船に乗り、甲板に上がる。強く吹く潮風が頬をかすめ髪をなびかせる・・・そんな情景が容易に想像できる。そう、海上では陸地と異なり何物にも阻害されることなく強い風が吹いている。これを上手く利用しようと編み出されたのが洋上風力発電だ。既存の風力発電が抱える問題を解決できる洋上風力だがその数は少なく、見たことのある人も限られている。それは何故なのだろう。

風をつかめ!

 前述のように海上の風速は地上に比べ強く安定している。海上に地上のように風を阻害するような遮蔽物が無いためだ。当然だが強く安定した風により風力発電の効率は上がり、安定した電力を生産できる。太陽光と異なり風さえあれば夜間の発電も可能。

 洋上風力のメリットはそれだけではない。風力発電を近くで見たことがあれば分かるが、近くではかなり大きな音がする。騒音は典型7公害に含まれ課題の一つとされている。しかし洋上に風力を設置することによりこの問題を緩和することができる。これは景観への対策にも役立っている。また風は再生可能エネルギー(以下再エネ)とされており、枯渇する心配が無く半永久的な使用が可能である。国産であるためエネルギー自給率の向上も期待できる。当然発電時に二酸化炭素を排出しない。

 工期の短さも魅力的だ。風力発電は火力や原発などの大規模発電と比べ工期が短く、洋上風力でもフル稼働まで1年未満という短さだ(茨城県の神栖洋上風力の場合)。工期が短いということは電力の需要に対し数の増減で速やかに対応することができることを指す。火力などの大規模発電システムでは電力が足りなくならないよう余裕を持って建設しなければならない。そのため見込まれた需要を下回った場合損失も大きくなってしまう。風力に限らず一基の発電量が小さいほとんどの再エネはこれを解決できる。

 最大のメリットは土地の確保が容易である点だ。風力をはじめとする再エネはエネルギー密度の小ささを課題としている。原発・火力並に発電するために広大な土地を必要としてしまうのだ。海は地球の70%を占め、日本は排他的経済水域が世界で6番目の広さである。勿論それら全てが発電に適しているわけではないが前述の騒音など土地確保に問題の多い地上以上のメリットが洋上風力にある。


Ecological Times Project ~今日のエコは明日の環境、そして未来へ~-メリット
新興国が参入か?日本でも

 トリウム技術の開発に最も熱心なのはインドだ。トリウム資源が豊富なためでウラン原発から出る使用済み核燃料から取り出したプルトニウムを種火としてトリウム原発を動かすという2段構えの開発を進めている。また中国ではレアアースの採掘時に副産物として多量のトリウムが取れる。廃棄物としてきたこれを今後は利用していくようだ。このようにエネルギー需要の高まりを見せ、資源量も多い新興国ではトリウムへの関心が高いことが分かる。
 日本では静岡県知事が関心を寄せ、要請を受けた中部電力では浜岡原発で研究を始めるようだ。


エコタイム(社説)

脱原発が叫ばれる現状ではいくら今までとは異なるトリウムといえど容易く受け入れられることはないだろう。特にウラン233が出すガンマ線は放射線の中でも特に強力で、これがやりだまにあげられることは間違いない。これ以上何万年かかるか分からない放射性廃棄物を増やし、管理を次代に任せるわけにもいかないだろう。また、偏りが少ないとは言えそれはウランと比較した場合であり、全ての国が自給できるというわけでは当然ない。日本でもトリウムの存在は確認されているが調査不足もありその量は決して多くはない。可能性を求め調査した挙句ない場合は輸入。地元の理解や輸入のために金をばらまくくらいなら日本ではトリウムの開発を行わず省エネ技術や再生エネルギー・コージェネレーションの開発に取り組んだ方がよいだろう。輸出としての技術開発だとしても輸出先が限定され0から開発しなければならないトリウムよりも海外に比べ効率が良く大気汚染物質の排出を抑制できる日本の火力発電やお家芸たる省エネシステムを売り込んだほうが現実的だ。
 あなたはどう考えるだろうか?確かに言えることはトリウム原発も原子力発電であるということだ。最も欲しいものは何なのかを私たちは考えなければならない。
 

こちらの記事は本プロジェクトHPにもアップされています。
URL:http://ecotimproject321.web.fc2.com/




参考資料:
日経新聞、科学の教科書 
ブログ・自然の摂理から環境を考える 
URL:http://blog.sizen-kankyo.net/blog/2010/03/000701.html
トリウムの希望


 トリウムはウランとは異なり単体で核分裂しえない。トリウム原発では中性子をトリウムにあてることにより変化したウラン233が分裂することによりエネルギーを取り出しているため原理的にはウランよりも安全な物質である。ウラン原発の軽水炉では圧力容器や配管に沸騰水型で約70気圧、加圧式型で約150気圧もの内圧がかかる。トリウムは常圧であるため圧力面では無理が少ない。また、消費した燃料を適宜継ぎ足すことで連続運転が可能であるため炉内に余分な燃料が無く、暴走するような事態が起きにくい。
 原発開発=核兵器へと結びつきやすいウラン原発とは異なりトリウム原発では核兵器の原料であるプルトニウムを作らない。さらに半減期が何万年もかかる放射性廃棄物の発生量が少なく廃棄物の面でも優位である。


トリウム原発とウラン原発を比較した表が下記だ

$Ecological Times Project ~今日のエコは明日の環境、そして未来へ~-トリウム原発とウラン原発の比較


妨げる課題


 当然課題も多い。そもそもトリウム原発は現在開発されておらず、その技術は50年前から進んでいない。前述の通りトリウム炉の中心で使用するポンプなどの機材は700℃の液体にさらされ続ける。これに耐えられる材料や構造の実証を行わなければならない。また、トリウム原発は単体で核分裂しないため種火として中性子源が必要となる。これにはプルトニウムや高濃縮ウランなどが必要であり、トリウムに切り替えたとしても核の拡散防止に努めなければならない(そもそもウラン233は核兵器に成りうる)。ウラン233は非常に強い放射線であるガンマ線を放出するため分厚い壁越しの遠隔操作や保管時の被曝防止など対策を必要とする。
 このように解決しなければならない課題も多く実用化までの道は長い。


続きます