藤くゆる詮なきひとぞ愛しき

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情だけが残って別の関係ができていく過程を楽しめる年齢となりました。

「秋の空

おなじくありて

翔ぶときを

告るがごとく

ひろごりて澄む」


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自分次第で。

空は平等です。

今ですね、翔ぶなら。


わたしだけ

虹を見たのだ


ヒステリックに

ふったりやんだりする

鈍色のくもの谷間


それはまるで

少女が一瞬

無意識に

はにかんだような

やわらかな光輪


何年も

ヒールを履き

胸を張り

歩き出そうとした結果

なんとか歩いてきた道の

最初の角を

いつものように

曲がり

息をのんだ


今朝

わたしだけ

虹を見たのだ


遮二無二に

がんばる人々の

湯気が生んだ

ゆらめきに

あ、と声を出す間に

消えた虹を


わたしは

たしかに

見たのだ


その一瞬が

胸をひらかせ

顔をあげたまま

休み明けの街を

駆けてゆく


そんなわたしが

虹を見たのだ


(おわり)