過去10年のGⅠ牡馬の中で一番立派に見えたのは、キタサンブラックでした。友人とパドックを見ながら「いい馬だねぇ。大きいけれどバランスが取れてて」「ええ、脚が長くてすらっとしてますね。巨漢なのに素軽いです」とか、立派、立派と言いながら見ていたのを憶えています。実際牧場でもいい馬という評価は高く、北島オーナーもイケメンだと気に入っていたそうです。顔にまっすぐの流星を見れば納得です。活躍はご存じの通り、GⅠ7勝で獲得賞金も1位でした。何よりディープインパクトの不滅と言われた春天の3200mの大レコードを破り、台風が来て最悪の不良馬場であった秋天も勝利したことはその能力の高さを示しました。

 ダービーで惨敗した時は、母父が歴史的スプリンターのサクラバクシンオーであったので、秋は中距離戦へ行くとばかり思っていたのですが、菊花賞で勝利したのには驚きでした。やっとステイヤーだと分かったのは、春天を連覇した時でした。ブラックタイドは、他にもサクラバクシンオーが母父の産駒で勝利した馬は多く、配合としては合っていたようです。あまりにそれにこだわったのがいつまでも信じられなかった理由でした。サクラバクシンオーのスピードが隠し味になっていたと思うのは俗な考えかも知れませんが、血統は思いがけないことを演出することもあるという事でしょう。

 

 ブラックタイドの母ウィンドインハーヘアは、15頭の仔を出産しましたが、その中でも、2001年にブラックタイド、2002年にディープインパクト、2003年にオンファイアを出産。いずれも父はサンデーサイレンスです。スプリングSを勝ったものの故障で大成しなかったブラックタイドは、ディープの全兄という事で人気を呼び、そこそこの成績を残し、ついにキタサンブラックを出しました。

 キタサンブラックの実績から種付け頭数は軽く100頭を超えると思いましたが、83頭に終わり、意外と感じました。生産者は恐らくステイヤーとして一抹の不安があったのでしょう。日本の番組はマイルから中距離が主体ですから少し躊躇されたのでしょう。しかし、ふたを開けてみると、2歳リーディングの16位。新種牡馬リーディングでは堂々の4位でした。しかも、東京スポーツ杯2歳Sを完勝してクラシックに名乗りを上げたイクイノックスを出しました。キタサンブラックの前途は明るいものになりそうです。

 

 明日はシンザン記念。昔はクラシックに縁がなかった重賞ですが、ここ10年で4頭の後のGⅠ馬を出しています。特に目立ったのが、牝馬三冠馬になったジェンティルドンナとアーモンドアイです。牝馬の時代を象徴する名牝がこのレースから出世していきました。そして、今年本命になっているのが、キタサンブラックの仔、ラスールです。出遅れながら軽く差し切った新馬戦は大物登場の気配がしました。新馬戦の圧勝にもかかわらず、2戦目でがっかりという例も多いのですが、期待を抱かせる馬ではあります。さて、二度あることは三度となるでしょうか?