あんまり暑くてむしゃくしゃするので、昔の手紙を整理することにした。


心に染み入る手紙が数通あって、ほんわか優しい気持ちになっていたら、

ある袋にざっくりまとめてある数十通の手紙があった。


中身を読んでみれば、高校生のときに好きだった人からの手紙だった。

多分、4年間くらい文通していた相手で、8つ年上のお兄さんだったから、

私は相手にもしてもらえてなかった。


歯牙にもかけない、というやつだ。


お兄さんは、私を本当の妹のように大事にしてくれた。

好きな気持ちを言葉で伝えたことはなかったけれど、多分、

伝わっていたと思う。


でも、突き放したりしなかったし、だめなことはだめと言ってくれたし、

良いことは良い、哀しいこと嬉しいこと、辛い時には話を聞いてくれた。


好きとか嫌いとかぢゃなくて、きちんと向き合ってくれてたんだな、と

思った。


もちろん、お兄さんが悲しい時の話も教えてくれた。

それがなんとなく私にきちんと向き合ってくれたような気がした理由だ。


そして、私はそのお兄さんが好きだったから、そんな時の流れの中で

私がそのお兄さんの人生を一緒にシェアする人間になりたいと

本気で思った。


色んなことが書かれてあって、そのお兄さんが好きだった人のことも、

その人が交通事故にあって植物人間になってしまったことも、

植物人間になってしまった彼女を思いつめている時に、その気持ちを

一緒に分け合ってくれる優しい女性と出会ったことも、ぜーんぶ

書かれてあった。


その頃、私はとってもPUREだったので(笑)、

お兄さんが本気で好きだった人が、植物人間になったといった時

私がその人の代わりに植物人間になりたいと思った。

(とてもおこがましいことではあったのだけど、その時は本気でそう思った)


愛が芽生えた瞬間だったなあ、でも伝えたりはしなかった。


結婚するから、という手紙が最後になったのだけれども、

その手紙の中には、こう書いてあった。


『何度も言うが、人間は変わっていくものだけど、

絶対に変わらない部分がある。●●ちゃんの場合、

イメージとして透明で、きりっとしたかんじがある。

これは俺のわがままな言い分かもしれないけれど、

本当にそう思うからそう書くね。


その凛とした生き方を大事にしてくれ。


(中略)


この世の中、君が嘆くほど、そうそう悪い世界でもない。


何年かしか先ではないけれど、何年か先を生きているから

わかることもある。


そうそう悪くはない。これは断言できる。


何もかもあきらめたくなった時に、それを思い出してくれ。


いい女になれ!』


泣いたなあ、このときは。

自分の手の中にあったものが、自分のものではなくなったような

気がしたなあ。

(いや、もともと誰のものでもなく、お兄さんはお兄さんのものなのだ)


手紙を読み直して、とても甘やかな気持ちになった。

ああ、こういう人を好きになってよかったと思った。


自分って捨てたもんぢゃないと思った。こうやって認めてくれた人がいた。

なんとなく、忘れていたような気がする感覚だった。


こうして、またこの手紙の束が捨てられなくなってしまった。本末転倒だな。(笑)


でも、シュレッダーして紙袋で4袋分のどうでもいい手紙は処分したから

ま、いいか。(笑)