前回に引き続き新聞記事の話です。かなり古い事ですが、1984年2月24日武邦彦騎手(ユタカのお父さん)の引退の日でした。通算1163勝、重賞80勝という記録を残されていました。特に重賞の80勝は当時保田隆芳騎手に次ぐ記録でした。保田騎手と比べて弱小厩舎に所属していた武騎手はスタートがうまく、ペース配分と位置取りに優れた名騎手でした。いかつい騎手が多い中、温厚で、スマートで、ダンディーな騎乗は、東のミスター競馬と言われた野平祐二騎手にも共通点がありました。年いってきたユタカ騎手は、お父さんそっくりになってきたと最近感じます。

 

 その武邦彦さんが引退するということで、私たちのグループで横断幕を出そうということになりました。当時関東では横断幕が出始めていたと思いますが、関西では見かけませんでした。しかし、名騎手の引退西のにファンとして何もないのは寂しい限りだと考えたのです。シンプルに「武さん、ご苦労様」と大書した横断幕にしました。パドックで、武さんは、私たちの前を通るとき、姿勢を直すふりをして体を前にかがみました。騎手は、競馬場でみだりにファンに合図的なものを見せてはいけないことになっており、そのため、私たちはそういった形で礼をされたのだと勝手に理解していました。横断幕をかけるときは、警備員の方も手伝ってくれました。競馬文化が芽生え始めて来た時だったのです。

 

 私たちの所に、あるスポーツ紙の記者が来てインタビューされました。名前を聞かれ、私と友人が交互に武騎手のことや、横断幕について答え、記者は手帳のようなものにそれを書き留めていました。翌日のそのスポーツ紙にそれが掲載され、私は職場で冷やかされたものです。しかし、よく読んでみると、私と友人が話した内容が逆になって載っていたのです。

 それから私は新聞の記事を100%信じることはしなくなりましたね。新聞は好きでよく読みますが、量が多いとはいえ、訂正があまりに多いですね。競馬の記事もどこまで取材した中身が正しく伝わっているのか、記者の力量が問われます。まぁ、本音を言わない関係者も多いでしょう。苦労は絶えないでしょう。それでも好きでその仕事に就いたのなら、的中も大事だけど、いい記事、正しい記事を伝えてほしいと願っています。