結論から言えば、団塊の世代としらけ世代が頑張ったから、戦後復興及び高度経済成長が成し遂げられたのだ、という主張は単なる思い込みに過ぎない。どういうことか。順に見ていこう。

 

壱:国共内戦(1927年~1950年)(1)。この記事では、第二次国共内戦(1946年~1950年)を指す。当初、アメリカは蒋介石率いる国民党軍に多大なる援助をしていたが、国民党軍が敗れて台湾に退くと、今度はそれまで非軍事化を進めていた日本にララ物資(2)を通じて、援助を始めた。団塊の世代が言う戦後の配給とは、このララ物資の事である。このララ物資は、当時の日系アメリカ人の団体が日本に送っていた。第二次世界大戦中、アメリカ政府は日系アメリカ人を全員収容所に監禁していた。日本人の血が入っているというのが、その理由だ。しかし、戦後アメリカ政府は日系アメリカ人の団体が日本にララ物資を送るのを事実上黙認していた。

 

弐:朝鮮戦争(1950年~現在)(3)。1950年、北朝鮮が突如、南下を始めて韓国に侵攻した。アメリカ軍は直ちに韓国の支援に乗り出した。朝鮮半島は共産主義大国であるソ連(当時)と中国の目と鼻の先にあり、また北朝鮮は共産主義、韓国は民主主義であった。いわば、朝鮮半島はアメリカ率いる西側陣営と中国とロシア率いる東側陣営との間にある最前線の緩衝地帯なのだ。なお、この朝鮮戦争は現在も継続中だ。但し、現在は休戦状態にある。

 

参:日本。上記の壱と弐の事情により、アメリカはより日本を重要視するようになる。もし万が一にも朝鮮半島が北朝鮮により統一された場合、今度は日本が西側陣営の最後の砦になる。もし日本まで共産主義圏内に入ったら、中国とロシアは太平洋及びアメリカに対して障害が全く無くなるからだ。そこで、アメリカは原爆まで落とした日本に異例の援助を実施し続けた。そして、それにより戦後の人口ボーナスの恩恵も相まって、日本は高度経済成長期を実現するに至った。これにより、アメリカは日本に対する自国の占領と自らが掲げる民主主義及び資本主義の正当性を世界に向けてアピールすることが出来た。実際、現在世界で共産・社会主義を掲げているのは五か国(ロシア・中国・北朝鮮・ラオス・キューバ)のみである。因みに、ロシアはペレストロイカにより、共産主義から共和制に移行している。一方、中国は今も共産主義体制ではあるが、香港に唯一自由貿易を認めている。ところで、日本は聊か調子に乗り過ぎた。だからこそ、日本で不動産バブルが弾けた直後に日米貿易摩擦を口実にアメリカで執拗な日本叩きが勃発した。これにより、日本はバブル崩壊後、所謂”失われた30年”に突入していく事になる。

 

以上の理由により、日本の高度経済成長期は”アメリカのための経済成長”と言う事が出来る。

 

【参考資料】

(1)国共内戦

(2)ララ物資と日系移民との関わり -ニューヨーク日系人会を例として-

(3)NIDS防衛研究所 平成18年度戦争史研究国際フォーラム報告書