていくのがわかります。
「よし、押すぞ」
コーラのボタンに指をかけ、深呼吸をして「えい」と強くボタンを押しました。
「ガコン」とでる缶コーラ。
そして・・・・。
・・・でてきたのは、普通にお釣りでした。
ほのかに甘酸っぱい青春の思い出でした。
