Dearあなたへ
きった〜。夏が来た。
連続テレビ小説は三代目主役のひなた登場で、あの時代の夏休みを過ごしている。
あの時代とは?そうそれは私達の育った時代。
日本が高度経済成長期だった、その真っ只中に生まれたわたしたち。
ドストライク直球ど真ん中って感じの展開に、もう10歳のひなた登場初日からワクワクしっぱなしである。
まるでちびまる子ちゃんのような、赤いスカート履いたひなた。
あのスカート姿に、自分を重ねたわたしたちはどれだけいる事だろうか。
ほんの10分少々の映像には、懐かしさが凝縮されて詰まっていた。
ひなたとは一年違いの私は、もうすっかり同級生気分である。
日本の夏、あの頃の昭和ど真ん中の夏休み。
スイカに麦茶、花火に縁日、夏祭り。
今でもやっているんだろうか、眠い目を擦って参加していたラジオ体操。
ちゃぶ台でご飯を食べるのも、安っぽい薄い緑のテーブルも、みんなみんな懐かしい。
スイカも花火も今でも確かにあるけれど、あの頃は美味しい物も楽しい事もそれしかなかった。
そんな夏だった。
大した事が取り立ててあるわけでもない。
でも暑い暑いと言いながら、学校が休みという事だけに酔いしれて過ごした夏休み。
そして日本の夏の夕暮れと言ったら、蚊取り線香と夕立だろう。
日が翳り始めた頃になると、さ〜っと降ってくる大粒の雨。
夕立はモクモクと雲が広がり空が薄暗くなったと思うと、突然一気にやってくる。
あっ洗濯物、布団が干してあった〜と大急ぎで取り込みに走る。
でも今の時代のゲリラ豪雨とは違って、降り終わりがほっとする急ぎ足の雨だった。
チャンバラが好きで刀を振り回すひなた程お転婆ではないが、チャンバラと聞きふっと月影ひょーごと名前が出る位に、私も時代劇スターにハマっていたのだ。
サザエさんにはふ〜んなる程ね。
ちびまる子ちゃんでさえ、そう言えばって的な感じだった。
けれど今日のカムカムひなた時代には、ドップリハマってしまい思い出し笑い状態だった。
ひなたのように元気で屈託ない性格でもなく、ちびまる子ちゃん程頭の回転が早く悪知恵も働く子供でもなく、内弁慶でどっか抜けた子供だった自分。
そんな自分が育った時代、環境が思い出されてグッときた。
自慢する事が無い私には、生まれた時代が唯一の自慢だ。
東京オリンピック開催、新幹線開通の年に生まれたんです。
あと雅子皇后様とは同学年。
人が聞いたら、はあそうですか。の一言で終わってしまう。
むしろ、とう年取って30歳のジョークも使えないしっかりアラ還になってしまった現実である。
でも自分が育った時代が好きでたまらない。
日本がパワーに溢れ活気があり、どんどん変化していった高度経済成長期。
その時期に生まれ育った事が、心底嬉しい自分がいる。
そしてひなたと全く同じ事もある。
夏休みの終わりを前にした、あの恐るべき状況心境だけはそっくりだ。
おばあちゃん子だった私は、夏休みの最後は毎年祖母との二人三脚で宿題を片付けた。
残りの数日はもうデットヒート状態である。
朝からずっとおばあちゃんおばあちゃんと、家事やら家の用事で忙しい祖母を追っかけ回しては宿題手伝いの催促だ。
絵はね大きくスッキリと描くのがいいんだよ、そう言って祖母は画用紙いっぱいに紫色の朝顔を描いた。
夏を題材にした水彩画の宿題である。
絵の上手な祖母が鉛筆で下書きをし色を塗り、出来上がったらそのまま提出である。
何の臆面も無い。これでやっと一つ片付いた。
このレベルである。
おおっ上手いじゃないか。よく描けているな。
私の絵を見ながら先生がニコニコしている。
ええっ。。。
絵はこう描かなくちゃな。デッカク花が描いてあっていいぞ。
心臓が止まるかと思った。
褒められているのにまるで蛇に睨まれた蛙状態で、返事のしようもない。
はあ、あの、顔が引きつってしまい、ありがとうございますが出てこない。
返事はもうしどろもどろ状態である。
その上なんとその絵は廊下に貼り出されてしまったのだ。
よもや職員室の前に貼り出されるとは。。。
上手いとはいえ他に貼られているのは、全て児童が描いたザ小学生の絵である。
色が混ざり合いぐにゃぐにゃの線で描かれた絵の中で、祖母の描いた朝顔は紫色も鮮やかにスッキリクッキリ際立っていた。
さすがにこれはないだろう。。。
廊下を通る度に早足になり、心臓はバクバクし走り去るといった状況である。
おばあちゃ〜ん、もっと下手に描いてくれても良かったのに〜と。
可愛い孫にせがまれ、祖母としてはちゃんとした絵にしようとの婆婆心だったのだと思う。
それを喉元過ぎれば。。。何とも現金な孫であった。
安子やるいに自分を自分達の時代を重ねながら、毎朝観ている人も多いだろう。
それがテーマなんだから当たり前ではあるが。
私も3番バッターひなたに、のっけからホームランをかっ飛ばされてしまった気分だ。
古い当時の映像が続く毎に次から次へドスン、バシッとキャッチャーミットに音を立て球が決まっていく、そんな感じだ。
恋愛とはまた違った、でもしっかりとハートは鷲掴みされドンピシャ、ストライク!
まさに日本の夏は高校野球
かち割り売り、サイレンの響き、黙祷、甲子園
当時の映像が出るともう気分は絶好調、盛り上がりまくりだ。
コロナ禍でまだまだ気分的に閉塞状態が続いている。
そんな中朝のほんのひと時を懐かしさに包まれ、ほっこりした気分で過ごせるのは悪くない。
ちょっとした小さな幸せ気分にす〜っと浸れる。
こうなると受信料すら払っている甲斐があるわ〜となってくる。
夏の終わりは
真っ白なページの続く宿題の山
かち割りのように
夏の暑さに溶けて消えてくれたなら
花火のように
夏の夜空に燃えて消えてくれたなら
遊び惚けた頭では、そんな事しか考えつかない
ため息だらけの憂鬱という気分を知った、小学生の私が飛び出してきた
ノスタルジーは止まらない