先週のスプリンターズSで素晴らしい記録が生まれました。勝ったピクシーナイトは曽祖父グラスワンダーからスクリーンヒーロー~モーリスと繋いでの4代目です。これは史上初の父子4代GⅠ制覇という快挙でした。血統からこの距離はどうかと思われていましたが、福永騎手の進言でこの路線への参加となり大記録を打ち立てました。3歳馬の勝利は2007年のアストンマーチャン以来で、今年の3歳馬はかなり強いのではないかと思われます。母の父はキングヘイローで、福永騎手が初ダービーで悔しい思いをした馬でした。福永騎手の原点ともいえる馬なのでしょう。因縁ですね。
キングヘイローは、グラスワンダーと同期でした。強い世代で、グラスワンダーはエルコンドルパサーやスペシャルウィークとともに3強と呼ばれました。3頭とも種牡馬としても成功し、グラスワンダーはスクリーンヒーローなど、スペシャルウィークはブエナビスタなど、エルコンドルパサーは、短命でしたが、ソングオブウインドを出すなど、GⅠ馬を輩出しました。近年、超良血のキングヘイローも母の父として注目されています。ところで、今回のスプリンターズSは、出走馬全16頭が関西馬でした。過去にもフェブラリーSで同様の事がありました。層の厚さがそうさせるのでしょうが、関東馬の奮起を期待したいところです。
関西馬の躍進は今に始まったことではありませんが、その原動力になった一つに坂路での調教が挙げられます。今では当たり前のように見られる坂路調教ですが、いち早く関西の調教師が要望し使い始めたところ、その成果はたちまち現れました。関東も遅ればせながら導入しましたが時期遅く、差を付けられました。坂路を何本も駆け上がることで持久力が増し、東京や中山の坂が平気になっていったのです。
ハードトレーニングで有名だったのは、1950年代に活躍した北海道の飯原農場でした。牧場主の飯原盛作氏は、生産馬に過酷な鍛錬を課し、鍛え上げました。代表馬に同期のダイナナホウシュウとタカオーがいます。両馬とも父は天皇賞馬シーマーで、その父は名種牡馬のセフトでした。牧場で鍛え上げられた両馬は、連戦連勝。ダイナナホウシュウの11連勝は、クリフジ、トサミドリ、ウイザートに並ぶ日本記録です。タカオーも皐月賞まで17戦14勝で11連勝していました。皐月賞では、ダイナナホウシュウが勝ち、NHK杯ではタカオーが勝ちました。ダービーはゴールデンウェーブに敗れますが、両馬は後に天皇賞を勝ちます。この2頭は400キロそこそこの小さな馬でしたが、スパルタ調教で鍛え上げられた強さは中央競馬会以前の名馬として日本競馬史に記録されています。
中央競馬会以後では、前にも書いたカントリー牧場があります。タニノムーティエ、タニノハローモア、タニノチカラなどが一世を風靡しました。ハードトレーニングは、馬を壊すのと紙一重で、どこまでやるのかが難しい面はあります。一定の効果はあるものの、各馬の成長度合いの見極めが出来ないと、単に馬をいじめるだけのものになってしまう恐れがあります。カントリー牧場でも多くの馬が犠牲になったと聞きました。今では、科学的な調教システムで馬は管理されていて、トレセン以外での調教場の充実も強い馬づくりに大いにプラスになっているようです。しかし、サラブレッドは能力が第一でいくらハードトレーニングをしたところで、強くなるとは限らないというのもまた真実でしょう。