オリンピックが終わりました。ヒヤヒヤものだった開催も日本選手のメダルラッシュで一定の支持を得ましたが、大義を失った大会は、どう評価されたのか、もやもやしたものが残りました。純粋に競技だけに目を凝らすと、スポーツの力を感じました。人によって好きな種目は違いますが、私は陸上競技が一番好きで、過去にも大阪での世界陸上や、神戸でのユニバーシアードを生観戦したことがあります。シンプルで美しいところは、サラブレッドに似ていますね。両親兄弟がスポーツ選手という家族も多いのです。女子1500mの田中希実選手もそうです。中距離で日本女性が入賞したのは、1928年アムステルダム大会の人見絹枝さん以来実に93年ぶりの入賞でした。小柄な身体で予選から日本記録を連発し、4分の壁を破る力走に思わず見入ってしまいました。その1500m予選でオランダのシファン・ハッサンが最後の1週で転倒しながら立ち上がり、11人をごぼう抜きで1着に。まさに超人です。彼女は、エチオピアからの移民ですが、2019年の世界陸上で1500mと1万mの2冠を達成しています。まるで、春天と安田記念を勝つようなものですね。今回5000mを加えた3冠を目指していましたが、1500mは、惜しくも3位でした。

 

 男子短中距離は、王者ボルトが引退し、群雄割拠の時代に入り、100、200、400、800,1500mは、順にイタリア、カナダ、バハマ、ケニア、ノルウエーと分かれました。女子も100、200mはジャマイカが圧倒しましたが、400はバハマ、800はアメリカ、1500はケニアと分かれました。日本選手は400m男子リレーに期待が集まりましたが、バトンミスで失格となりました。9秒台を集めたと言いますが、滅多に出ない9秒台が大きく報じされ過ぎたと思います。

 男子100mのファイナリスト(決勝進出者)は、戦前の吉岡隆徳のみで、暁の超特急と呼ばれました。吉岡さんは、1935年には当時の世界記録10秒3を出しています。島根県の神社の息子で小さい頃からいつも走っていたので地元では「馬」と呼ばれていたそうです。戦後では、前の東京オリンピックでの飯島秀雄がNO1でしょう。吉岡さんの日本記録を1964年に29年ぶりに更新する10秒1を出しました。その年の東京オリンピックでも予選最高タイムを出しながら二次予選でゴール後に転倒し、その影響からか準決勝で敗退しました。後の同じ準決進出者の伊東浩司氏に言わすと、「当時の土のトラックであんなタイムを出せるのは飯島さんぐらいでしょう」とのことです。また、100,200の短距離走で、五輪、世界選手権、ユニバーシアードを通じて唯一人の金メダル獲得者でもあります。(1965年ブタペスト・ユニバーシアード大会優勝)

 

 飯島氏については、その後プロ野球ロッテ球団に入団し代走専門に期待されたことは大きな話題になりました。ただし、足は早いが野球では素人で、スタートとスライディングが駄目で、成功率も平均を下回ったそうです。飯島さんは勝手に契約されていたと述べていますが、その走りを見ようと球場にはそれまでより多くのファンが入ったとのことで、球団の客寄せにされたようです。この二人は、競走馬でいうなら、吉岡さんがセントライトなら、飯島さんはシンザンというところでしょうか。ちなみに、競馬もそうですが、今回の陸上短距離のトラックの好時計連発は、反発力に優れたトラックと軽量化したスパイクのたまものだという意見が出ています。

 

 女子短距離で大記録を打ち立てたのが、アメリカのアリソン・フェリックスです。私も大好きな選手で、笑顔が素敵、走るフォームが美しい黒人ランナーです。日本人並みの体格で、彼女は長らく第一線で活躍し、35歳の今回がラストランでした。そこで400m個人と、1600mリレーにエントリー。銅メダルと金メダルを獲得。実に五輪11個目のメダルは、あのカール・ルイスを抜いて世界1となりました。また、アテネから5大会のメダルの合計(金7、銀3、銅1)もジャマイカのマリーン・オッティを抜いて、陸上女子歴代最多となりました。大怪我を克服し、1児の母ともなり、戻ってきたアリソンは、ここ東京で見事なラストランを飾ったのです。

 

 今回もオリンピックらしい感動のシーンが数多くありました。男子800mでは転倒したボツワナとアメリカの選手が仲良く手を取ってゴールしました。また、男子走り高跳びでは、同記録の二人が金メダルを分け合いました。友情とリスペクト。五輪ならではの風景でした。

 

 今回は競馬のことにあまり触れませんでしたが、競馬と陸上競技(主にトラック競技)には共通点があることを再認識しました。今週から小倉が再開し、3場開催となります。先週も新潟で有望新馬が出てきましたね。舌を噛みそうなステルナティーア(父ロードカナロア)は、ステルヴィオの妹で、しっかり勝ち抜きました。マイラーっぽいですが、奥がありそうです。前回紹介したルージュスティリア同様、今年も牝馬が強いのでは…?