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今シリーズで、逆転勝ちが決まったのは第1戦だけ。ロースコアの展開が続く中で、先制点の重要度は増していた。三回にソフトバンクがつかんだ最初の好機。無死満塁で打席に立った川崎は、徹底して外角を攻める中日バッテリーの誘いに乗ることなく、きわどいボールを見極めて押し出しの四球を選んだ。「ヒーローになる」と宣言して臨んだ試合でも、決して平常心を忘れず有言実行の打席。多村、長谷川が作った好機を無駄にすることはなかった。

 四回には、貴重な中押し点を奪った。2死二塁で、中日バッテリーは長谷川を敬遠。その思いを打ち砕くように、山崎は「狙い通り。ドンピシャ」と外角直球を右前に運んだ。中日に敗れた3戦は、すべて1点しか取れなかった試合。脇役の一打が重かった。

 主役となるべきクリーンアップも黙っていなかった。七回2死二塁で、内川が、中日が誇るセットアッパーの浅尾が投じた直球を中前にはじき返した。「中継ぎとして最高の投手をこの場面で打ててうれしい」。相手を意気消沈させる適時打の重要さを、二塁ベース上で何度も両手でガッツポーズした背番号24が、一番わかっていた。

 12球団トップのシーズン打率・267だった打線が、執念でもぎ取った3点。先制、中押し、ダメ押しと効果的に重ねた得点は、シリーズ全戦で2点以内に抑えてきた投手陣には十分な援護だった。MVPは、第4戦と第5戦で先制打を放った小久保。くしくも秋山監督が現役時代、37歳だった1999年に作ったシリーズ最年長MVPを更新した。「監督すいません」とおどけた40歳のベテランは「みんなの力。代表して僕がいただくだけ」と力強くいった。選手全員が、8年ぶりの日本一の立役者だった。