2007/09/13, , 日本経済新聞 朝刊, 15ページ


ブランド力でシェア向上へ
 シャープが液晶を軸とした攻めの経営姿勢を鮮明にしている。七月末には堺市に世界最大級となる液晶パネル工場を二〇一〇年三月までに稼働させる計画を発表。最先端技術を投入して効率性を高める考えだ。ただ株式市場では、激戦が続く薄型テレビ競争で収益を確保できるか不安視する声も目立つ。CFO(最高財務責任者)の佐治寛副社長に、今後の見通しを聞いた。
 ――世界的な市場波乱が実体経済に悪影響を及ぼしかねず、米消費動向に対する懸念も広がる。薄型テレビ販売への影響はあるか。
 「特に消費が冷え込むという感触は今はない。ただ、いつものことだがクリスマス商戦を控えてテレビ各社の競争は激しさを増している。液晶テレビもプラズマテレビとの関係もあり、値下げ要請がやや強い。今後も価格動向には注意していきたい」
 ――米国ではノンブランド品の売れ行きが良い。シャープの市場シェアが落ちることはないか。
 「ノンブランド品は今後は落ちていくと思う。米国にも多様な消費者がいるが、ブランドを大事にしようという時期に来ていると思う」
 「シェア向上のため米でのマーケティングを強化しているが、最近はホテル需要が広がり始めた。宿泊客への情報提供のため、高精細のテレビが必要なためだ。高級ホテルでの採用が増えれば、それだけブランド力が高まると期待している」
 ――今年度の液晶テレビの販売目標は九百万台だが、達成は可能か。
 「メキシコとポーランドの組み立て工場が稼働し始めており、今年後半から来年にかけて操業が軌道に乗っていくと思う。販売目標は十分、達成可能だ」
 ――堺の新工場の投資額は約三千八百億円だが、新たな資金の外部調達は必要か。
 「〇六年に新株予約権付社債(転換社債=CB)を二千億円発行した。足りない部分は毎年の営業キャッシュフロー(現金収支)で賄える。新たな調達は考えていない」
 ――新工場で生産する液晶パネルを消費するには、自社テレビの販売増に加えて外販も積極化する必要がある。どのような外販先を想定しているか。
 「新しい顧客開拓は続けるが、現在、量は少ないながらパネルを供給している顧客がいくつかある。そうした相手に対して販売を拡大していけばいいと思う」
 ――携帯電話が国内シェアトップになるなど好調だが、今後の戦略は。
 「六月まではワンセグ対応モデルを中心に良かったが、これからは落ち着くだろう。国内だけでなく海外、特に東南アジアや中国をどう増やしていくかが課題だ」
 ――円高が進行しているが、何らかの対応策は必要か。
 「社内の計画レートは一ドル=一一五円、一ユーロが一五〇円で、このレートに違和感はない。行き過ぎた円高は若干戻すと思うが、慌てて対応策をとる状況ではない」
(聞き手は佐久間庄一)