細雪 (上) (新潮文庫)/新潮社

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いつも読んでくださる方、ありがとうございます。
今回、ものすごく長々語ってますのでお時間のある方のみお読みください。


谷崎潤一郎と聞いて「変態」を思い浮かべる方。

あながち間違いじゃありません。
(フォローなしか)

でも、この細雪。
変態とは一線を画しています。
文豪谷崎が約6年の歳月をかけて書き上げた、4人姉妹をめぐるドラマです。

上中下巻という大ボリュームに最初はたじろぎました。

でも。
途中からページをめくる手が止まらなくなり、
最終的に「持ち運ぶのが重いから」という理由で
初めてkindleを使って購入しました。
(めっちゃ役にたちました)

読後は「ほう…」と溜息をつきました。

何がこんなにおもしろいと思わせたのか。

まず、四姉妹の話す船場言葉。


* * *

「中姉(なかあん)ちゃん、起きてるのん?…」

(略)

「ふん、…あたし、ちょっとも寝られへんねんわ」

「うちかて寝られへんねん」

「こいさん、さっきから起きてたのん?」

「ふん、…うち、場所が変わると寝られへん」

「雪子ちゃんはよう寝てるわな。鼾掻いてるわ」

「雪姉ちゃんの鼾、猫の鼾みたいやわ」

「呑気やわ、明日見合いや云うのんに。…」

* * *

これは次女の幸子(中姉ちゃん)と末っ子の妙子(こいさん)のセリフです。

この「ふん、…」っていう相槌の打ち方が
妙にecotaのツボを刺激するってのは完全に個人の趣味ですが、

ささやかでくだらない、
でも愛情のこもったたおやかな姉妹たちの会話が、
作中を通して船場言葉(大阪の商家の言葉)で綴られています。

忘れそうになりますがこの会話を書いたのは中年男性です。

しかも東京出身のです。関西ネイティブではないのです。
ecotaは大層な書評を書くつもりはないので、あえて言います。
うわ、まじすげえ。


そして、そこかしこに散りばめられた当時の風流、文化。

それは本当に華やかで、今聞いていても
お金持ちの文化だな、とわかります。


でも、両親亡き今、自分たちは没落していく一方なわけです。
それでも、家を愛し、姉妹を愛し、生まれ育った文化を愛して生きる。


作中に細雪は出てきませんが、
この華やかで、でも儚く、いつかは消え去るものたちを表すのに
細雪はふさわしいと思います。


英語版だとMakioka Sistersになるのにびっくりしましたが。
チャーリーズ・エンジェルみたいだな、なんか。


昨今、「日本ってすごい!」「日本って美しい!」「こんなところが!」と
あからさまに言い募る小説やTVであふれていて、
ecotaはそういうのは正直あまり好みません。

でも、この小説を読むと、
ふっと

「あ、日本って綺麗だな」

と思ったのです。
谷崎は淡々と、四姉妹の日常を書いただけなのに。
嫌なところとも旧弊もありのままに書いているのに。
ひとことも、「これが日本の美しさなのである。」なんて書いていないのに。


春の桜や、
舞の前におちょぼ口で食べるお寿司や、
通く離れた姉にしたためる手紙や、
着物の帯についての他愛ない会話や、
そういうのが。


うまくまとめられませんでしたが、
この小説はecotaにとって名作です。

そして影響受けまくったecotaは
日本舞踊習うなんてどうかしらみたいな気分になってます。
(あかん絶対無理)