2019年の太西つねき氏の講演会動画がありました。
一度、地元で講演会があった時に参加しましたが、その時はこちらも知識が乏しく、彼の講演内容に違和感はなかったのですが・・・・2年間を経て彼の主張に賛同できる部分もありますが、明らかに勘違い(間違い)があることに気が付くようになりました。
以下、述べさせてもらいます。
1.預金又貸し論によるお金の創造
太西氏の貨幣の信用創造論は「預金又貸し論」に基づくものになっています。
この動画の動画の31:00~40:00にあります。
https://www.youtube.com/watch?v=oEjM-7x8OlI
図で表すと、以下のような流れになっています。
例えば、預金準備率が1%の時、銀行が貸付を行うプロセスのなかで以下の通り信用創造でお金が実体経済の中に増えていくとされています(上図をみながらお読みください)
- A銀行は〇〇社から預金100万円を預かる。すると、A銀行は○○社の預金のうち99万円を貸し出すことができる。
- A銀行が■■社に99万円を貸出、■■社が99万円をB銀行に預金する。同様にB銀行は■■社の預金のうち98万100円を貸し出すことができる。
- B銀行が●●社に98万100円を貸出、●●社が98万100円をC銀行に預金する。そのうちC銀行は●●社の預金のうち97万299円を貸し出すことができる。
- C銀行は97万299円を▲▲社に貸し出す。
- これを無限(貸出預金がなくなるまで)に繰り返す
以上のように、最初の100万円が、預金と貸出を複数の銀行において繰り返されることで、実体経済のなかにお金を増やしていくことができるというのが、この「預金又貸し論」に基づく信用創造になります。
ちなみに、2022年1月実施の大学共通テストの「現代社会」に、ほぼ同じような内容の問題が出題されました。
※上の問題については、この解説動画の14:40~以降をご覧ください。
当該問題の批判動画→三橋貴明氏による解説
尚、共通テストで出題された「信用創造」と「日銀の買いオペ」も今までの勘違いを顕在化させました。こちらもどうぞ→「政治経済」科目の波紋
尚、この通俗的な信用創造論には・・・・いくつかの問題点があり、信用創造とは言えないと専門家から指摘されています。その主な点は以下の通りです。
2.「預金又貸し論」の問題点
①最初にA銀行に持ち込まれた100万円はどこからきたのか?・・・誰がどうやってこのお金をどうやって想像したのかの説明がない。
②、①の100万円が別のD銀行から引き落とされてA銀行に入金されたもののとすると、全ての銀行の残高合計は増えないことになる。
③このような繰り返しが行われていくと、最終的には現金は全て準備金として日銀に預けられてしまうことになり、誰かが通帳から現金を引き出そうとしても引き出すお金が無くこの連鎖は崩壊してしまう。・・・誰も現金を引き下ろすことが許されない預金制度と言うことになってしまう。
つまり、この預金又貸し論は信用創造とは言えないとの評価になっているのです。
3.実際の信用創造
民間銀行は、お金を持っていなくても融資ができるのです。
借り手が返済の能力があると判断されれば、民間銀行はその人の通帳に、パソコンのキーボードでその金額が記帳されることで融資が行われています。(いわゆるキーストロークマネーです)・・・つまり、上述した1(預金又貸し論)のような複雑なことではなく、もっと単純なものになっているのです。
このようにして、民間銀行は実体経済の中にお金をふやしているのです。
尚、この場合に当該銀行の日銀当座預金(準備金)に貸出総額が左右されることは言うまでもありません。準備率1%の場合・・・【当該銀行の日銀当座預金額÷0.01】の範囲になります。
※私が、大西氏の主張の中で最も違和感を感じているのは、次の国債についての認識が実際のオペーレーションとは大きく異なると言う点です。
4.大西氏の国債についての認識
①国債購入資金は民間銀行(国民預金)からの借金
太西氏は、国債購入の資金は、「預金又貸し論」に基づいて、民間銀行が信用創造したお金で買っていると主張しています。
この動画の47:00~50:00をご覧ください。→大西つねき講演会
民間銀行は・・・
信用創造でお金が増やす→その増やしたお金で政府発行の国債を購入→その代金が政府に渡る→政府が公共事業や国民への現金給付を行う→そのお金が実体経済に回る→結果として国民全体の金融資産を増やしている・・・というのが大西氏のロジックになっています。
つまり、国債購入は、民間銀行(国民預金)からの借金から調達しているという認識なのです。
国債が発行されると国民資産が増えていると言うのは、緊縮派にはない視点で評価できるところがありますが、肝心の国債購入資金を実体経済の国民預金から、としていところは間違っていると思います。
②実際に行われている国債購入資金は日銀当座預金が使われている
実際は・・・国債購入のための資金は「国民預金ではなく日銀当座預金」です。しかも、その日銀当座預金は、政府の子会社(資本金の55%は政府が出資)である日銀が供給したものです。
民間銀行が仲介しているものの国民や民間銀行からの借金ではありません。
ここの後半部をご覧ください→国債の購入資金を国民預金としている著名人 勘違いの原点はここにある
太西氏の講演の中で、「日銀当座預金」という言葉は、一言もでてきませんでした。
日銀当座預金の役割はとても重要な役割を負っているだけにとても残念に思います。
国債は、上図の右側のなかで売買されていますが、大西氏は左の民間銀行の預金をベースにして行われていると考えているように思われます。・・・そこから類推されることは、日銀の買いオペレーションが行われると、お金が左側の実体経済に流れると考えているのではないかと思われます。
実際のところ、国債発行で国民資産が増えているのはこのような仕組みになっています。
③国債購入資金を国民が返済する必要があるのか?
太西氏は国債購入資金は銀行から借りているので、いつかは返済しなくてはならないと主張しています。
この大西氏・動画の11:03 ~ 12:30をご覧ください→国の借金は返さないといけない
「政府の借金は子供達への後払いになる。税金として支払うことを押し付けられている」と言っています。これは、緊縮派の主張と同じで、間違った認識ですね。
また、こうも言っています。「国債には利払いが発生しており、貧しい者からお金を取り立てて銀行に儲けさせるのはおかしい」という趣旨のことを述べています。
実際は、その元本償還も利払いも、新たな国債(借換債を含む)が発行され、これも日銀当座預金が充当されています。国民はそれらの負担をする必要がないような仕組みになっています。
つまり、国債とは・・・発行は日銀当座預金にはじまり、償還も日銀当座預金で終わるようなものなのです。 一部の人から「国債償還は税金を充当すべき」との意見もありますが、そのようなことをしたら、国民の資産は減るばかりになります。もともとそのような必要はありません。
ここを最後までご覧ください→国債償還はこのように行われている、
国債購入資金も償還費も日銀供給の日銀当座預金で賄われていますので、将来世代がツケを払う必要がありません。国の財政は家計や企業、地方自治体とは全く異なるものです。
③政府通貨の発行は必要か?
太西氏は、国債は将来世代が、税金として後払いを押し付けられることになるので、その返済は「政府通貨」を発行して行うべきであると提案しています。
政府通貨が発行されれば、たしかに国債も不要になります。それと同時に中央銀行も不要になりますが、いきなり日銀廃止論まで進める必要があるのかどうか議論があるところかと思います。・・・日銀が不要になった場合に、金融政策が円滑に行われるのか検討が不可欠になると思います。
・・・そもそも国債についての発行と償還の仕組みを正しく理解すれば、政府通貨を発行しなくても、国民負担なくオペーレーションが可能なのに、極めてハードルが高い選択をする必要があるのかどうか素朴な疑問がでてきます。
民間銀行への利払いをしたくないと言うならば、国債の日銀保有量を多くしていけば、その懸念も解消していきます。(ちなみに、現在でも日銀は50%の国債を保有しています)
現在の我が国では、国債購入を日銀が直接的に購入することは法律で禁止されています。・・・せめて、下図のように改善(政府発行の国債を日銀が直接的に購入しやすい仕組みづくり)が、まず先にあっても良いではないかと考えますが、どのようなものでしょうか?
最後に大西さんの主張を箇条書きにしてみました。
1.大西氏・・・国債購入の資金は、民間銀行の信用創造で増やしたお金である。
実際は・・・日銀の信用創造で増やしたお金(日銀当座預金)を元手に民間銀行経由で買っている。
2.大西氏・・・国債が発行されると、実体経済にお金が流れ国民資産を増やしている。
実際は・・・・国債発行と同額の国民預金が増えているので、大西氏と同じ見解である。
3大西氏・・・.国債は、1のように民間銀行から借りて買っており、利子も国民が支払っているので、将来の世代が返済しなくてはならない(将来のツケである)。
実際は・・・・国債は政府の子会社である日銀が供給したお金(日銀当座預金)で買われており、返済や利払いも同じ日銀当座預金が使われている。国民が返済する必要はないし、将来世代のツケにもなっていない。
4.大西氏・・・国債を国民が税金で返済すると国民の資産が失われていくので、政府通貨を発行して返済すべきである。
実際は・・・もともと国民が負担しなくても償還、利払いが行われる仕組みになっているので、政府通貨を発行しなくてもインフレ率さえ注意していけば必要な通貨を供給できる。今のままでも問題は発生しない。
政府通貨を発行できる制度にするには、国民や議会等の同意を得なければならず途方もない時間が必要になる。せめて、政府が国債を発行するものの日銀の直買いができるようにするのが先ではないか?
以上です。
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