近年の国内外の選挙の傾向の一つとして、富裕層に更なる課税を主張する者が増えてきた。それだけ、今の資本主義は根幹から揺らいでいるのだろう。そして、それはまた同時に貧富の格差がもうどうしようもないくらいに拡大しきっている事の証でもある。だからこそ、選挙で富裕層に応分の負担を求めるというのは有権者の心に響くだろうし、また票を一つでも多くかき集めたい政治家にとってはこれほど手っ取り早いものは他にないだろう。しかし、そこにはリスクも確かに存在する。

 

 実際に、3000万ドル以上を保有する富裕層が多い国・地域ランキング(1)と【2021年】最新世界GDP(国内総生産)ランキング(2)を比べると、その順位はほぼ一致する。つまり、富裕層の多さが国家の経済力に直結していると言っても決して過言ではないのだ。その富裕層に対して更なる増税をしたら一体どうなるか。確実に富裕層の反発を招き、彼らは住みよい場所を求めて海外に移住してしまうだろう。これは、日本にとっては死活問題だ。日本はこれまで20年間実質賃金が全く上昇しなかった。当然のことながら累進課税制度を導入している以上、国民の所得が増えなければ税収も増えない。そうなれば、実施できる政策にどうしても限界が来てしまう。バブル崩壊とリーマンショック、そして二度の震災を経て今も日本の公共インフラが世界でも比較的高い水準を保っていられるのは、富裕層の納税によるところが大きいのは明らかだ。

 

寧ろ、富裕層には課税を更に押し付けるのではなく、彼らが気持ちよく消費が出来るような環境を整えるべきだ。そして日本の経営者は社員従業員に労働に見合った給与を支給するべきだ。もしそれをしたくない、或いはそんな事をしたら会社が潰れてしまうなどと宣う経営者がいたら、それは経営の才能が無いという事なのでさっさと経営の才能のある人物が取って代わるべきだ。

 

【参考資料】

(1)資産3000万ドル以上の超富裕層が多い国ランキング

(2)【2021年】最新世界GDP(国内総生産)ランキング

(3)実質賃金指数の推移の国際比較