1日の中で夜明けが1番好きだ。

今日の朝は特に素晴らしかった。

夜明け前、まだ雨が降っていた。

街灯が濡れた道路を照らし、静かな音だけが響いている。

家族はまだ眠っていて、世界が止まったような静けさ。

自分だけが一歩先に動き出すこの時間が好きだ。


冷たい空気を吸い込み、ゆっくりと深呼吸をする。

今日の現場は洗濯機の引っ越し。

ホース、工具、毛布、ベルト。

忘れ物がないか何度も確認した。

準備を整えるたびに、心も整っていく。

仕事は始まる前が勝負。

段取り八分、仕上げ二分。

その言葉の意味が、年を重ねるごとに深く染みていく。


車に乗り込み、まだ暗い道を走る。

ワイパーの音が一定のリズムを刻み、心が落ち着いていく。

信号が青へと変わり続ける道は、まるで今日のスタートを後押ししてくれているようだ。

やがて東の空がうっすらと明るくなり、雨が止んだ。

雲の切れ間から光が差し込み、濡れた道路が一瞬にして輝き出す。

その光を見た瞬間、思わず深呼吸をした。

胸の奥に静かな熱が灯る。


夜明け前は、昨日までの反省。

明けは、新たな始まり。

そしてその間にある静けさこそ、自分との対話の時間。

今日という一日をどう生きるか、心の中で問い直す。

この時間があるから、前を向ける。


現場に着くころには、空はすっかり晴れていた。

太陽が昇り、街が少しずつ動き始める。

荷物をもう一度確認し、心の中でつぶやく。

「今日もいい仕事をしよう。」


「夜明け前がいちばん暗い。だが、必ず夜は明ける。」

―― トマス・フラー(歴史家)


暗さの中にこそ、希望の光がある。

今日もまた、確かな一歩を踏み出す朝が始まった。