2021年10月31日午後8時近く、京王線国領駅に向かう電車内で、またしても痛ましい事件が起こった。20代の男性がナイフを振り回し、挙句の果てにライターオイルとみられる液体をまき、そこに着火した。(1)おりしもこの日はハロウィン且つ第49回衆議院議員総選挙の投票日であった。更に、緊急事態宣言も解かれていたため、街には多くの人々が押し寄せていた。メディアも相次いで選挙特番を放送していた。投票所や各政党の本部にも多くのマスコミが殺到し、またこれらの警備に加え、ハロウィンの混雑を取り締まるため、渋谷にも大量の警察官が投入されていたはずだ。そのような中で起きたのが今回の事件。しかも、場所は京王線国領駅(2)。新宿駅から国領駅までは各駅停車で約30分ほどである。しかも、新宿駅近くには日本最大の歓楽街である歌舞伎町がある。更に、新宿駅は渋谷駅から各駅停車で5分程度だ。そして、国領駅は多摩地域の調布市、すなわち郊外の閑静な住宅地域にある。一日の乗降客数としては、各駅停車駅としては京王線最大だ。これだけを見ても、いかに今回の事件が重大かが分かるだろう。

 

私は、今回の事件を見て地下鉄サリン事件(地下鉄構内毒物使用多数殺人事件)(3)を思い出した。地下鉄サリン事件は宗教団体オウム真理教が1995年に東京メトロ霞ヶ関駅等で起こした、猛毒のVXガスを使った無差別テロだ。放火とVXガス及びサリンの違いはあるがどちらも密室状態の中で不特定多数の人々を確実に死に至らしめる犯行であることに変わりはない。このような事件が報道されるたびに、日本のテロ対策は一体どうなっているのだろうかと本気で心配になってくる。

 

【参考資料】

(1)「ハロウィーンで大量殺人できると」京王線刺傷事件の服部容疑者、死刑願望も供述

(2)京王電鉄京王線国領駅

(3)地下鉄サリン事件