プーチンはヤバイ人間だ! そんなことはずっと前から分かっていた。トランプもそうだった。差別と偏見を助長し、平気でウソをつく。日本でもそういうのがいた。この前死んだ石原慎太郎。ちょっと才能があるだけにつけ上がり、他人を見下す。そういう人物が政治家になり、トップになれば碌なことはない。

 

 ところが、このプーチンとトランプを、世界を牛耳っている闇のディープステート(ユダヤ金融支配者たちということになっている)からの解放者であると見なすのが、ネットに根強くはびこっている陰謀論であり、そういう陰謀論者には元左翼だっという人物が多く、トランプの復活まで望んでいる。今回のロシアの軍事侵攻も、ウクライナにも問題があるとか、これはプーチンのディプステートに対する正義の闘いなのだと、この戦争を肯定する論まである。

 

 陰謀論など一種の宗教みたいなもので、ありもしないものをあるように延々と説明してみせて、無理やり自分を納得させ不安を解消するマスターベーションに過ぎない。政府が流す情報や、マスコミに流れる情報が、すべて正しいわけではないし、真実はなかなか表に出て来ないことも確かではあるが、この手の怪しげな陰謀論にひっかかるくらいならば、何も信じるべきではない。

 

 もしウクライナにも間違いがあったと言うのであれば、それはロシアの脅威から身を守るためにNATOに近づいたことだろう。それでロシアを挑発し、攻め入る口実を与えてしまった。歴史的にロシアの母国はウクライナなのだから、ロシアにとってウクライナが敵国になることだけは、何が何でも避けたいということを、ウクライナの人たちは分からなければいけなかった。

 

 戦争が冷酷な全体主義者によって起こされようと、自由と民主主義を守る正義のために行われようと、戦争がもたらすものは一つしかない。戦争になれば、多くの罪のない人々が殺され、兵士たちも権力者の意のまま駒のように扱われて死んでいくだけである。なぜ、このように愚かなことを、まだ人類は繰り返すのか。それは、戦争を望む人たちがいるからである。人々を支配することを望み、そのための暴力装置として軍隊を持とうとする。軍隊は人を守るためのものではないのは、はっきりしている。それは人を殺し支配するための装置であって、武器はそのための道具でしかない。いやいや、侵略者から国を守るのに、軍隊や武器が必要ではないか、というかもしれない。しかし防衛のために絶対安全だと言えるだけ軍備を増強しようとしたらきりがなく、軍拡競争にしかならないのであって、かえって侵略の危険は増すばかりだ。それは世界中の国々がやっている愚かなことで、その最たるものが世界を何度も破滅させられる量の核弾頭である。

 

 軍隊をなくさない限り戦争はなくならないし、戦争をやらないためには軍隊をなくさなければならない。日本国憲法は、はっきりそのことを述べているし、それは世界の規範となるべきものであって、日本はこの憲法を死守することによってのみ、世界の範となることができる。

 

 プーチンによるウクライナ侵攻により、日本も憲法を改正して正規の軍隊を持つべきだとか(自衛隊は既に世界有数の立派な軍隊だが)、専守防衛を飛び越えて敵基地攻撃能力を持つべきだとか、非核3原則をやめてアメリカの核ミサイルを配備すべきだとか(実際には横須賀や佐世保、嘉手納にも核兵器は入ってきているだろうけど、それを公表して中国や北朝鮮に脅しをかけたいという話)、そういう意見がネットでもはびこり出しているのは、実に嘆かわしく、悲しむべきことである。