家族が亡くなった後、空き家をどうするか。遠方に住み、病気療養中である相談者さんが、遺品などの扱いを含め、どのように解決をしたのかという事例を取り上げます。

妹が亡くなり実家が空き家に

長崎県に住むIさん(70歳男性)は、ひとり暮らしをしていた妹さんが亡くなった後、空き家をどうするかに悩み、相談に来られました。Iさんと妹さんの両親はすでに亡くなっており、妹さんが住んでいた家はIさんの実家でもあります。妹さんは独身だったため、Iさんが空き家の相続人となりました。

Iさんは妹さん(実家)の遺品を片付けようにも、病気療養中のため、福岡県をたびたび訪れるのが難しい状況です。手術を控え医療費を準備するためにも、「できるだけ早く空き家を売却したい」という思いがありました。そこで、妹の葬儀を請け負った会社の紹介により、福岡県福岡市の「不動産相続の相談窓口」を訪れたのです。相談に当たったのは不動産会社、イーコムハウジングの北島光太郎さんでした。

Iさんは空き家の片付けや、実家の解体、それに伴う立ち会いなどが体力的に難しいため、半ば途方にくれていました。「なるべく早く空き家を売却したい」と希望する一方で、「様々な手続きをするのが難しい」とも話されていたのです。北島さんはIさんから話を聞きながら、問題点を整理しました。

【問題のポイント】

1. 遺品の片付けをどうするか。
2. 相談者が遠方かつ病気のため、不動産売却に関する様々な手続きが心配。
3. 自身の医療費も必要なので、できるだけ早く空き家を売却したい。

遠方に住んでいても安心な解決策を探す

北島さんはIさんに2つの選択肢を提示しました。1つ目は空き家を仲介で売却すること。そして2つ目が、不動産会社が今の状態のまま空き家を買い取ることです。それぞれどのようなプロセスを経て行われるのか、丁寧に説明しました。

まず1つ目の、空き家を仲介で売却するという選択をした場合、家財道具の選別や処分をして売れる状態にすることが必要になりますが、自分でやるとなると、かなり手間のかかる作業になります。それから空き家を清掃したり、あるいは更地にする場合は、解体したりといった段階に進みます。

また、土地を売却する場合、古い町並みは境界線があいまいなことも多いため、境界線を確定させる必要があります。それから買主さんを探すとなると、場合によっては売却までに数ヶ月を要する可能性もあります。

次に2つ目の提案である、不動産会社が今の状態のまま空き家を買い取る場合です。最初の立ち会いで大事な遺品は引き取ってもらいますが、そのほかの家電品の処分、片付けもすべて任せることができます。もちろん、業者が整理をしている間でも、手紙や写真等、大切と思われる物が出てきたときには、相談主さんに連絡します。登記の手続き、測量、解体等の費用を差し引き、買い取り金額は仲介での売却と比べ低くなりますが、基本的に時間と手間がかかりません。

北島さんは、手続き上の説明のほかに、過去の相談事例を通じて気になったことも伝えました。それは、奥さんが空き家を相続することになったときのことです。Iさんの奥さんとも話すことが多かったのですが、Iさんにもしものことがあれば、奥さんがその空き家を相続することになります。そうした場合、奥さんが空き家を処分しようと思っても、「冷たいと思われるのではないか」等、親戚の目が気になって、何もできなくなる可能性があるのです。実際、こうしたケースが多いため、ひとつの可能性として話しました。

結果として、Iさんは不動産会社による買い取りを希望されました。

相談から問題解決までの流れ

・相談者が葬儀会社の紹介を通じて、相談窓口を訪ねる
・空き家をどうするか、窓口で相談、
・相談窓口の説明のもと、売却と、相談窓口での事例を参考にその不動産でできること(仲介、買い取り、賃貸、駐車場として運営等)を比較。相談者の意思により相談窓口での買い取りが決定。

・相談窓口が家財道具を整理
・測量により、家の敷地の境界線を定める
・司法書士を通じ、登記手続き
・コンサルティング料はなし、売買代金は約2600万円

実際に測量したところ、登記していた面積よりかなり広いことがわかりました。昔よりも測量技術が進化しており、増減することはよくあります。家財処理は大事なものだけ相談者に引き取っていただき、約2日間で処分、その後解体工事までを終えました。そして、更地として再販するところまでを相談窓口で行いました。現在その土地にはビルが建っています。
 

法律だけではなく相談者の心情も理解

北島さんは今回のケースを次のように振り返ります。

「これまで不動産相続を多数手がけてきましたが、今回は短期間で解決を図ったのが特徴的でした。最近は、不動産の持ち主が亡くなる前の段階から、本人や家族などが不動産をどうするか、事前に相談される方が増えています。家財の処分、登記、遺産相続などでもめることが見込まれる場合には、あらかじめ現金化をして分割するなど、準備をしておく方も多い印象です」

こうした相続の相談で、北島さんは「弁護士や税理士には話せない、家族の事情や気持ちなど、不動産会社だから気楽に相談してくれる相談者が多い」と感じています。今回もIさんの奥さんと話をするうえで、もし自分が奥さん(相続人)の立場になったときに「夫の実家を扱うのは難しそうだ」と思っているのを汲み取ったうえで、いろいろな事例を話しました。

不動産会社として、「家を売りたい」という要望を受け、査定額を複数の会社が提示し、価格競争をするのがこれまでに多いスタイルでした。しかし、お客様に、最終の売却段階ではなく、相続や売却をする前のできるだけ早い段階でどうすればドアをたたいてもらえるか。どうすれば、相続人の想いを尊重したうえで、財産を引き継いだ人が困らない不動産の相続を実現できるようになるか。そう考えたときに、葬儀会社とも連携をして、様々な悩みの相談に乗るという、コンサルテーションを始めるようになりました。

そうして、相続について悩みを持ったお客様の相談に乗ることで、お客様から感謝され、やりがいになります。また、長い目でみると、以前に相談に来られたお客様が戻ってきてくれるきっかけになったりもします。例えば、遺産相続でもめているお客様に対して、また将来もめたくないお客様に対してもアドバイスができ、過去に相談を受けた事例が増えているので、そうした過去の事例をもって、「私たちにはこういうやり方がありますよ」と選択肢を提示できるのは相続の相談対応ができる不動産会社ならではだと思います。何でも相談できる存在として、頼りになる不動産会社をめざしていきたいですね。

【今回相談に乗っていただいた担当者】

<北島光太郎(きたじま・こうたろう)さんプロフィール>
株式会社イーコムハウジング代表取締役

福岡県福岡市出身。東福岡高校~九州産業大学卒業後、パナホーム(株)入社。約10年間新築の営業としてトップクラスの営業成績を残す。2007年イーコムハウジングを設立し、不動産業へ転身する。地元や業界での奉仕活動に力を注ぐとともに、不動産売買、開発、賃貸管理の業務を中心に事業を展開。相続コンサルティング・資産有効活用、賃貸経営に関するアドバイスなど、不動産に特化した総合不動産コンサルティングを行っている。資格は不動産資産相談士2級、宅地建物取引士、福祉住環境コーディネーター2級、住宅ローンアドバイザー、相続知識検定マスター等多数

 

 

 

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